土曜日, 5月 24, 2025
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AIデータセンターと個人向けNASに成長の可能性を見いだすWD


ウエスタンデジタル アジア太平洋および日本地域担当 セールス&マーケティング バイスプレジデント ステファン・マンドル氏

 PCユーザーにとって、今ストレージと言われて最初に思い浮かぶのはSSDなどのNAND型フラッシュメモリだろう。既にノートPCのほとんどはSSDなどのフラッシュメモリが主流になっており、HDDを搭載した製品を市場で探すのが難しいぐらいだ。

 では、HDDは死に絶えたのかと言えばそんなことはなく、着実に成長続けており、出荷台数も金額も増えていっているというのが現状だ。

 その最大の要因は、クラウド向けの需要が増えていることで、HDDメーカー各社はクラウド向けの製品の充実を図っていっている。

 そうした中で、本年の2月にSSD部門のサンディスク(Sandisk)を分社化が完了することで、HDD専業メーカーに戻ったのがウエスタンデジタル(Western Digital:WD)だ。そうしたウエスタンデジタル アジア太平洋および日本地域担当 セールス&マーケティング バイスプレジデント ステファン・マンドル氏にお話しを伺ってきた。

Sandiskとの分社化によりHDD事業にフォーカスして目標が明確になったWD

WDのブースに展示されていたSSDとエンクロージャー

 WDは、今年(2025年)の2月にSandiskとの分社化を完了し、Sandiskは別の上場会社としてNASDAQに上場し、それぞれ別の企業会社として運営されていくことになる。

 マンドル氏は「分社化を実現したのは、分社化することで2つの会社それぞれにそれぞれの業界のリーディング企業になるように株主価値を最大化することにある。

 WDは、HDDの製造と販売、そしてストレージプラットフォームの販売を行なっていく。プラットフォーム製品にはHDDだけでなく、SSDも含まれており、NANDフラッシュはもちろんSandiskからも購入するが、将来的にはほかのベンダーから購入する可能性もある。そこは顧客が必要なものを提供していくというのが我々の姿勢だ。

 対してSandiskは製品名にWD_BLACK、WD_BLUE、WD_GREEN、WD_REDなどのWDのブランドを使って製品を継続販売していく。両社の合意に基づくもので、少なくとも3年間はロイヤリティベースの利用契約を結んでおり、その間にブランドをどうしていくのか両社で話あって決めて行くことになる」と述べ、分社化に関して説明した。

 WDが会社を分割した背景には、実質的に3社(WD、Seagate、東芝)しかメーカーがなく、激しい競争がなく既存の技術を活用して安定しているHDD事業と、多くの参入企業(Sandisk、キオクシア、Samsung、Hynix、Micronなどなど)があり、新しい技術も年々導入されているNANDフラッシュ事業という産業の違いが影響していると考えられる。

 特にNANDフラッシュに関しては、今後も競争を勝ち抜くには、常に最先端のプロセスノード、多層化技術、さらには最先端の工場……と多額の投資が必要になると考えられるため、両社を分割していくのが合理的と考えられたのだろう。

 安定的な利益を期待するならHDDだし、リスクはあるかもしれないが大きなリターンを期待するならSandiskというように、株主が自分の目的に応じてどちらを取るか選択できるようにしたと考えられる。

 マンドル氏は、両社が一体だった時にSandiskが自社のSSD製品にWD_BLACKなどのWD由来のブランドを使っていて、それがユーザーも慣れ親しんでいるため3年間の経過措置を取るという合意を両社でしており、その期間中Sandiskがブランド利用料金を支払う形の契約になっていると説明した。3年の間に、Sandiskがほかのブランドに変更するのかなどを決めるということだろう。実際、先日Sandiskが発表したSSDは「WD_BLACK」のブランド名が利用されている。

 なお、製造に関してはWDがHDD、SandiskがNANDフラッシュとなるが、プラットフォーム製品(たとえばデータセンター向けにエンクロージャと一緒に販売されるストレージ製品)に、SandiskなどからNANDフラッシュを調達してケースに組み込んで販売することはあるという。今は分社化したばかりなので、Sandiskからの調達が主力だが、今後はキオクシアやSamsungといった競合から調達するようなこともありうるという。

HAMRを2027年に導入してより大容量化を目指す

WDブースに展示されていたデータセンター向けHDD

 今後のWDのビジネスに関しては、2つの市場での成長が期待できるという。1つはクラウド向けで、もう1つが一般消費者向けのNAS向けだという。

 「IDCの予測では24年~28年のデータセンター向けストレージの80%はHDDになると予想されている。特にAIによる成長が期待でき、2023年~2028年に向けては23%のCAGR(年平均成長率)を実現すると予測している」と述べ、GPUを利用してAIの学習や推論を行なうAIデータセンターの成長により、データが爆発的に増えていくことでHDDへのニーズも高まっていくと予想しているのだと説明した。

 もう1つの成長市場はNAS向けで、特に日本市場では一般消費者向けNAS向けの成長が期待でき、2030年までに4億5,760万米ドルの売上が期待できるという。これは2025年から2030年のCAGR(年平均成長率)に直すと13.3%と二桁成長が期待できるとのことだ。

 一般的にAI学習などの現場ではSSDなどのフラッシュメモリが使われるため、AIデータセンターの成長はHDDの成長には関係なさそうだが、実際にはAIデータセンターの利活用が進むことで、データ量が増え、コールドストレージと呼ばれる学習などに直接使われる訳ではないが、長期間保存するデータ用ストレージのニーズが増えると考えられている。

 HDDの利点は、容量当たりの単価が低いことにある。「両者のライフサイクルを通じての価格はHDDが3.6倍安価だ」(マンドル氏)という点を考えると、大容量のデータを保存していくストレージがクラウド全体の80%を占めるという予測は妥当だ。このため、WDも、その直接の競合となるSeagateもデータセンター向けのストレージに力を入れているというのも納得だ。

 そして価格差を維持するために、HDDベンダーはより大容量化を目指して各種の開発を行なっている。WDも同様で「HAMR」(ハマー)と呼ばれる新しい技術の導入を目指している。HAMRは熱アシスト磁気記録という日本語訳が示す通り、データを読み書きするときにディスクを局所的に加熱して磁気記録能力を高める技術。現在利用しているePMRやUltraSMRなどをHAMRに置き換えることで、今後より大容量を実現することが可能になるという。

 「このHAMRを2027年に採用した製品を2027年に提供開始する。36TBのドライブなどを手始めに、40TBを超えるドライブなどを実現していく計画だ」と述べ、現在データセンター向けの「Ultrastar DC HC690 Data Center Hard Drive」などで実現している32TBを超える容量を実現するドライブを提供していくと説明した。





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🧠 編集部の感想:
ウエスタンデジタルがHDDに専念して分社化を行ったことで、今後の市場競争がさらに明確化しました。特にAIデータセンターと一般消費者向けNAS市場での成長が期待される中、低コストの大容量ストレージの需要が高まる見込みです。HAMR技術導入によるさらなる大容量化も心強く、HDDの重要性は今後も続くと感じました。

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