COMPUTEX TAIPEI 2025開催に合わせ、ASUSは本社において、日本のメディア向けの合同インタビューを開催した。
本稿では、その様子をお伝えする。話を聞いたのは、ASUS システム部門 アジア太平洋地域ジェネラルマネージャーのピーター・チャン氏、ASUS JAPAN代表取締役社長のアルヴィン・チェン氏、ASUS JAPANシステムビジネスグループ コンシューマービジネス事業部 統括部長のデイビッド・チュー氏の3名だ。
日本市場におけるさらなる拡大
――日本のPC市場にASUSの製品はかなり受け入れられてきていると思いますが、まだまだ大きな差があります。そこを埋めていく打開策を何か考えていますか。
それに対しては、2つできることがあると思っています。1つめが、日本の市場をより深く理解することです。
ASUSではここ数年、日本の市場をより深く理解するために、どういったユーザーシナリオがあるのか、日本のユーザーにどのようなニーズがあるのかをしっかり調査していこうと取り組んできました。
たとえば「Zenbook Sora」を開発した時には、日本の生活習慣、社会人、学生がどういった生活をしているのか、通勤通学の環境はどういったものなのかを知ることから始めて、日本市場に合わせてデザインを行ないました。日本の近くで開発を行なう、ということが重要と思っています。
2つ目は、新しいセグメントに進出するということです。たとえば、数年前から有機EL搭載PCを増やしていくことに注力していますし、Copilot+ PCのカテゴリでは、我々の製品が40%ほどを占めています。このように、今後も新しいセグメントが登場したら、できるだけそこに入って市場を獲得するという戦略を採っていきます。ですので、日本市場を理解して、新しいカテゴリで少しでも参入できそうなところがあれば、そこから追求していく、ということをやっていきたいです。
――御社は現在、Intel、AMD、Qualcommと3社のプロセッサを搭載するPCを販売していますが、それぞれどういったバランスでビジネスを展開していこうとお考えでしょうか。
我々はトータルソリューションプロバイダーを目指してAI PCの普及を目指していますので、各プロセッサの強みを生かしたポートフォリオ作りをしたいと考えています。
たとえArmプラットフォームではバッテリ駆動時間が優位ということもあって、Zenbook SORAではベストと考えています。また、ゲーミングにおいてはx86アーキテクチャがベストと考えていますので、IntelやAMDのソリューションを使います。このようにそれぞれのプロセッサに強みがありますので、用途に応じて使い分けていきたいと考えています。
日本市場に向けたデザイン
――Zenbook SORAは日本ユーザーを意識してデザインしたということですが、実際に発売してどういう印象をお持ちでしょうか。
非常にポジティブな反響があります。特に小売店からは日本市場に合っている製品として反響が大きいと聞いていますし、販売する店舗を増やしたいという声も届いています。また、購入者の半数が10~20歳代の若年層ということから、今後はそのユーザーがコアカスタマーとして売上を牽引してくれると期待しています。
日本市場は、我々としても非常に重要な市場です。AI PCは継続的に投入していきますし、Zenbook SORAの次期モデルも検討中ですので、ご期待ください。
――御社は日本市場で長く活躍されていますが、現在の、あまり景気が良くない日本市場をどのように捉えていますか。また、どういった製品を特に注力していきたいですか。
今でも、日本市場を変わらず重要な市場として注目しています。そして、その時点で日本市場で必要なものに注力していきます。
たとえば、以前はタブレットやZenfoneなどに力を入れていましたが、それはその当時それら製品が日本市場で最も受け入れられる製品だったからです。現在は、コンシューマ向けのノートPCやGIGAスクール構想におけるChromebookに注力しています。
以前は、新しいカテゴリやニッチなカテゴリを攻めることが多かったです。それは今後も必要ですが、長期的にはメインストリーム市場にも力を入れていくつもりです。
現在日本市場では、Vivobookシリーズが圧倒的に売れていますが、今後はASUSの優位性を際立たせるために、Zenbookシリーズやゲーミングもより強化したいと考えています。
拡大するAI PCに向けて
――現在、PC市場においてAIが大きくフィーチャーされていますが、御社としてAIをどうビジネスチャンスに結びつけていこうとお考えでしょうか。
我々がAI PCを投入して2年ほど経過しています。今後の技術の発展によって状況が変わってくるかもしれませんが、現時点ではAIを既存のデバイスに連携していく、問いことに取り組んで来ました。AIを活用できるCopilot+ PCやゲーミングPCを投入していますし、ノイズキャンセリング機能や「ASUS AI ExpertMeet」などの独自AI機能を開発しています。
また、ROG Flow Z13では、ゲーミングに活用するだけでなく、ローカルLLM(大規模言語モデル)を利用したAI推論が可能となっています。今後もこういったことに取り組んで行きたいですし、さらにマシンパワーが向上すれば、もっと新しいことができるようになるでしょう。
そして、今後近いうちに、AIの応用に関する新しい発表ができると思いますので、引き続き注目していただければと思います。
――御社はCopilot+ PCに積極的に取り組んでいますが、新たに獲得できた顧客層や製品の傾向を教えてください。
現時点では、Copilot+ PCを選択するユーザーはまだアーリーアダプタが多い状況です。ただ、今後はPCの置き換えとして普及が進んでいくだろうと考えています。特に、Windows 10のEOSを目前に控えていますが、そこでPCを置き換える時に、将来AI対応が重要になると考えてCopilot+ PCを手に取る人が増えるのではないかと思います。
日本市場では、Copilot+ PCとしてZenbook SORAが特に売れています。それも、購入者の半数が10~20歳代の学生が占めています。その他、ゲーミングPCやプロフェッショナル向けPCでもAI対応製品を用意できていますので、よりAI PCを成長させていきたいと考えています。
――コロナ禍以前、PC市場は縮小すると言われていましたが、コロナ禍の巣ごもり需要やリモートワーク対応などでPCが見直されましたし、現在はWindows 10のEOSを目前ということもあってPC市場が隆盛となっています。ただ、その先のPC市場はどのようになっていくとお考えでしょうか。
PC市場については、今後も比較的楽観視しています。コロナ禍が終わって、PC市場はシュリンクするのでは、という人もいます。しかし実際には普段の生活が戻ってきてもリモートワークは行なわれていますし、PCの普及は今後も続くと思います。
Windows 10のEOSは短期的な需要の要因ではありますが、AIの活用が進んで、データとの関わり方が変わって、PCを仕事だけでなく、普段の生活の中で趣味や創作にも使いたいという人が増えてくると思います。ですので、将来のPC市場はさらに伸びると考えています。
――今後もPC市場は伸びるとのことですが、その需要を支えるキーとなる技術や機能としてどういったものが重要になるとお考えですか。
AIをPCで活用するということは、まだ始まったばかりという状況です。今の段階では、AIを使ってファイルを作ったり、勉強や調査のしかたが変わったという程度です。
しかし、たとえば、今インタビュー取材をしているこのやり方も、2年後には全く変わってしまうでしょうし、記者のみなさんの記事の要約のしかたも全く変わってくると予想しています。今後、そういったソリューションレイヤーはもっとたくさん出てくるでしょうし、その一部はPCのプラットフォームに取り込まれていくと思います。
現時点ではまだAIを活用するという部分はユーザーフレンドリーな状況ではありません。我々がやるのか、ほかの企業がやるかは分かりませんが、うまくPCやその他のソリューションと融合させて、多くの人が必要としている機能を生み出せる企業が、これからもっと伸びていくと思います。
――御社は、2画面PCやスマートフォンとドッキングするタブレットなど、新しいチャレンジに力を入れているというイメージがあります。今後も、そういった新しいことへのチャレンジは続けられるおつもりでしょうか。
もちろん今後も、引き続き新しいことへのチャレンジを続けていきたいと思っています。去年はROG Flow Z13を試験的に投入しましたし、それ以前もさまざまな新しい製品を発売してきました。
すべてのチャレンジが成功するわけではありませんし、失敗することもあります。しかし、企業としてのデザインシンキングに基づいて、新しい取り組みにチャレンジし続けていきたいと思います。
ただ、だからといってテクニカルなことを見せつけるためだけにやっているわけではありません。ユーザーのニーズに合わせて開発を行なっていきたいですし、そういった考えのもと新しいチャレンジを続けていくつもりです。
AIに関しては、まだ取り組みが始まったばかりですが、今後いろいろと新しいことができればと思っていますので、引き続き注目してください。
――ありがとうございました。
🧠 編集部の感想:
ASUSがZenbook SORAやAI PCの今後について語る姿勢に感銘を受けました。特に、日本市場を深く理解し、ニーズに応えた製品開発を進める点が印象的です。AI技術の進化を利用し、今後のPC市場がどのように変化するかが楽しみです。
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