貿易戦争はイーロン・マスク氏にとっても問題になりつつある。同氏がトランプ大統領の貿易・製造業担当の首席顧問であるピーター・ナバロ氏を「レンガ袋より知能が低い」と批判した頃、スターリンクはカナダにおける衛星インターネットの補助金を数億ドル規模で失う見込みとなっていた。

 3月4日、オンタリオ州のダグ・フォード知事は、1億ドル規模のスターリンク契約を破棄した。ケベック州は過去3年間で1億3千万ドルを投入し住民に割引サービスを提供してきたが、6月に満了を迎える契約を更新しないとフィナンシャル・タイムズに述べた。

 また4月3日には、ユーコン準州のランジ・ピライ知事も可能な限りスターリンクとの契約を打ち切る意向を表明している。

 公益擁護センターのジェフ・ホワイト事務局長はCNETに対し、「マスク氏がトランプ大統領を支援し続ける限り、スターリンクは我々の主権にとって脅威となる。この企業にサービス提供を許可すべきかを真剣に検討すべきだ」と語った。

 フィナンシャル・タイムズが入手した文書によると、カナダ最大の通信会社ベル・カナダとその子会社ノースウェステルは、スターリンクが北部僻地向けの補助金を獲得できないよう政府に対してロビー活動を行っている。スターリンクの発表によれば、2024年6月時点のカナダでの加入者は40万人を超える見込みだ。

 この状況は、スターリンクが米国のブロードバンド助成金9億ドルを申請して、行政から却下された3年前を彷彿とさせる。当時はFCCが速度要件を満たしていないとして認可しなかったが、その後、状況は変わった。マスク氏が2024年の共和党候補支援に1億3200万ドルを投じた結果、スターリンクは最大200億ドル規模の地方ブロードバンド補助金を得る可能性が出てきた。

 トランプ大統領が関税を90日間停止すると発表したものの、カナダがスターリンクから距離を置く方針を撤回するかは依然として不透明だ。スターリンクはカナダのへき地住民にとって恩恵が大きい反面、高額な料金に対する批判も根強い。

 スターリンクの広報担当者はコメント要請に応じていない。


他国はより融和的

 関税はスターリンクにとって必ずしも致命的な障害にはなっていない。トランプの「解放の日」に先立つ4月2日、ベトナムは2030年までの試験運用を認めた。これは米国の関税を回避したいベトナムの思惑があるとの見方も出ている。

 バングラデシュでも、輸入関税37%が課される数日前にスターリンクのサービスを承認した。さらに4月8日には、ブラジルが追加で7500基の衛星打ち上げを認可した。これは現在の許可数である4408基の倍以上にあたる。

 (国内編集部追記) 日本ではKDDIが4月10日より、スターリンクとスマートフォンの直接通信サービス「au Starlink Direct」の提供を開始した。

 Starlinkを使って日本全土をauエリアとするサービスで、これまで圏外だった場所でもメッセージの送受信や位置情報の共有が行える。iPhone 14以降など幅広いスマートフォンが対応するほか、当面無料とすることで他社との差別化を図る。

 なお、KDDIで代表取締役社長を務める松田浩路氏は、スターリンクのオーナーであるイーロン・マスク氏の言動がリスク要因になるのではないかとの指摘に「信頼関係が重要」とコメント。さらに 「石川県の能登の地震のときに、(アンテナを)まず350台持ってきていただいたのはSpaceX社」とも付け加えた。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。



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