「Google Cloud Next」でAIエージェント機能を大幅強化、エコシステムづくりも進める

Google Cloudは2025年4月9日~11日、米ラスベガスで年次カンファレンス「Google Cloud Next 2025」を開催した

 Google Cloudが開催した年次カンファレンス「Google Cloud Next 2025」。AIエージェント関連ツールのほか、AI処理を支えるコンピューティングアーキテクチャ“AI Hypercomputer”、AIモデル、SaaSの「Google Workspace」など、幅広い領域で新機能や機能強化を発表した。その主要なものをまとめる。

第7世代のTPU「Ironwood」を発表、電力効率は前世代比で2倍に向上

第7世代のTPU「Ironwood」、「AI Hypercomputer」のハードウェアン

 AI Hypercomputerのハードウェアでは、第7世代のTPUである「Ironwood」が発表された。Ironwoodは、前世代(第6世代)の「Trillium」比で5倍のピーク処理性能を持ち、ポッドあたりで9216チップまで拡張可能になった。提供開始時期は「間もなく」と発表している。

 Google Cloud VPで、機械学習、システム、クラウドAI担当ゼネラルマネージャのアミン・バーダット氏は、Ironwoodの登場により、ポッドあたりのコンピューティング能力が最大42.5 ExaFLOPS(エクサフロップス)になったと説明する。「(世界トップクラスの処理速度を誇る)米国のスパコン、El Capitanはポッドあたり最大1.7 ExaFLOPSなので、Ironwoodはその24倍以上だ」(バーダット氏)。これにより、最新の「Gemini 2.5」のような推論モデルの処理ニーズにも対応できるという。

 Google Cloudテクノロジー部門 兼 事業開発本部 執行役員の寳野雄太氏は、Ironwoodの省電力性能を強調した。前世代のTrilliumと比較して2倍の電力効率を実現するという。「クラウドインフラにおける電力効率は、サービス価格に反映される。そのため、より高い電力効率でトレーニングなどの処理ができることは重要だ」(寶野氏)。

AI Hypercomputerのハードウェアはパフォーマンスに最適化されている

Google Cloudで利用できるGPU一覧。NVIDIAの「B200」「GB200 NVL72」「RTX PRO 6000」もラインアップ

 2021年に発表した、オンプレミスでGoogle Cloudを利用できる「Google Distributed Cloud」では、LLMのGeminiが利用できるようになったことが発表された。

 「思いのほか反響が大きい」と、Google Cloud 技術部長(インフラ、アプリケーション開発、データベース)の安原稔貴氏が語るのが「Cloud WAN」だ。これは、Googleが所有するグローバルバックボーンネットワークを顧客に開放するもので、これまで提供してきたインターコネクトサービスなども統合して、企業向けWANとして使えるようにするという。

Google Cloudのバックボーンを顧客に開放する「Cloud Wide Area Network(Cloud WAN)」

音楽生成AIモデル「Lyria」が登場、マルチモデル化が進む

 Google Cloudは、Google開発のAIモデルとして「Gemini」ファミリーなどをリリースする一方で、AI開発プラットフォームである「Vertex AI」では、Gemini以外のさまざまなモデルも利用できる「マルチモデル戦略」をとっている。

 今回、新たに加わったのが「Lyria」だ。これは「入力されたテキストに基づいて音楽を生成するモデル」であり、実際に、会場のBGMとしてもLyriaが生成した音楽が流れていた。そのほかのモデルでは、「Gemini 2.5 Pro」プレビューや「Gemini 2.5 Flash」が発表されたほか、動画生成モデル「Veo」、音声生成「Chirp 3」も強化された。

基調講演では、Lyriaが生成した音楽と、Veoが生成した動画を組み合わせてビデオクリップを制作するデモが披露された

 マルチモデル関連では、Vertex AIが「どのモデルを使うべきか」の選択を支援する「Vertex AI Model Optimizer」機能も加わった。コスト重視/品質重視/バランス、といったパラメーターを設定するとモデルを選択してくれるという。

AIエージェントどうしがやり取りする「Agent2Agent(A2A)」プロトコル

 Google Cloudでは、すでに昨年のNextでAIエージェント構想を打ち出していたが、現在では業界全体に“AIエージェントブーム”が押し寄せた。Google Cloudでも「Agent Builder」「Google Agentspace」などを発表してきた。

「Google Agentspace」

 今回は、Agent Builderの実験的(エクスペリメンタル)機能として、「Google Maps」によるグラウンディングサービスが発表された。2024年に発表していた「Google検索」との連携に続くもので、寳野氏は「マップのロケーション情報などをグラウンディングして返すことで、真実性を持った回答ができる」と説明した。

 そのほかにも、Agent Builderでは、エージェント開発フレームワークの「Agent Development Kit」、実行環境の「Vertex AI Agent Engine」、サンプルコードやツールを提供する「Vertex AI Agent Garden」などの機能が発表された。

 さらに、エージェントどうしがやり取りを行うための「Agent2Agent(A2A)」プロトコルを、オープンソースで公開する。このA2Aは、Salesforce、SAP、ServiceNow、Box、UiPathといった、すでにAIエージェントを提供している企業からの賛同を受けている。寳野氏は、オープンなプロトコルであるため「ユーザーはGoogle Cloudにロックインされるという心配がなくなる」と説明した。

「Agent2Agent(A2A)」プロトコルをオープンソース公開

 Agentspaceでは、「NotebookLM」との連携機能、ノーコードのエージェント構築ツール「Agent Designer」、Googleやサードパーティ、自社が提供するエージェントを探索できる「Agent Garally」などの一般提供開始が発表された。

 Google Cloud AI/ML 事業開発部長の下田倫大氏は、今回のエージェント関連の発表によって「エージェント構築に必要なものがそろった」と述べた。「Google Cloudは、LLMでは決して先行者のイメージではなかったが、エージェントの時代には新たなビジョンや方向性を先行して打ち出せた」(下田氏)。

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