パウエル米連邦準制度理事会(FRB)議長は7日、二転三転するトランプ政権の通商政策の方向性が明確になるまで、利下げを急がない考えを明らかにした。
連邦公開市場委員会(FOMC)は同日まで開いた会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3会合連続で4.25-4.5%に据え置くことを決めた。
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今回の会合はトランプ大統領が4月2日に広範にわたる関税措置を発表して以降初めての開催で、FOMCは声明でインフレ高進と失業率悪化のリスクが高まったとの経済・物価判断を示した。
パウエル議長は記者会見でこのシナリオについて、労働市場を支えるため利下げするか、物価上昇圧力を抑制するため金利を据え置くか、当局は難しい選択を迫られると指摘した。一方で、米関税措置や貿易相手国・地域との関税交渉を巡る不確実性を背景に、当局は当面、静観の姿勢を保つだろうと示唆した。
BNPパリバの米国担当チーフエコノミスト、ジェームズ・エゲルホフ氏は「米経済データに決定的な変化がない限り、FOMCはずっと様子見姿勢を保つことに異存はない様子だ」と話す。
その上で、「次の動きがリセッション(景気後退)に向かっているとの判断で利下げになるのか、インフレ高止まりが経済に定着するとの見通しで一層景気抑制的な政策に傾斜するのか、確度が高まるのを待っている状況だ」と説明した。

記者会見したパウエルFRB議長(5月7日)
Source: Bloomberg
トランプ氏は米金融当局が利下げに動いていないとして、パウエル議長への批判を繰り返している。議長は記者会見で、リスクや不確実性の高まりを解消する上でホワイトハウスの方が適した立場にあり、実際、その方向に動いているように見受けられると強調した。
「最終的には、これは政権が行うべきことだ。これは彼らの責任範囲であり、われわれのものではない」と発言。「現在は、政権が米国の重要な貿易相手国・地域の多くと交渉を開始する新たな段階に入りつつあるようだ。これは状況を大きく変える可能性がある」と語った。

ニュー・センチュリー・アドバイザーズのチーフエコノミスト、クラウディア・サーム氏は「全般的に見て、現在の連邦準備制度には、かつての『全世界の支配者』的な雰囲気はほとんど感じられない」とし、「ホワイトハウスの政策に大きく左右されており、非常に受動的な立場にある」との見方を示した。
複数のエコノミストは、新たな関税の影響が経済全体に浸透するまでには時間がかかると指摘している。その影響はこれまでのところ、主に景況感の急激な悪化と輸入急増の形で顕在化している。米実質GDP(国内総生産)は1-3月(第1四半期)に2022年以来初めて伸びがマイナスとなったものの、基調的な需要を示す指標は堅調なままだった。
金利先物市場の動向を見ると、投資家は引き続き年内3回程度の利下げを見込んでおり、7月にも利下げが行われる確率は約85%とされている。一方で、大半のエコノミストや投資家は、6月の次回会合での利下げは予想していない。
FRB元上級政策顧問で、現在はデューク大学で経済学の研究教授を務めるエレン・ミード氏は「6月までに十分な情報を与えてくれるようなデータ発表はないだろう」とした上で、「考えられるのは最も早くても7月だが、率直に言って私は9月だと思っている。それでも本当に利下げがあるのかどうか確信は持てない」と説明した。
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原題:Powell Says Fed Won’t Be Rushed, Outlook Depends on White House(抜粋)
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