デスゲームものは、今では当たり前になった。登場人物たちが自分の命を賭け金に、文字通り生き残りをかけて争い合う様は、幾度となくフィクションとして描かれてきた。
『イカゲーム』に『今際の国のアリス』、古くは『バトル・ロワイアル』などが有名だ。
そして、その『バトル・ロワイアル』の原作を執筆する際に、著者の高見広春が影響を受けたとされている、いわばデスゲームの元祖となる作品の一つがある。それが、ホラーの帝王とも呼ばれるスティーヴン・キングによる『死のロングウォーク』(The Long Walk)だ。
過去、幾度も映像化が企画されては頓挫してきたこの作品がいよいよ2025年に映画として公開されることが決まり、その予告編が披露された。
舞台は近未来のアメリカ。毎年恒例の「ロングウォーク」という競技が開催される。100人の少年が、ただ歩き続ける。ゴールは決められていない。この競技は、最後の1人になるまで続くからだ。脱落者には死が、優勝者には望むものすべてが与えられる。
現代ホラーの巨匠であるスティーヴン・キング
スティーヴン・キング/画像はWikipediaより
アメリカ人作家であるスティーヴン・キングは、1974年の長編デビュー作『キャリー』が大ヒットし、一躍人気作家の仲間入りを果たす。
多作で知られ、これまでに発表した作品は長編・短編集を含め60作以上、総発行部数は全世界で4億部を超えると言われている。
スティーヴン・キングの作家としてのすごみは作品の数でも部数でもなく、その作風の幅広さにある。
青春小説の金字塔『スタンド・バイ・ミー』、『グリーンマイル』や『ショーシャンクの空に』といった人間ドラマ、一方で『シャイニング』や『IT』、『ミスト』などのホラー作品を生み出してきた。
ホラーにしてもSFホラーやダークファンタジーなど、ジャンルで一括りにできない多様な作品があり、残酷さと慈愛が同居する作品もあれば、人間への極めて容赦のない哲学が覗く作品もある。
『死のロングウォーク』は、そんなスティーヴン・キングが作家としてデビューする以前、大学生だった頃に初めて執筆した小説だ。ベトナム戦争真っ只中の、1967年のことだった。
小説家としてデビューしたスティーヴン・キングは、この処女作を世に出そうと考え、後にその正体が露見するまでは「リチャード・バックマン」という名義で出版された。
幾度も頓挫した『死のロングウォーク』映像化
『The Long Walk』/画像はAmazonより
作品の多くが映像化されているスティーヴン・キング、この『死のロングウォーク』も幾度となく映像化の計画が持ち上がった。しかし、その度に頓挫してきた。
ハリウッドでは企画が頓挫することはよくある話だが、報道されているだけで3度、『死のロングウォーク』の映像化は企画されては中止に終わった。中には、『ショーシャンクの空に』をはじめキング原作作品をいくつも手掛けてきたフランク・ダラボンもいた。
スティーヴン・キング本人は、その理由について「映像化された他の作品と比べて、この作品の映像化の足を引っ張ったのは、容赦のないクオリティだったのかもしれない」と述べている。「あまりに辛い作品だ」と出資者に判断されたのではないかと(外部リンク)。
しかしついに、映画やテレビ事業を行うライオンズゲートが、同じく近未来のアメリカでのデスゲームを描いた「ハンガー・ゲーム」シリーズの映像化を手がけたフランシス・ローレンスを監督に据えて動き出した。
公開された予告編には、少年たちが交流し、支え合いながらも、順番に脱落し殺されていく、むごい状況が描かれている。
今では当たり前となったデスゲーム作品の源流の一つが、現代に映像という形で蘇る。
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