トランプ米大統領による4月の関税措置を受けて高まっていた市場のボラティリティーが、米中による相互の関税率引き下げ合意を背景に一転落ち着きを取り戻している。
米株式市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は12日、前日比で約3.5ポイント低下の18.39と、3月終盤以来の低水準で終了した。同指数は米国市場の取引開始前の段階で30年平均の20ポイントを下回っていた。
シティグループの株式取引戦略責任者スチュアート・カイザー氏は、VIX低下について、株式市場の暴落に備える保険コストの低下につながっていると指摘。リサーチノートで、対中関税率の引き下げは「戦術的リスクにおける大きな転換点だ」とし、「テールリスクの織り込みが後退し、システマチックな大口買いが市場に影響を及ぼし、経済指標は当面、見過ごされるだろう」と述べた。

スイス・ジュネーブでの協議で合意された内容によると、米国は中国に対する関税率を145%から30%に引き下げる一方、中国は米国産品に対する関税率を125%から10%に引き下げる。
この引き下げ規模は一部の市場関係者にとっては予想外だった。
野村ホールディングスの先進国市場担当チーフエコノミスト、デービッド・セイフ氏は、米国による対中関税率の引き下げについて、予想を「はるかに上回る引き下げ」だと評価。ただし、8月10日の期限までに交渉が合意に至らなければ、「市場はすぐに逆方向に振れる可能性がある」とも警告した。
同氏は、関税率の引き下げが従来の予想よりも成長を促進し、インフレを抑制する効果をもたらすと見込んだ。
原題:VIX Drops to 19 as Citi Says Trade Deal ‘Game Changer’ for Risk(抜粋)