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「自分の悩みがちっぽけに思える」火星軌道から撮影した”地球と月”の姿


中央にポツンと浮かぶ白い光源、それを横切る薄ぼんやりとした淡い点。

一見すると、大した光景には見えないでしょう。

しかし、ここに写されているのは地球から3億キロも離れた火星から見た地球と月の姿なのです。

この画像は、2023年6月2日に火星軌道上のマーズ・エクスプレス20周年を記念して撮影されたものです。

撮影は半月かけて行われており、一連の画像をつなぎ合わせたアニメーションでは、月の公転軌道が視覚的に確認できます。

このちっぽけな淡い点の中に私たちがいると思うと、さまざまな悩みがちっぽけに思えてくるかもしれません。

目次

  • 火星軌道から地球と月はどう見える?
  • 史上最も遠くから見た「地球の姿」とは?

火星軌道から地球と月はどう見える?

画像は、ESAの火星探査機マーズ・エクスプレス(Mars Express)」により撮影されました。

マーズ・エクスプレスは2003年6月2日に打ち上げられ、同年12月に火星の軌道上に入り、そこから火星の大気や地下構造の調査を続けています。

今回の撮影はマーズ・エクスプレスが地球を出発してから20周年を記念したもので、地球から約3億キロ離れた場所から行われました。

画像は2023年5月15日、21日、27日、6月2日に撮影され、同機に搭載されている高解像度カメラを使用しています。

このカメラは普段、火星の2つの衛星であるフォボスとダイモスを撮影するために用いられているものです。

そして一連の画像をつなぎ合わせて、地球とその周りを公転する月の様子をアニメーションに仕上げました。

中央の白い光源が「太陽」で、周囲を公転する淡い点が「地球」
中央の白い光源が「太陽」で、周囲を公転する淡い点が「地球」 / Credit: ESA – Earth and Moon seen by Mars Express(2023)

この画像中央輝く地球で、その周囲移動する小さなです。撮影期間中、地球周囲半周する様子おり、公転運動視覚確認できます。

地球軌道の外側から、その様子を実際に眺めるというのは非常に珍しいでしょう。

本プロジェクトに参加した仏ソルボンヌ大学(Sorbonne University)の天文学者ホルヘ・エルナンデス・ベルナル(Jorge Hernández Bernal)氏は「このスナップショットに写る地球は、100メートル離れた距離から見たアリぐらいの大きさしかありませんが、私たちは皆その中にいるのです」と話しています。

実はマーズ・エクスプレスは出発直後の2003年7月3日にも、地球から約800万キロの位置から振り返って「地球と月」の姿を撮影していました。

それがこちらです。

「さよなら地球」と題された一枚。右側に月の姿も見える
「さよなら地球」と題された一枚。右側に月の姿も見える / Credit: ESA – Farewell Earth – 20 years ago(2023)

これを見ると、マーズ・エクスプレスがいかに遠くまでたどり着いたのかが分かるでしょう。

そしてESAの研究チームは今回の撮影について「ある一枚の写真を想起させる」と話します。

それが1990年に撮影された「ペイル・ブルー・ドット(Pale Blue Dot)」と題されたものです。

史上最も遠くから見た「地球の姿」とは?

ペイル・ブルー・ドット(Pale Blue Dot)」は、1990年にアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人宇宙探査機「ボイジャー1号」によって撮影された地球の画像です。

ボイジャー1号は1977年に打ち上げられ、1990年に約60億キロの距離を越えて、太陽系から離れようとする際に地球を撮影しました。

それがこちらです。

「ペイル・ブルー・ドット」(右の茶色い帯の真ん中やや下当たりに映る白い点が地球)
「ペイル・ブルー・ドット」(右の茶色い帯の真ん中やや下当たりに映る白い点が地球) / Credit: ja.wikipedia

60億キロも離れた彼方から見ると、地球はもはや砂つぶのような小さな点にしか見えません。

この一枚はアメリカの天文学者で作家でもあったカール・セーガン(1934〜1996)の依頼を受けてNASAが撮影したもので、現状、最も遠く離れた場所から撮影された地球の写真となっています。

カール・セーガンは、この”淡く青い点(pale blue dot)”を見て、次のようなメッセージを残しています。

「この小さな点をよく見てください。それはここです、故郷であり、私たち自身なのです。

その上に、あなたの愛する人、あなたが知っている人、過去に生きて、すでに亡くなった人たちの全てが乗っています。

私たちの喜びも苦しみも、何千もの自信に満ちた宗教やイデオロギーも、

あらゆる狩猟者や採集者、英雄と臆病者、文明の創造者と破壊者、王や農民、若い恋人たち、父や母、希望に満ちた子供たち、

発明家や探検家、心ある教師に腐敗した政治家、スーパースターや最高指導者、聖人や罪人、

人類の歴史における全ての人々が、ここでかつて生き、今も生きているのです。

太陽の光の中に浮遊するちっぽけな塵の上に」

カール・セーガン
カール・セーガン / Credit: ja.wikipedia

「そして私たちの自惚れや思い込み、宇宙の中で特別な存在なのだという妄想は、この淡く青い小さな点が教えてくれます。

地球は大きな宇宙の闇に包まれた孤独な一点にしか過ぎないのだと。

この広大な宇宙の中では、私たちは無名の存在なのだと。

(中略)

好むと好まざるとに関わらず、私たちが生きていく場所は今のところ、地球以外にはないのです。

天文学は、人間の思い上がりを知らせて、私たちを謙虚にする学問だと言われてきました。

この一枚の写真ほど、それを実感させるものはないでしょう。

私たちはもっと互いに親切になり、この小さな青い点を大切に守っていかなければなりません。

私たちの知るたった一つの故郷であるこの地球を」

宇宙開発の発展によって、私たちは地球軌道上から映された鮮やな地球の姿をいくつも眺めてきました。

この画像は、遠く離れた軌道から小さな点としてしか地球を捉えていませんが、その小さな点は驚くほど多くのことを私たちに考えさせてくれます。

全ての画像を見る

参考文献

Earth and Moon seen by Mars Express
https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2023/07/Earth_and_Moon_seen_by_Mars_Express

A Pale Blue Dot
https://www.planetary.org/worlds/pale-blue-dot

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

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