木曜日, 5月 15, 2025
ホームニュースChatGPTB Dash Camp 2025 注目の5社:カサナレ/「学ばないDX」で企業のAI活用を加速 #bdashcamp

B Dash Camp 2025 注目の5社:カサナレ/「学ばないDX」で企業のAI活用を加速 #bdashcamp


カサナレ代表取締役の安田喬一氏

B Dash Camp 2025 Spring への出場企業を紹介する連載の最終回。今回はエンタープライズ向け生成 AI ソフトウェア「Kasanare」を開発するカサナレに注目する。働き方改革と生産性向上を両立させる同社の技術と、人口減少社会を見据えた代表の安田喬一氏のビジョンに迫った。

学ばなくても使えるAI、プロアクティブに働きかけるAI

カサナレは2022年8月に設立された LLM Ops スタートアップだ。エンタープライズ向け生成 AI ソフトウェア「Kasanare」を開発し、複数 AI ベンチャーでの事業立ち上げ経験を持つ安田喬一氏が代表を務める。

安田氏はサービスの原点に働き方と幸福感の関係性を置いている。かつてDXコンサルタントとして業務効率化に携わる中で、安田氏は矛盾に気づいたという。様々な SaaS やサービスを導入することで業務を楽にするはずが、それらを使いこなすための学習コストが発生し、結果的に現場の負担が増えてしまうという皮肉な状況だった。この問題意識が同社の出発点となった。

同社の強みは独自の技術基盤「テクノロジーピース」にある。高セキュリティ・多言語対応・データ前処理・プラグイン連携などをモジュール化し、ユーザー企業の業務フローに合わせて組み替えられるのが特徴だ。

具体的なサービスとして、社内ナレッジ検索に RAG(Retrieval Augmented Generation)を導入しチャットボットで照会できる「学ばないDX」や、顧客対応ログを自動要約し CRM へ書き戻す「カスタマーサクセスCo-Pilot」などを提供している。これらにより部門特化型 SaaS を高速に並列展開できる。

「今後はもう人がどんどん減っていくのは待ったなしで、人が減っていく未来に対してどう向き合っていくかが本当に求められている」(安田氏)。同社の生成AI技術はまさにこの課題に応えるものだ。

特に注目すべき機能が、同社が開発する「プロアクティブAI」だ。これはAIが利用者に話しかけるという逆転の発想から生まれた機能である。「AIの利用には正しく命令をしなければならないというユーザー側の課題がある。これはツールベンダーがやるべきことがなく、あくまで使う人がどう使うかという問題だった」と安田氏は分析する。

カサナレはこの課題を解決するため、ユーザーの行動履歴や属性情報を読み込み、「この人にはこう答えるべき」と AI が自ら判断して話しかける仕組みを開発。その結果、ユーザーが AI の使い方を学ばなくても、AI が最適なサポートを提供できるという画期的なアプローチを実現した。

元カスタマーサクセス担当が見た、AIと企業の関係性

既に大手中心に導入が進むkasanare

安田氏のキャリアは興味深い。キャリアの出発点は飲食店向けコンサル企業で、事業企画やセールスを担当していた。その後、SaaS 企業でカスタマーサクセスに携わるようになる。

「途中から SaaS サービスのリテンション方法に興味を持った。ユーザーが本当に満足するサービスとは何かというカスタマーサクセスの概念を知り、そっちに面白さを感じて CSDX の分野に入っていった」(安田氏)。

カサナレ創業の経緯には、共同創業者との出会いが大きく関わっている。安田氏自身はユーザー視点を重視し、複雑な事柄をわかりやすく伝えるサービスづくりを目指していた。そこに、ChatGPT が世に出る前から独自に生成 AI を活用してフリーランス活動をしていた西田(慶・取締役 COO)氏との出会いがあった。西田氏の技術的バックグラウンドと安田氏のユーザー視点が融合する形で、カサナレの事業構想が具体化していったのだ。

「彼はイラストレーターが1週間かかるような絵を5秒で書けるのを知っていて、その技術を使えば私のやりたいことができるかもしれないと話していたときにChatGPTが出てきた」(安田氏)。それで検証を始め、会社設立に至ったという。

生成AI市場の急速な変化についても安田氏は冷静な視点を持っている。新しい AI ツールが数週間単位で次々と登場する状況下でも、むしろそれによってカサナレの市場ポジションが一層明確になったと安田氏は考えている。彼の分析によれば、AI 技術の真価は LLM そのものよりもデータとの組み合わせにある。どれほど優れたモデルであっても、入力するデータの質が低ければ精度は上がらない。逆に質の高いデータを用意できれば、LLM は自然と進化していくため、同社はデータ品質の向上と管理に特に力を注いでいるのだ。

企業への AI 導入における課題も安田氏は的確に見据えている。企業内で各部門が独自に AI ツールを開発したり外部サービスを導入したりすると、全社的な整合性が失われる恐れがある。部署ごと、担当者ごとに異なる AI が乱立すれば、最終的には何が何のために存在しているのか把握できなくなるという問題が生じるのだ。

同社が提供するのは生成 AI ソフトウェアそのものではなく、LLM の周辺にある検索システムや管理システムだ。各企業ごとに検索システムや権限の仕組みを導入することで、社員が必要な情報を適切なタイミングで得られる環境を整える。

「もっともっと仕事が楽になっているにも関わらず、ちゃんと一人一人がバリューを出していける、そういう未来を作る」(安田氏)。

企業の AI 導入と業務効率化を同時に実現する同社の技術は、人口減少時代の企業運営に新たな可能性を提示している。5回にわたって紹介してきた注目スタートアップたちとともに、5月の B Dash Camp ではどのような熱いピッチが繰り広げられるのか、大いに注目したい。



続きを読む

Views: 2

RELATED ARTICLES

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

- Advertisment -

インモビ転職