NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが、ドナルド・トランプ大統領の私邸であるマー・ア・ラゴで催された夕食会に参加した直後に、NVIDIAのAIチップである「H20」を中国に輸出することを禁止する規制案が棚上げになったことが報じられました。
Trump administration backs off Nvidia’s ‘H20’ chip crackdown : NPR
https://www.npr.org/2025/04/09/nx-s1-5356480/nvidia-china-ai-h20-chips-trump
Trump reportedly walking back AI chip export curbs to China • The Register
https://www.theregister.com/2025/04/09/nvidia_us_export_ban_change/
NVIDIAのH20は、輸出規制に抵触しないように性能を抑えて設計された中国専用AIチップで、NVIDIAにとって重要な市場である中国にアメリカ企業が合法的に販売できるものとしては最先端のAIチップです。
H20は、2024年だけで100万個が売れると予想されるなど中国で非常に人気でしたが、それだけに以前から「H20も規制対象になるのではないか」との見方が強まっていました。
NVIDIAは2024年に中国でH20チップを100万個販売して2兆円を売上げる予定、HuaweiのAIチップの2倍を販売して存在感を示す – GIGAZINE
さらに、2025年1月に中国のAI企業が大規模言語モデル「DeepSeek R1」をリリースし、それほど高性能ではないAIチップでアメリカの最先端モデルに匹敵するAIを開発できると示したことで、H20の需要は爆発的に増加。AI分野におけるアメリカの優位性が揺るがされる事態となったことから、トランプ政権がH20の規制に関する議論を本格的に加速させたことが報じられていました。
こうした中、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは4月上旬にトランプ大統領の邸宅で催された夕食会に出席しました。一部報道では、このディナーの参加費は1人100万ドル(約1億4680万円)するといわれています。
そして、アメリカの公共放送局であるNPRは2025年4月9日に、夕食会後にアメリカ政府がH20チップに関する方針を転換し、追加規制の計画を保留にすることを決定したと報道しました。
事情に詳しいものの公に話す権限がない2人の情報筋の話によると、アメリカ政府は数カ月前からH20を対象とした輸出規制の準備を進めており、早ければ2025年4月の第2週中にも発動される予定だったとのことです。
また、情報筋の1人は「今回の方針転換は、NVIDIAがトランプ政権に対して、アメリカに設置されるAIデータセンターへの新しい投資を約束したことが関係している」と話しました。
NVIDIAが引き続き中国にH20を輸出することをトランプ政権が容認したのは、中国を大きく利することになると専門家は警告しています。タフツ大学の政治学者で、半導体への造詣も深いクリス・ミラー氏はNPRに「H20のようなチップは、性能を落とすように特別に改良されているため、中国への販売は合法となっていますが、ほとんどの中国の国産チップより優れています。中国はまだ必要な量の半導体を国内だけで生産できないため、NVIDIA製チップの輸出に頼っています」と話しました。
また、連邦議会下院の中国特別委員会で筆頭委員を務めているラジャ・クリシュナムルティ議員は、NPRへの声明で失望を表明し、「輸出規制は効果を発揮していましたが、アメリカには時間を無駄にする余裕はありません。規制を回避するように設計されたチップの輸出が規制できない日々は、敵対国が私たちを打倒するために備蓄を増強できる日々です」と述べました。
複数のメディアがホワイトハウスおよびNVIDIAにコメントを要請していますが、記事作成時点のところ両者とも回答を控えています。
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