海洋航海をテーマにしたゲームが大好きです。筆者はこれまで先日「Nintendo Switch Online」にて配信されたSFC版『大航海時代II』の紹介記事をはじめ、過去に『大航海時代IV』『セーリング エラ』『サグレス』など、多くの「大航海時代」を題材にしたゲームのレポートを執筆してきました。
そんな中で、日本のゲーム制作サークル・あとらそふとが手がける海洋交易シミュレーション『イル・ドー』のSteam版が2025年3月30日に早期アクセスにてリリースされました。本作はDLsiteにて2025年1月7日リリースされた同作のSteam移植版です。
本作は、ファンタジー風味な世界でのインドおよび東南アジアを中心とした地域が舞台。プレイヤーは9つの勢力がそれぞれの利権の獲得や支配を行っている中で、自身の艦隊を率いながら交易や戦闘、冒険などを行って資金や名声を獲得していきます。登録する本拠地によってストーリーや勢力の関係も変化していきます。

本稿では、Steam版の配信もスタートした『イル・ドー』のレビューをお届けしていきます!

小さな船から成り上がれ!
『イル・ドー』ではまず、プレイヤーの分身となる主人公の作成から始まります。主人公は名前や見た目、性別のほか、自身の率いる商会名と旗などを設定していきます。キャラクターは男女それぞれ4種類ずつで、服の色などは自由にカスタマイズ可能です。最後に発掘家や軍人といった職業を決定します。
次に決めるのはプレイヤーの初期位置です。ゲーム内では各勢力の本拠地があり、対応した9つの港を選択できます。ここで気をつけたいのが勢力ごとの関係で、例えばスペイン勢力ならオランダや日本と仲が悪く、敵対勢力の船と近づいた場合に戦闘が発生する可能性があります。




今回の初回プレイではオランダ勢力を選択し、東南アジアのバタヴィアからゲームがスタート。ストーリーの冒頭、いきなりオランダからの依頼でスペイン私掠海賊と戦うシーンから物語は始まります。ここは導入部なのでサクッと勝利して、報酬をもらいにパタヴィアにある執政室へと向かいます。
本作のイベントシーンでは、会話の中での選択肢によってプレイヤーの基礎ステータスが変化します。例えば最初のイベントでオランダの総督と冒頭の海戦の報酬についての選択肢が出るのですが、そこで金額についての意見を出すことで交渉がアップする、というイメージです。





ちなみに開始港によって序盤の展開やクエストも異なります。ある程度勢力圏による差もありますが、まずは気になる国、もしくは総督の雰囲気で決めても問題ないと思います!



まずは交易!安く売って高く売る
船というのはお金がかかるもので、戦闘や冒険と、あらゆるものでお金がかかるものです。そのため、ゲーム内では少しでもお金を稼ぐために、港から港を巡って交易でお金を稼がなければなりません。
交易の基本は「安く売って高く売る」ことです。『イル・ドー』では交易所で取り扱う交易品の相場や価格の比較などが表示されるため、今安いものや高騰している品目などの情報が簡単にわかります。また、積んでいる交易品の港ごとの予想収益もわかるので、マップを見ながら航路を決めるのも有効です。



相場調査は利益を出すために欠かせません。マップ画面では訪れたことのある港の情報が記載されるのですが、その港が特別な相場の際にはアイコンで表示されます。「飢饉」であれば食料品などの価格が高騰したり、「開拓」であれば工業品や貴金属が高騰するのです。この機会を逃していては船乗りではありません。
交易を繰り返してお金を稼いだら、港に投資して利権を上げていきましょう。利権が上がれば港ごとに関税が下がったり、新しい交易品を得られたり、購入数が増えたりと、さまざまなボーナスが得られます。船に積める交易品の量は限られているので、高級な商品を扱えるだけで一回の利益は大幅にアップします。



なるべく近い港で大きく利益を上げられるようになるのが交易のコツ。投資を続けて関税が低い港同士で交易したり、特殊相場のときに販売数が多い品目のある港を狙っていきましょう。また、商人系の仲間がいればスキルで利益も出しやすくなります。



お金があるだけでは良い船は作れない!
本作のユニークな点として、造船所で船を買う際にはお金だけでは足りないという部分。ゲーム内では食料品や宝石、染料、繊維などの「資材」という項目があり、船部品はこの資材を消費して作ることになります。
資材は海上にある難破船や幽霊船などをサルベージしたり、港で購入した交易品を転用したり、さまざまな手段で獲得できます。また、ゲーム中で船部品を入手することで、資材を消費せずに組み込むこともできます。サルベージは仲間のスキルをもとにしたダイス判定なので、なるべく多芸な仲間を揃えましょう。



船造りは雛形を選択するか、自分で自由にパーツを組み合わせることで製作可能。組み合わせによって完成する船の種類やステータスが変わるので、今持っている資材を見ながら、少しでも性能の高い船を作りましょう。海戦をしないのであれば、積荷室を増やして交易するのもオススメです。お金が余れば転用もできますよ。
ゲーム内ではマカオからインド北部まで、色々な港を巡っていきます。性能の高い船さえあれば航海速度もアップしますし、各地で起こるイベントや海戦にも対処しやすくなります。とにかく他の勢力や海賊に比べて初期の主人公船は弱いので、最初は我慢しながら大きな船に乗るのを目指しましょう。

港を巡って最高のメンバーを集めよう!
各地の港にある酒場に看板娘がいるのも本作の大きな魅力。さまざまな種族や性格、見た目の彼女たちは、海域で名を馳せる海賊などの情報をプレイヤーに与えてくれます。プレイヤーは資材を消費することで、酒場娘に贈り物をあげて好感度も上げられます。
好感度が一定以上になれば、酒場娘から料理がもらえます。料理はこのゲームにおいて装備品のようなもの。航海士に装着することで、ステータスやスキルを上げることができます。また、余った料理は酒場でパーティーを開くことも。料理はサルベージや海戦でも入手可能です。



酒場によっては新しい航海士を見つけることもあります。本作の航海士は“船付き”で仲間になるので即戦力として活躍してくれます。仲間の数が増えないと艦隊数も増えないので、お金に余裕があればどんどん勧誘していきましょう。また、各地域のイベントを進めると仲間になるキャラクターも存在しています。
航海士が増えれば別働艦隊として働いてもらうことも可能で、お金やスキルアップ用のポイントも獲得できます。スキルは本作でかなり効果が大きいので、仲間を集めながらしっかりと強化していくことも大切です。



なお、最新アップデート1.20で酒場娘も航海士として雇えるようになりました。酒場娘は別働艦隊としては運用できずパーティーメンバーになるので、これでますますお気に入りのメンバーで航海ができるようになりますね!




海戦・冒険・そして大艦隊へ
艦隊が強化されたらいよいよ海戦を始めましょう。海戦は航海中に相手の船に近付くことで仕掛けることが可能です。本作の海戦は砲撃戦と白兵戦のほか、一部の戦闘では一騎打ちが発生することも。海戦はリーダーを倒せば勝利なので、操作次第で大物相手にも勝てますよ。
海戦に勝利することで、敵国の船だったら近隣の港の利権を減らすことができますし、賞金首であれば根城にしている上陸地点がアンロックされます。上陸地点はマス目を移動しながらイベントを進めて探索率を上げていく形式で、それぞれの地点ごとに色々な動物や遺跡などを発見できます。





すべての発見物を見つけた上陸地点は開拓地として利用できるようになります。開拓地は資材の安定供給を可能とするもので、レベルを上げていくことでその効率は大きくアップしていきます。資材の獲得は間違いなく開拓地の解放が一番効率的なので、低ランクの賞金首に勝てる艦隊をなるべく早く作り上げることも大切です。



難易度選択もありますが、交易や冒険などは比較的やりやすいので、ある程度ゲームに慣れると艦隊は加速度的に強化されていきます。圧倒的な戦力をもって海域を征するのは大航海ゲーの醍醐味ですね!



インドおよび東南アジアという地域を題材にした『イル・ドー』は、小さい船から交易を重ねて少しずつ勢力を伸ばしていくという、航海アドベンチャーの楽しい部分が詰まっています。開発がリスペクトしたというコーエーテクモゲームスの『大航海時代』シリーズへの愛もしっかりと感じられます。
交易などは情報も多いので利益を上げやすく、比較的遊びやすく設定されています。その上で「資源」というシステムでお金だけでは強力な船を作りづらく、艦隊強化のために色々なゲーム内要素を体験するゲームデザインになっているのだなと思います。開拓地が育つと資材は溢れますが、序盤の苦労は大切な宝物です。



全体的に船性能やクルーのスキル依存度が高く、海戦や冒険は慣れてくるとある程度単調になる部分もありますが、発見物や開拓地といった恩恵も用意されています。また、Steam版でコントローラーを使うことでUIに不具合が出ることもありますが、現在解消に取り組んでいるようです。早期アクセス期間計画は半年ということなので、今後の更新にも大きく期待です。

本編クリア後は次回プレイ用の引き継ぎ要素があったり、ストーリー無しでプレイできる「ミッション」の解放も。本編で、カスタムを含む難易度設定も可能なので、色々な遊び方で自由な航海を楽しめますね!
Game*Spark レビュー 『イル・ドー』 PC(Steam/DLsite) DLsite:2025年1月7日/Steam:2025年3月30日リリース(早期アクセス)
冒険・交易・海戦で海域の制覇を目指す海洋交易シミュレーション!
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GOOD
- 港を巡り交易してお金を稼ぐというジャンルとしての間違いない楽しさ!
- お金だけでは強力な艦隊をなかなか作れない「資源」システムがバランスとして秀逸。
- インド・東南アジアに注目した舞台設定。ファンタジー風味の世界観も心地よい。
BAD
- ジャンルの宿命ではあるが、どうしても育ちすぎると海戦も探検も単調になってしまう。
- Steam版でのコントローラー関連のUI不具合もあり。早期アクセスなので改善に大きく期待。目に見える不具合がなくなれば+1点。