月曜日, 5月 5, 2025
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【飲み忘れなし】薬を「朝」「昼」「夜」に自動で放出する“タイマー付きカプセル”が登場


「朝食後、昼食後、夜食前、寝る前に飲んでください」

毎日何種類もの薬を飲んでいる人にとって、飲み忘れは深刻な問題です。

高齢者だけでなく、忙しいビジネスパーソンや慢性疾患を抱える若年層でも、薬を決まった時間に服用するのは意外と難しいものです

そんな課題を解決するかもしれない新技術が、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)から発表されました。

研究チームは、1日に1回飲むだけで、複数の薬を異なる時間帯に自動的に放出する“タイマー付きの経口カプセル”を開発したのです。

研究の詳細は、2025年1月14日付で科学誌『Matter』に掲載されました。

目次

  • 飲み忘れなし!「時間差で薬を放出する新カプセル」の開発
  • 新カプセルが朝、昼、夜にそれぞれの薬を放出することに成功

飲み忘れなし!「時間差で薬を放出する新カプセル」の開発

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複数の病気を抱える人にとって、薬をきちんと飲むのは難しい / Credit:Canva

薬を毎日きちんと飲むことは、簡単そうで、実はとても難しいことです。

特に複数の病気を抱える患者では、1日で10錠以上の薬を時間をずらして飲むことも珍しくありません。

加えて、薬の効果を最大限に引き出すためには、空腹時や食後などの条件を守る必要もあります。

忙しさ、うっかり、体調の変化、あるいは認知機能の低下など、服薬にはさまざまな“ミス”のリスクがつきものです。

そのため近年では、薬の数を減らしたり、飲みやすい剤形にする工夫が進んできました。

たとえば「配合薬(2種類以上の成分を1錠にしたもの)」や「徐放剤(ゆっくりと薬が溶けるように設計された薬)」などがその例です。

しかし新しく開発されたカプセルは、そうした工夫を一歩どころか数歩先に進めた設計になっています。

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カプセル内部はバリア(白)によって部屋が仕切られており、時間差で薬を放出できる / Credit:UCSD

カプセルの中には、それぞれ異なる薬剤を封入した複数の小部屋があり、それぞれが腸で溶けるバリアで仕切られています。

このバリアは「pH-responsive polymer」という特殊なポリマーで作られており、胃酸で溶解せず、アルカリ性の環境で溶解する性質を持ちます。

そのためこのポリマーの濃度を変えることで、各バリアがどの時間に溶けて薬を放出するかを数十分単位で調整可能となっています。

つまり、たった1つのカプセルに、たとえば「朝8時に1種類目」「正午に2種類目」「夕方6時に3種類目」のように、時間差で異なる薬を放出する“タイマー機能”が組み込むことができるわけです。

さらに注目すべきは、このカプセルがただ自然に溶けるだけではないという点です。

研究チームは、カプセルの外層にマグネシウムの微粒子を含めました。

このマグネシウム粒子が放出されると、胃酸と反応して泡が発生。薬剤を周囲に効率よく拡散させることができます。

これは、鎮痛剤、心血管薬、救急治療薬など、迅速な吸収が求められる薬剤に特に有効です。

また、マグネシウムには胃酸を中和する働きがあり、一時的・局所的にアルカリ性環境を作り出せます。

これにより、より精密にバリアを溶解をコントロールし、薬剤を放出させることも可能なのです。

そしてこの新しいカプセルを用いた実験も行われました。

新カプセルが朝、昼、夜にそれぞれの薬を放出することに成功

研究チームは、このタイマー付きカプセルを使った試験で成功を収めています。

試験に用いられたのは、パーキンソン病の治療薬「レボドパ」です。

パーキンソン病の患者は、運動機能の維持のために、1日に何度も時間を空けてレボドパを服用しなければなりません。

そして試験では、レボドパを3つの色に染めて、それぞれを溶解時間をずらしたバリアの中に入れました。

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Credit:Joseph Wang(UCSD)et al., Matter(2025)

胃の状態を模擬した実験では、最初の区画のレボドパは速やかに放出されましたが、他の2つの区画からは時間の経過と共に段階的放出されることが確認できました。

研究チームは、1種類の薬だけでなく、複数の薬を用いることも可能だと述べています。

たとえば、「朝にアスピリン、昼にβ遮断薬、夜にコレステロールを下げる薬」といった具合です。

もちろん、このカプセルを実際に用いるためには、さらなる研究が必要です。

しかし、これらが順調に進めば、薬の管理は簡略化され、「服薬を忘れたせいで病状が悪化する」というリスクを大幅に減らすことができます。

「複数の病気を患っていても、朝にカプセルを1つ飲むだけで安心」

そんな便利な世界は、すぐ近くまで来ているのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

One Timed-release Capsule Could Replace Taking Multiple Pills
https://today.ucsd.edu/story/one-timed-release-capsule-could-replace-taking-multiple-pills

One pill, multiple doses: New capsule stages delivery of your meds
https://newatlas.com/medical/capsule-medication-delivery/

元論文

Daily multi-segment capsule for time-tunable drug release toward enhanced polypharmacy adherence
https://doi.org/10.1016/j.matt.2024.101947

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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