日本発の大型タイトルとして話題を呼び、多くのユーザーが熱狂的にプレイしている「モンスターハンターワイルズ」。そうした話題性もさることながら、グラフィックスの負荷がかなり重いことでも知られており、快適に楽しむには高性能CPUやビデオカードを搭載した最新PCが必要だと言われている。

 しかしPC関連パーツはインフレ基調が定着しており、普通にゲーミングPC用の構成を考えると30~40万の予算が必要になることもある。そして、そこまでの予算をなんとかできる人も少ない(はずだ)。そこで今回は、なんとか予算を20万円におさめるよう努力した上で、話題のモンスターハンターワイルズを4Kモニターでも楽しめるPCを作ってみたい。

世代は古いが強力なビデオカードに16コアCPUオンボードマザー

 ゲーミングPCで一番重要なパーツはビデオカードだ。そしてインフレが著しいのもビデオカードで、ゲーミングPCが高騰を続けている原因の1つになっている。正直、この予算で最新最高性能のビデオカードを組み合わせるのはムリだ。

 そこで今回は、Sapphireの「NITRO+ Radeon RX 7800 XT GAMING OC 16GB GDDR6」を選択した。「Radeon RX 7800 XT」を搭載するアッパーミドルクラスのビデオカードで、最新世代と比べると世代は1つ古いが、VRAMは16GB搭載する。モンスターハンターワイルズのようなVRAMを多く利用するPCゲームに適しており、なおかつ実売価格も10万円を超えない。

Sapphireの「NITRO+ Radeon RX 7800 XT GAMING OC 16GB GDDR6」

モニター出力端子はDisplayPortが2基、HDMIが2基の構成。3スロット分を丸々使う分厚いGPUクーラーを装備

 CPUとマザーボードは、ちょっとした飛び道具としてMINISFORUMの「BD790i SE」を選んだ。これはAMDのノートPC向けCPU「Ryzen 9 7940HX」をオンボードで搭載したMini-ITX対応マザーボードだ。Ryzen 9 7940HXのCPUコアやアーキテクチャ自体は、デスクトップPC向けのRyzen 7000シリーズそのものである。

 このマザーボード自体は既に販売終了しているが、その後継であるBD795i SEの実売価格は6万8,000円前後。ちょっと高いと思うかもしれないが、Socket AM5対応のMini-ITX対応マザーボードは、最安クラスでも実売価格は3万円前後。16コア32スレッド対応CPUやCPUクーラーを残りの3万8,000円で調達することは不可能であることを考えると、かなり魅力的な選択肢だ。ただCPUの上にヒートシンクは搭載するが、ファンは装備しないので、ARCTICの12cm角ファン「P12 MAX」を追加した。

MINISFORUMの「BD790i SE」。大型のヒートシンクでマザーボードが覆われている

PCI Express 4.0 x16(BD795i SEでは5.0になる)対応拡張スロットを装備し、ビデオカードを組み込んでグラフィックス性能を強化できる

 PCケースは、Cooler MasterのmicroATX対応ミニタワーケース「Elite 301」にした。本来はMini-ITX対応ケースにすべきではあるが、今回のビデオカードの長さや厚みがそうとうなものであることを考えると、余裕を見てmicroATX対応モデルのほうがよさそうだと考えた。また実売価格が6,500円前後と安いにもかかわらず、12cm角ファンを3基標準で装備しているのもうれしい。ゲーミングPCでは、冷却性能も重要だ。

Cooler Masterの「Elite 301」

 電源ユニットは出力が850Wで80PLUS GOLD認証を取得したAntecの「NeoECO Gold NE850G M」。奥行きが14cmと短く、フルプラグインなのでコンパクトなケースで使いやすい。低出力時にはファンの回転を停止できるZero RPM機能にも対応する。

 そのほかメモリは16GBモジュールの2枚組となるMicronの「Crucial CT2K16G48C40S5」、SSDはWestern Digitalの「WD_Black SN850X NVMe SSD」で容量は2TB。いずれもゲーミングPCとしては十分のスペックだ。

Antecの「NeoECO Gold NE850G M」

Micronの「crucial CT2K16G48C40S5」

Western Digitalの「WD_Black SN850X NVMe SSD

 最終的な合計コストは217,000円前後といったところで、20万円をちょっと超える程度に収まった。今回は調達の関係でビデオカードが若干高めになっており、Radeon RX 7800 XT搭載の最安値モデルなら5,000円くらいは安くなる。またSSDや電源ユニットを調整することで、20万ちょっとくらいまでは削れそうな気配はあった。

カテゴリ 製品名 実売価格
CPU Ryzen 9 7940HX(16コア32スレッド)
後継モデルはRyzen 9 7945HX
マザーボード MINISFORUM BD790i SE(Mini-ITX、CPU搭載)
後継のBD795i SEで算出
6万7,990円
メモリ Micron Crucial CT2K16G48C40S5 (PC5-38400 DDR5 SO DIMM 16GB×2) 1万2,000円
ビデオカード Sapphire NITRO+ Radeon RX 7800 XT GAMING OC 16GB GDDR6(AMD Radeon RX 7800 XT) 9万3,000円
SSD Western Digital WD_Black SN850X NVMe SSD WDS200T2X0E(2TB、PCI Express 4.0) 2万1,000円
PCケース Cooler Master Elite 301(microATX) 6,500円
電源ユニット Antec NeoECO Gold NE850G M(850W、80PLUS GOLD) 1万5,000円
ケースファン ARCTIC P12 MAX ACFAN00280A(12cm角) 1,000円
合計金額 21万6,490円

組み込みは容易、モンハンも4Kでちゃんと動く!

 Elite 301は一般的なミニタワーケースであり、Mini-ITX対応マザーボードやATX対応電源ユニットの組み込みで苦労する部分はない。ただビデオカードの長さが300mmあるため、傾けながら内部に入れるなど、ちょっとした工夫は必要だった。とはいえぎゅうぎゅう詰めの印象もなく、初心者でも問題なく組めるだろう。

ビデオカードまわりは若干窮屈な印象を受けるが、組み込み作業の難所はない

 ビデオカードと電源ユニットカバーの隙間は、20mm前後とかなり狭い。ビデオカードは3スロットタイプで厚みは61.57mmもある。Mini-ITX対応ケースだと本当にギリギリだった可能性を考えると、microATX対応のElite 301にしてよかったなと思った。ただ、マザーボードがLED制御に対応していないため、前面ファンのLEDは点灯しない。

ビデオカードと電源ユニットカバーの隙間はかなり狭い

 基本的なベンチマークテストとして、PCMark 10 Extendedと3DMarkの各種テストの結果をまとめたのが下の表だ。スコア的にはアッパーミドルクラスのゲーミングPCと考えて問題ないだろう。

PCMark 10

3DMark

 次に今回の本題となるモンスターハンターワイルズのベンチマークテストで、その実力を検証していこう。解像度は4K(3,840×2,160ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)、フルHD(1,920×1,080ドット)の3通りで、[グラフィックスプリセット]は[高]と[ウルトラ]の2通り。それぞれについてフレーム生成機能の有無も検証している。

モンスターハンターワイルズ

 グラフを見てもらうと一目瞭然だが、フレーム生成を有効にする場合は4Kでも普通にプレイできることが分かる。フレーム生成を無効にするとたまにFPSが60を切る場面も出てくるが、有効にするとおおむね2倍のFPSになり、動きはかなりスムーズになる。WQHDとフルHDだと、フレーム生成を有効にしなくてもかなり快適だ。

 4Kモニターなら、最新PCゲームの精細感を存分に楽しめる。またWQHDやフルHDのハイリフレッシュレート対応モニターなら、なめらかな動きを楽しめる。モンスターハンターワイルズはかなり負荷が重いゲームではあるが、20万円をやや超える程度のゲーミングPC構成でこうした自由度を確保できるというのは、ちょっとした驚きではある。

 とりあえずタイトルは回収できたところで、ほかのゲームの状況も見ていこう。「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク」は解像度を4K、グラフィックスの設定を[標準品質(デスクトップPC)]と[高品質(デスクトップPC)]にしてテストしたところ、評価は[とても快適」(標準品質)と、[快適](高品質)だった。テスト中も描画はスムーズで、引っかかる感じはない。

ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク14

 続いて負荷の高いPCゲームの1つである「サイバーパンク2077」でも、ベンチマークテストモードを実行してみた。解像度は4K、グラフィックスプリセットは[中]/[レイトレーシング:中]、[ウルトラ]/[レイトレーシング:ウルトラ]の4通りで、フレーム生成を有効にすれば4K解像度でのプレイは可能だ。ただレイトレーシングを有効にすると描画性能が低下するのは、この世代のRadeon RXシリーズの特徴でもある。

サイバーパンク2077

負荷が高い状態でも各部の温度は心配なし

 最後にCPUやビデオカードの温度をチェックしていこう。

 アイドル時は起動後10分間の平均的な温度、動画再生時は動画配信サイトで動画を1時間視聴した時の平均的な温度だ。Cinebench時は「Cinebench R23」を実行中の最大温度、3DMark時は3DMarkの「Time Spy Stress Test」実行時の最大温度、モンスターハンター時は、モンスターハンターワイルズベンチマークテストを1時間ループ実行したときの最高温度である。検証時の室温は21.6℃で、温度計測には「OCCT 14.0.2」を利用した。

各部の温度

 CPUに連続的な負荷が長時間かかるCinebench時でもCPU温度は79℃で、まったく問題ない。Cinebench R23実行中にOCCTから計測したCPU単体の消費電力は100Wを維持し、動作クロックもすべてのコア、スレッドで4.2GHz前後だったため、放熱が追い付かず性能低下が起きている様子もない。

 3DMark時とモンスターハンター時は、長時間のゲームプレイにおける温度の状況を見るためのものだ。ビデオカードの温度は、どちらの状況でも65~66℃と安定していた。大型のGPUクーラーを装備していることはあるが、前面に装備する3基の12cm角ファンで外気をたっぷり取り込んで冷却できるためだろう。

 一方でCPU温度は90℃前後とやや高めだ。組み込まれたビデオカードを見ると、GPU裏面のパーツをハンダ付けしている部分がCPUのすぐ近くにあり、PCゲーム実行時の発熱が大き少なりとも影響していることが考えられる。ただこれは最大温度であり、今回のテストでも平均的には80℃前後に収まっている。実用上は問題ないだろう。

CPUクーラーとGPU背面位置がかなり近い

 主にモンスターハンターワイルドを中心に検証したが、ほかのゲームベンチマークテストの結果を見ると、フレーム生成機能を活用すれば4Kモニターでもなかなか快適にゲームをプレイできることが分かる。CPU温度やGPU温度も安心できる状況であり、なかなか使い勝手のよいゲーミングPCに仕上がったのではないだろうか。



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