脳科学写真はイメージです Photo:PIXTA

人の心を読むマインド・リーディングの技術はますます向上していくと予想されている。将来的には、差別主義者や犯罪者予備軍をあぶり出せるというが、それで社会はよくなるのだろうか。人の心という究極のプライバシーを暴いてしまうテクノロジーの功罪とは。※本稿は鈴木貴之『100年後の世界(増補版) SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来』(化学同人)の一部を抜粋・編集したものです。

すでに存在している
虚偽を90%読み取る技術

 われわれは、日常生活のさまざまな場面で人の考えを知りたいと思う。わたしが好意を抱いている女性は、わたしに好意を抱いているのだろうか。商談の相手は、本当にわたしの会社と契約する気があるのだろうか。もちろん、話しぶりや仕草から相手の考えを読み取ることも、ある程度は可能だ。しかし、他人の心をより正確に読み取ることができたら、とても便利なはずだ。

 近年の脳科学研究によって、心の働きと脳の働きのあいだには密接な関係があることが明らかになっている。ものを見ているときと音を聞いているときでは異なる脳部位が活動すること、青いものを見ているときと赤いものを見ているときでは異なる脳部位が活動することなど、心と脳のさまざまな関係が解明されている。

 脳の働きこそが心の働きの基盤なのだ。そうだとすれば、脳の活動から人の心を読み取ることができるかもしれない。これがマインド・リーディング技術の基本的な発想だ。