米中両国はスイス・ジュネーブでの貿易協議で双方の関税の大幅引き下げで合意し、そのうち一部は90日間の時限措置とされた。対中関税の猶予期間を活用しようとする米企業の間で、中国工場の操業を再開し製品の出荷を急ぐ動きが広がっている。
米ボディーケア製品メーカー、セラボディは中国での製造を既に再開し、生産を本格化させている。モンティ・シャルマ最高経営責任者(CEO)は「この仕事を40年やってきたが、コストが30%増えても」、こんなにうれしいと思ったのは初めてだと語った。
ただ、生産再開は一筋縄ではいかない。中国からの輸入品を扱う米企業は、輸送需要の急増によるコスト上昇や納品の遅れといったリスクに直面している。加えて、90日間では海上輸送を含む国際的なサプライチェーンの調整には限界がある。
穴あきトートバッグで知られる米ボッグ・バッグは値上げの決定を撤回し、当面は現行価格に据え置く方針。同社も今年初めから停止していた中国での生産を再開した。輸出を急ぐ意向だ。
同社創業者でCEOのキム・バッカレラ氏は港湾施設の逼迫(ひっぱく)が見込まれる中で、「とにかく仕上げて、積み込んで、海上輸送に出す必要がある」と述べた。
世界のブランド企業向けに受託製造を手がけるジェニメックスのCEO、デービッド・チタヤット氏は、今回の時限的な関税引き下げを受け、米企業は中国工場に保管していた在庫の出荷を急ぐとみられると語った。
多くの企業は米中貿易協議が決裂したり、90日間の猶予期間終了後に関税が再び引き上げられたりする事態に備え、米国内の在庫を積み増す見込みだ。関税の大幅引き上げを受けて生産を停止していた企業は増産が必要になる。
チタヤット氏は、現行水準の関税であれば企業は対応可能だとしながらも、若干の値上げにつながるとの見通しを示し、製造コストの30%増加は小売価格の5-10%程度の上昇を招くと説明した。
原題:China Tariff Relief Spurs Shipping Rush, U-Turn on Price Hikes(抜粋)