元JAXAの宇宙飛行士・野口聡一氏がハローワークで直面した「再就職の現実」とは?Photo:NASA/Handout/gettyimages

長年ひとつの組織に勤め続けてきたビジネスパーソンの中には、退職し「肩書き」を失うことに不安を覚える人も多いはずだ。定年間近でJAXAを退職した宇宙飛行士・野口聡一氏が、自らの経験をもとに「定年前退職」後の再就職についてアドバイスする。※本稿は、野口聡一『宇宙飛行士・野口聡一の着陸哲学に学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

JAXAを退職したあと
「肩書き」がないことに困惑

 私は、JAXAを退職した後、雇用保険の手続きのためハローワークを初めて訪れました。

 このとき、所属する組織がなくなったときの不安定さをしみじみと味わいました。組織を離れ、「自分は何者なのか」と真剣に問われている。ハローワークの体験を通じて、そう感じたのです。

 だって、それまでは、初対面の人に「株式会社○○、△△課の野口でございます」とあいさつするでしょ、ごく当たり前のように。

 ところが、もう今の仕事を辞めちゃったんですから、ハローワークの窓口の方に肩書きで説明するわけにもいかない。

 それまでの肩書きを使えない状況下で、自分で自分をどう表現するか。

 それって、棚卸しをして自分のスキルを見極め、どんな仕事に就くことが可能なのか、あらかじめ用意しておかないと説明できないわけです。

 いや、前の会社に心の底からプライドを持っている人は、退職しても、そこの肩書きを使っている人もいますね。

 JAXA出身者には結構多いです。「元JAXAの野口です」みたいな。

 でも、それで再就職が思うようにできるのか、どうか…。