東京ビッグサイトにて5月9日から開催していた「EVO Japan 2025」が閉幕した。様々な格闘ゲームの頂点を決めてきた本大会。最終日のメインステージでは午前中に「鉄拳8」、午後には「ストリートファイター6(以下スト6)」の決勝となる「FINALS」が行なわれた。
「スト6」は「EVO Japan」にて2度目の開催だが、エントリー数は6,653名で、昨年と比べて約1,500名以上のプレーヤーがNew Challengerとして参戦した形となった。最終日の「FINALS」では、6,653名からTOP8まで絞られた選手が頂点を決める。そこには果たしてどのようなドラマが待っていたのか? 本稿では「スト6」のFINALSについて、現地での雰囲気や様子なども交えてレポートしていく。
【Day 3 Main Stage | EVO Japan 2025 presented by Levtech】
ドラマチックなメンバーたち8名が勝ち残り
「スト6」部門のFINALSでは、今回も3本先取のダブル・イリミネーション方式を採用。勝利した選手はWinnersトーナメントを進み、1度負けた選手はLosersトーナメントを勝ち続ける必要がある。最後にWinnersFinalで勝利した選手と、Losers Finalで勝利した選手がGrnad Finalを行ない、最終的な勝者を決する。なお、Grand Finalでは、Winners側は1度負けても再戦できるチャンスがある。Losers側が勝利した場合はリセットされ、もう1度再戦が行なわれる事になる。Winners側が勝利した場合は、その瞬間に勝者が確定となる。
2日間の予選を勝ち切ってFINALSに進出した選手は8人。Winnersサイドで勝ち上がったのは、ZETA DIVISION所属のももち選手、FAV gaming所属のりゅうきち選手、Weibo Gaming/Red Bull所属のMenaRD選手、REJECT所属のあきら選手の4名で、Losersに勝ち残ったのはSaishunkan SOL 熊本/Answer.M.Gaming所属のこばやん選手、ZETA DIVISION所属のひぐち選手、Team Falcons所属のNL選手、DRX所属のLeShar選手の4名となる。
今回の8名だが、どの選手も注目度が高く、誰が優勝してもドラマが生まれそうなメンバーばかりとなっている。
まず注目したいのは、今年2025年に設立された、ZETA DIVISIONのストリートファイター部門所属選手だ。Winnersには、「EVO Japan 2019」の「ストリートファイターV アーケードエディション」部門にて優勝した経験もあるベテラン・ももち選手が、そしてそのももち選手が立ち上げたチーム、忍ism Gamingで育てられ、Saishunkan SOL 熊本で実力を伸ばし、ももち選手とともにZETA DIVISIONへ加入した若手・ひぐち選手もLosersに残った。どちらがが優勝という事になれば、移籍直後のEVO Japan優勝で今後のチームの勢いにさらなる拍車をかける事になりそうだ。
FAV gamingのりゅうきち選手は、去年の「EVO Japan 2024」でもFINALS進出を果たしたが、惜しくもMenaRD選手に敗れてLosersに落ち、最終的に4位となった経緯がある。今年こそはその雪辱を果たしたいところだ。加えてFAV gamingは長年チームを引っ張ってきたりゅうせい選手が抜けるなど、チーム編成がガラッと変わったタイミングでもあるので、りゅうきち選手のEVO Japanに懸ける思いはかなりの物だろう。
Saishunkan SOL 熊本/Answer.M.Gaming所属のこばやん選手は、2024年のTOPANGAチャンピオンシップで優勝を果たした若手選手の1人だが、ついにEVO JapanのFINALSに残る快挙を見せた。今年はSaishunkan SOL 熊本からSFL初出場が決定し、ザンギエフ使いの希望の星でもあるので、ザンギエフ使いの筆者としても個人的に応援したい選手の1人だ。
REJECTのあきら選手は2024年にプロ格闘ゲーマーの活動に専念するべく兼業から専業に変更して、REJECTに移籍してから1年が経過したタイミングだ。ここでEVO Japanでの優勝経験が加わればプロとしての実績としても、ドラマ的にもかなり熱い事になるのは間違いない。
他にも、日本のSFLに出場した初の海外選手、DRX所属のLeShar選手や、大規模な世界大会の常連と言える強豪、Team Falcons所属のNL選手、そして、去年の「EVO Japan 2024」覇者、Weibo Gaming/Red Bull所属のMenaRD選手と、3人の海外選手たちにも注目が集まる。
いよいよFINALSスタート! 無敗が続くMenaRD選手の脅威
試合はWinners側から進められる流れとなっており、第1試合は、ももち選手 vs りゅうきち選手の1戦となった。ももち選手は不知火舞、Ryukichi選手はケンを使う。
1戦目はももち選手の舞が勝利するも、2戦目はりゅうきち選手がケンの猛攻で取り返す。3戦目からは、ももち選手が使用キャラクターをエドに切り替えて勝利。4戦目はりゅうきち選手が取り返す一進一退の攻防が続く。最終5戦目はフルラウンドまでもつれ込む接戦をりゅうきち選手のケンが制して勝利。第1試合はりゅうきち選手が3-2で勝利し、Winners Semi-Finalに進出を決めた。ここで負けてしまったももち選手はLosersに落ちる事となる。
続くWinners第2試合は、MenaRD選手とあきら選手の1戦。MenaRD選手はブランカ、あきら選手はキャミィ。MenaRD選手のブランカの動きがさえわたり、結果はMenaRD選手が3-1で勝利し、Winners Semi-Finalでりゅうきち選手と激突する事となった。ここで負けてしまったあきら選手はLosersに落ちる。
熱すぎるももち選手 vs LeShar選手。0−2からの逆転劇
次のLosers第1試合はこばやん選手とひぐち選手の1戦。こばやん選手はザンギエフ、ひぐち選手はガイル。途中機材トラブルなどもありつつ、両者譲らぬ激闘が展開し、フルカウントフルセットまで粘る展開から、最後はこばやん選手の攻めが刺さって勝利。第1試合はこばやん選手が勝利し次にコマを進める運びとなった。敗れたひぐち選手は惜しくもここで脱落となる。
Losers第2試合はNL選手とLeShar選手の対決。NL選手は豪鬼、LeShar選手は舞をピック。LeShar選手の舞の動きが好調で、一気に2本先取で試合を有利に進める。NL選手も反撃を見せるが及ばず、第2試合はLeShar選手が3-0で勝利し、次にコマを進めた。残念ながらNL選手はここで脱落だ。
先ほどWinnersから落ちてきたあきら選手は次のLosers第3試合で勝ち上がってきたこばやん選手と激突。キャラクターは変わらず。前半はあきら選手のキャミィの読み合いがこばやん選手を上回り、2本先取して追い詰める。ところがその後、猛反撃を見せたこばやん選手のパワーでフルセットまでもつれ込む接戦となる。だが、最終5戦目はこばやん選手の勢いが止まらず、そのまま一気に攻め切ってこばやん選手が勝利、次のLosers Semi-Finalに進出を決めた。WinnersでFINALSに進出したあきら選手だが、ここで脱落となってしまった。
Losers第4試合はWinnersから落ちてきたももち選手がLeShar選手と対決。ももち選手はエド、LeShar選手は不知火舞。前半はももち選手のエドの動きをきっちり抑える立ち回りを見せたLeShar選手が2本連取で王手を掛ける。そこからももち選手のエドが反撃を見せ、追いつき追い越し、最終5戦目はももち選手のペースで試合が展開し、そのまま駆け抜けて3-2でももち選手が勝利、LeShar選手はここで脱落だ。
まだまた止まらないこばやん選手! 名試合を量産
ここからはWinners Finalとして、先ほど勝ち上がったりゅうきち選手とMenaRD選手の1戦。りゅうきち選手はケン、MenaRD選手はここでなんとザンギエフをチョイス。初戦を見事にMenaRD選手が勝利するも、2戦目以降はりゅうきち選手のペースで試合が進んで2本先取。追い込まれたMenaRD選手はここでキャラをブランカにチェンジ、ギリギリの接戦が連続する展開だったが、最後はMenaRD選手がブランカで押し切り、3-2で勝利。Grand Finalへの進出を果たした。りゅうきち選手はLosersとなる。
次のLosers Semi-Finalはこばやん選手とももち選手の1戦となる。こばやん選手はザンギエフ、ももち選手は不知火舞。キャラクターとしてはザンギエフに有利な不知火舞だが、ギリギリの攻防を制してこばやんが2連勝という驚異の対応力を見せる。ここでももち選手がエドに変更し、冷静な対処でももち選手が1本を取り返す。だが、その後もこばやん選手の勢いが止まらず、ザンギエフにとって本来ならエドも不利なキャラクターだが、ここをこばやんが攻め切って勝利し、勝利し、Losers Finalへの進出を決めた。ももち選手は残念ながらここで脱落だ。
Losers Finalは先ほどWinners Finalで敗れたりゅうきち選手とLosersを勝ち上がってきたこばやん選手の1戦だ。りゅうきち選手はケン、こばやん選手はザンギエフ。一進一退の攻防を見せる両者だったが、最終戦までもつれこんだギリギリのバトルの結末は、慎重な立ち回りを制したりゅうきち選手が3-2で勝利。Grand Finalの舞台で待つ、先ほど敗れたMenaRD選手に再び挑戦する権利を得ることとなった。
りゅうきち選手 vs MenaRD選手再び! MenaRD選手が2年連続覇者に
いよいよ迎えたGrand Finalは、Winnnersを勝ち上がったMenaRD選手に対して、Losersに落ちてなお闘志を燃やすりゅうきち選手が再びMenaRD選手に挑戦する。MenaRD選手はブランカを選択、りゅうきち選手はケン。初戦はりゅうきち選手が慎重な立ち回りで先制。MenaRD選手もその隙を突く形で反撃して1本を取り返す。次はお互いラウンドを奪い合う展開ながらも慎重な立ち回りでMenaRD選手がギリギリで勝ち切って2本先取となり、いよいよリーチに手がかかる。
粘りの攻めを見せるりゅうきち選手だが、これを耐えて反撃を見せるMenaRD選手がそのまま勝ち切って勝利。3-1でりゅうきち選手を撃破したMenaRD選手が優勝!「EVO Japan」のスト6部門、2年連続優勝の2連覇という偉業を達成する事となった。
表彰式において、コメントを求められたMenaRD選手は「会場に来てくれたみなさん、Weibo Gaming、Red Bull、家族、神様などすべてに感謝します。皆さんもご存じの通り、この1年間は自分にとってはとても厳しいシーズンでした。ブランカは以前ほど強くなく、ルークも失いました。本当に大変な1年でしたが、ここで学んだことは、自分自身を信じ続ける事をやめてはいけないということです。この困難な人生の中で、私たちはみんな、少しの夢を諦めずに信じ続けてもいいと思います(筆者意訳)」とコメント。
加えて「One More Thing」として、「ウメハラさん」と一言呟くと、会場はそれだけで大きなざわめきを見せる。その後は「ご連絡をお待ちしております(筆者意訳)」として会場は更なる盛り上がりを見せた。
これについて補足すると、2月にMenaRDが投稿したXのポストを示唆したものだ。このポストでは、丁寧な日本語を使ってMenaRD選手がウメハラ選手に向けて挑戦状を叩きつけており、今後のウメハラ選手の動向などにも期待が掛かっている。
ウメハラさんへ
こんにちは。お元気ですか?
今日はお伝えしたいことがあります。
ウメハラさんはストリートファイターで長いセットをやらせたら右に出る者はいない、史上最高の選手だと思っています。…— WBG MenaRD🇩🇴 (@_MenaRD__)February 13, 2025
オンラインでは味わえない臨場感。コンボに合わせての声掛けも
以上、「EVO Japan 2025」の「ストリートファイター6」部門のFINALSの模様をお伝えした。MenaRD選手の2連覇は脅威だが、これまでの取り組みや、本日の試合での動きを見ていると、納得の結末でもある。今年こそはEWCやCCなどのビッグタイトルを取ってほしいところだ。
「スト6」の登場以降、こうした大型大会の参加者は増加の一途を辿っている。筆者は2日目と3日目の2日間、会場に足を運んだが、2日目までは実際にゲームをプレイする目的の参加者の比率が高く、東京ビッグサイトというかなり大きなホールを使用したにも関わらず、場内はかなりの盛況ぶりで、どこに行くにも人の荒波に揉まれる状況だった。
3日目になるとゲームプレイ目的の参加者よりも観戦目的の参加者が増えており、多少落ち着きを見せていた印象だが、それでも人数はかなり多く、かなり奥まで多くの人が立ち見でメインステージのスクリーンに注目している光景が見られた。
また、現地での様子を見ていると、観戦者たちも慣れてきており、壇上のMCたちとの掛け合いや、試合中の選手への声掛けも個性的になっている印象を受ける。キャラクターのコンボに合わせての声掛けなども盛り上がっており、会場での観戦がさらに楽しめるようになっている。
こうした会場でのオフライン観戦の醍醐味はオンラインでは味わえない臨場感だ。大型スクリーン内の試合の様子を大勢の人間で固唾を飲んで見守ったり、推しの選手の勝利を願って大声で応援の言葉を投げかける。その臨場感を体感するには、やはり1度会場に来て自らの体で味わうのが最も理解できるだろうと思うので、未体験の人は是非1度、会場に足を運んでみてほしい。
「EVO Japan 2025」は無事閉会したが、「ストリートファイター6」の大会シーンとしてみると、むしろこれが開始の合図でもある。この先もSFLやCPTプレミア大会の数々などに加えて、まだ公開されていない、Year3の新キャラクター追加やシステムの調整など、この先も「ストリートファイター6」の話題からはまだまだ目が離せない日々が続く事になりそうだ。
(C)EVO Japan 2025
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