水曜日, 5月 21, 2025
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BE:FIRST「GRIT」先行レビュー|深化した“ヒップホップ的思考”で00年代サウンドを再解釈 – 音楽ナタリー 特集・インタビュー



BE:FIRST「GRIT」先行レビュー|深化した“ヒップホップ的思考”で00年代サウンドを再解釈 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

BE:FIRSTのニューシングル「GRIT」が5月28日にリリースされる。

2021年のデビュー以来、勢いに乗り続けているBE:FIRST。4月には初のワールドツアーを開幕させ、新たな局面を迎えている。そんなBE:FIRSTから放たれる新曲「GRIT」は、2000年代のヒップホップサウンドを現代的に昇華したアグレッシブなナンバーだ。

音楽ナタリーでは新曲「GRIT」について、音楽ライター・高木“JET”晋一郎による先行レビューを掲載。単なるオマージュで終わらない、“ヒップホップ的な思考法”の宿るこの曲の魅力を紐解く。

文 / 高木“JET”晋一郎

BE:FIRSTのニューシングルとなる「GRIT」。この曲の冒頭のトライバルとも言えるドラムパターンと、“間”の意識されたビート、それに被る「Got The GRIT」という囁きのようなフレーズ、ミニマルなシンセの上モノ──そのシンプルな構成は、The Neptunes、ならびに2000年代初頭のヒップホップからの影響を強く感じさせるサウンドとなっている。

1990年代末から2000年代前半にかけて──奇しくも、BE:FIRSTのメンバーが生まれた時代、ヒップホップには大きな地殻変動が起きていた。サンプリングを基調にし、ザラつきが加わったファットなビートによる、現在ではいわゆる「ブーンバップ」と呼ばれるサウンドがメインになっていた90年代中盤。しかし、サンプリングに対する権利意識の高まりや、機材の進化によって、新たなダンスビートが模索され、数々のチャレンジが並行して行われるようになった。とりわけ、アリーヤ「One in a Million」に代表される、プロデューサーのティンバランドが開発した細かいリズムを刻む、いわゆる「チキチキ系」と呼ばれるビートや、DMX「Ruff Ryders’ Anthem」でスウィズ・ビーツが提示した、KORG社のシンセ「TRITON」の音を強調したプロダクション、またリル・ウェインらを擁するCash Money Records勢に代表されるサザンヒップホップなど、ラップとビートとの関係性、ビート自体の方向性が大きく変化し、サウンドのバラエティは飛躍的に広がっていった。

単なる00年代オマージュで終わらない「GRIT」のオリジナリティ

そういった変化の中で、現在のポップシーンを含めた他ジャンルに影響を与えたのが、ファレル・ウィリアムスとチャド・ヒューゴによるプロデュースチーム・The Neptunesが手がけたサウンドだ。もちろん、そのサウンド性は多岐に渡るため、一概にまとめるのは乱暴だが、そのオリジナリティを知らしめたN.O.R.E.「Superthug」や、現在でもフロア人気の高いジェイ・Z「I Just Wanna Love U(Give It 2 Me)」などで表現された、要素の絞られたサウンド構成と、音の隙間でグルーヴを生み出すビート、ソリッドで硬質なドラムの音色、シンプルでミニマルな上モノという構造は、The Neptunesサウンドのシグネチャーとしてシーンに大きな衝撃を与えた。その最たるものとして、ドラムとシンセ、ノイズ、そして特徴的な舌打ち音で構成されたスヌープ・ドッグ「Drop It Like It’s Hot feat. Pharrell Williams」が挙げられる。

さて翻って、BE:FIRST「GRIT」の音像は、そういったThe Neptunes的な意匠からのインスパイアを強く感じさせる。楽曲全体を通して、トラックを構成する要素はミニマムかつシンプル。それはBE:FIRSTのボーカルパートをより映えさせ、メンバーそれぞれの特徴やスキルを明確にする効果を持っている。

一方、ドラムに加えられた残響音やベースのうねり、そしてその合間を縫うように歌い上げられるボーカルも含めて、音に完全な“隙間”がある部分はほぼない。つまり、様式としてはオマージュを感じるのだが、その実はかなりオリジナルな感触を持つ楽曲だ。そこには単に2000年代オマージュで終わらずに、現代的な、そしてBE:FIRST的な提示が加えられていることにも注目したいし、そのオリジナリティを担保しているのは、7人のボーカルによる部分も大きいだろう。

ティンバー、COOGI、ドジャース優勝記念スタジャン……「リスペクトと創造的意思」宿るビジュアルにも注目

そして「流派BのBOYSがまたヒット」というリリックも気が利いている。これは2001年から放送されている、ヒップホップやクラブカルチャーをテーマにした音楽番組「流派-R」を意識しているだろうし、同時に「BMSGの流派」、そして「B-BOYの流派」という、彼らの根源性を表してもいるだろう。同じくリリックの中に出てくる「俺等ティンバー履いたヒーロー」というラインはヒップホップにおいてアイコニックなアイテムであるティンバーランドのブーツを指しているであろうし、今回のアーティスト写真でJUNONがまさにこのブーツを着用している。またアーティスト写真のRYOKIのセーターは、90年代のニューヨークヒップホップを代表するラッパー、ノトーリアス・B.I.G.のファッションを象徴するCOOGIのもの。MANATOが羽織っているのは、恐らく90年代末から00年代前半のストリートを席巻したブランド・FUBUのスタジャンだろう。SOTAのバギーパンツも、現在の流行とともに、当時の雰囲気をも感じさせる。

BE:FIRST「GRIT」LIVE盤ジャケット

BE:FIRST「GRIT」MV盤ジャケット

BE:FIRST「GRIT」MV盤ジャケット

また、RYUHEIとSHUNTOのワイドなジャケットにサイズ大きめキャップを目深に被る着こなしは、キャムロンやジム・ジョーンズ、ジュエルズ・サンタナなどが所属したヒップホップクルー・The Diplomatsなどのアーティスト写真にもよく見られたスタイルだ。一方でLEOの身に着けるスタジャンは、昨年のドジャースの優勝記念モデルだろう。そういったスタイリングからは、クラシックやビンテージなものに単純に回帰するのではなく、その価値を再解釈し、現在的なあり方、現在を生きる最新系である自分たちとどういった形で組み合わせて、新たなものを生み出せるのかという、新たな価値観の創造への意思を感じられる。

ヒップホップにはさまざまな思想や発想が含まれているが、その中には「先人へのリスペクトと、その再解釈と発展」という考え方がある。それはサンプリングに代表されるように、過去のクレイツにリスペクトとオマージュを捧げながら、それを現在的な、そして自分たちのアティチュードとして提示し、新たな価値観を創造するということでもある。その意味でも「GRIT」には、これまで以上に「ヒップホップ的な思考法」が宿っているし、こういった彼らの立脚点の明示の先で、世界ツアーでの経験も含めてどんなものが生み出されるのか、改めてBE:FIRSTへの期待が高まる1曲だ。



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🧠 編集部の感想:
BE:FIRSTの新曲「GRIT」は、00年代ヒップホップを意識した現代的なサウンドへの再解釈が際立っており、聴きごたえがあります。シンプルで効果的な音構成が彼らの歌声を引き立て、オリジナリティも感じられます。これからのワールドツアーとともに、彼らの新たな価値観がどのように発展していくのか、非常に楽しみです。

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