『「謙虚な人」の作戦帳——誰もが前に出たがる世界で控えめな人がうまくいく法』(ジル・チャン 著、中村加代子 訳、ダイヤモンド社)の著者は、2022年の『「静かな人」の戦略書』(ダイヤモンド社)によって、母国の台湾を筆頭に世界各地でベストセラー実績を打ち立てた人物。
そのため注目を集めることになったものの、じつは注目されることが苦手なのだそう。
しかし、意外にも同じ性格だったプロ野球選手の親友が、「恐れるものなんてなにもない。弱さを認め、怖さを知った選手ほど、手強いものはないからね」と語るのを聞いて、気持ちが大きく変化したのだといいます。
それから私は、こう考えるようになった。
こんな私だからこそ、できることがあるはずだ、と。
私は、自分は不十分だし、何も知らないと思っているので、結論を急がず、まず人の意見に耳を傾ける。
人の意見や感じ方を気にするため、些細なディテールから重要なメッセージを見つけられる。
怖がりなので、あらゆるメリットとデメリットを考慮してから、決定を下す。
失敗して挫折感を味わいたくないため、リスクを未然に回避し、いつも相手をコントロールできるように、念入りに準備をする。
普通は、持っているものが多ければ多いほど強くなれるものだ。だが反対に、いつも「不十分」な状態にある私たちは、尽きることのない原動力を持っている。
自分には何が足りないかを知っているため、謙虚に、実直に、進歩を追求するからだ。(「日本語版への序文――すべての謙虚な人へ」より)
共感できる方も多いのではないでしょうか。つまり「謙虚な人」は、謙虚さと野心が共存できることを理解しているのかもしれません。
こうした考え方に基づいて書かれた本書のPART 2「『謙虚な人』の行動戦略 個性を生かす作戦」のなかから、CHAPTER 5「『継続できる目標』を設定する」に注目してみましょう。
はたして「謙虚な人」は、どうやって目標を見つければいいのでしょうか?
目標が適切かどうか見分ける
アメリカでエグゼクティブ・コーチングを務めているメロディ・ワイルディングは、著作『満たされない気持ちの解決法』(パンローリング)で、本来、大きな抱負を持つこと自体に問題はないが、そういった目標を立てた理由やプロセスが「不健全」だと問題が起こると書いている。(85ページより)
ワイルディングによれば、以下のような兆候が出てきたら、目標が自分に合っているかどうか確かめたほうがいいのだそうです。
1. 本当に目指したい目標ではない
「やるべき/やらねば」とか、「みんなそうだから」を思いはじめたら、その目標が自分に合っているかどうかを確認することが必要。
2.目標がもたらす苦痛が利益を上回る
当然ながら、なにをするにしても楽しいことばかりではありません。しかし、もしもその目標のことを考えるだけで眉間にしわがよったり、胃が痛くなるなど体調に変化が表れるのであれば、調整が必要でないか検討するべき(それが、みんなにクールだと思われたりするような案件であったとしても)。
3.プロセスではなく結果にだけこだわる
たとえば「年収100万ドル」を達成することだけ考え、それを達成するために必要な労力について考えが及ばないようだったら、一度立ち止まってみることが大切。
4.人生における優先順位が高いものが代償になる
その目標が大きな代償(健康を犠牲にする、家族との時間をあきらめるなど)を払わせるのであれば、一歩下がって「本当にその価値があるのか」検討したほうがよい。
このように「目標が自分に合っているかどうか」を確かめ、高すぎる目標に押しつぶされないようにしながら、目標を自分に合ったものに近づけることが大切だということです。(85ページより)
背後の「理由」を考える――本当にやりたいと感じるか?
目標を見つめなおし、「これがどこから来たものか」と自分に問いかけることを著者は勧めています。
マネージャーから与えられたものもあれば、自分で達成したいと感じたものもあるでしょう。家族の期待やキャリアから課せられたものや、負けたくないという気持ちに端を発したものもあるかもしれません。
いずれにしても、それがわかったら、そこから「自分の本当の目標」はなにか、あらためて考えてみることが大切であるわけです。
本当の目標は、誰かを喜ばせたり、報告書を飾ったりするためのものでもなければ、パーティーで自慢するためのものでもないし、ましてや、みんながやっているからやるものでもない。
本当の目標には、たった1つの理由しかいらない。
それは、「自分自身が本当にやりたい」だ。(88ページより)
「業界のキーパーソンがみんな出席するイベントだから、不都合が起きないように自分も出席しなければならない」とか、「職場のみんながハーフマラソンにエントリーするから、自分もエントリーしないわけにはいかない」、あるいは「クライアントと話を合わせるために、試飲会に参加しなければならない」など。
よくあることではありますが、そういった消極的は目標は「本当の目標」ではないわけです。
著者いわく、本当の目標とは次のようなもの。
「自分自身がパーソナルブランディングを強化したいから、ある分野に関する考えをSNSで定期的に発表する」
「終わったあとに心身ともにリラックスできるから、毎週ヨガのクラスに参加する」
「友人とのおしゃべりがストレス解消になるから、毎月時間をつくって野球をする」(89ページより)
他にもいろいろあるでしょうが、“大変であっても前向きな気持ちで取り組めること”こそが「本当の目標」だということです。(87ページより)
『「静かな人」の戦略書』出版後の著者は成功を実感できず、もう二度と本なんか書けないと感じたのだそうです。
しかし、日本で温かな励ましや心のこもったメッセージに触れた結果、「もしかして私の書いたものは、本当に誰かのパワーになっているのかも?」と考えるようになったそう。そんな経緯を経て生まれた本書はきっと、「謙虚な自分に悩む人」を勇気づけてくれることでしょう。
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Source: ダイヤモンド社
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