
火星では乾燥した地表が広がっていますが、太古の「海岸線」と思われる特徴が見つかるなど、かつては水が豊富な惑星だったと考えられています。コロラド大学ボルダー校の地質学者らが実施したコンピューターシミュレーションを用いた研究により、古代の火星では定期的に雨や雪が降っており、広大な河川や湖の循環ネットワークが形成されていた可能性が高いことが示されました。
Landscape Evolution Models of Incision on Mars: Implications for the Ancient Climate – Steckel – 2025 – Journal of Geophysical Research: Planets – Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2024JE008637
Scientists find subtle clues ancient Mars had rainy days, too | Mashable
https://mashable.com/article/ancient-mars-rain-snow-evidence
コロラド大学ボルダー校地質科学部のアマンダ・V・ステッケル氏らが地球物理学研究ジャーナルの「Planets」に掲載した論文では、火星の一部をデジタル化し、さまざまな気候シナリオをコンピューターシミュレーションによってテストしました。その上で、広範囲に雨や雪が降っていた場合、数千年後はどのような地形になるのかもシミュレートしています。
結果として、降水量がある程度あった時代には、さまざまな地域で谷や小川が形成されました。一方で、水源が降雨ではなく極地の氷が解ける融氷のみだった時代には、氷の塊があっただろう場所に近い位置のみに谷が形成されました。
そして、シミュレーションデータをNASAの宇宙船で軌道上から火星を観測した実際の画像と比較したところ、火星の地表で実際に見られる地形は、雨や雪によって形成されたシミュレーション結果とより一致していたことを研究者らは報告しています。
ステッケル氏は「火星に見られる谷は、かなり広い標高範囲であるため、『初期の火星は非常に寒くて主に氷で覆われていた』という長年の考えだけでは説明するのは難しいです。火星の広い範囲で降水があったと考えると、その説明が可能になります」と語っています。
しかし、火星がどのようにして雨や雪が降るほど暖かく保たれたのか、研究チームは完全には解明できていません。特に、初期の太陽は現在よりも約25%ほど暗かったと考えられており、現在よりさらに冷たい星であった火星に、融氷以外の水源があったとされる理由は謎です。研究の共著者で地質学者であるブライアン・ハイネック氏は「初期の火星の状態は謎が多く残されていますが、雨がなければ現在の火星のような地表は成り立ちません」と述べています。
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