世界ビデオゲームの殿堂は日本時間5月9日、2025年の殿堂入り作品を発表した。今回、殿堂入りした作品は『たまごっち』『ゴールデンアイ 007』『Quake』『Defender』の4つ。過去のノミネート作品の多くがゲームソフトである中で、携帯型の電子ゲームである『たまごっち』が異例の殿堂入りを果たしたかたちだ。
「世界ビデオゲームの殿堂(World Video Game Hall of Fame)」は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ロチェスターに存在する。「遊び」という行動の歴史や文化を体系的に保存・展示している「ストロング国立遊び博物館(The Strong National Museum of Play)」の内部に、2015年6月に開館した施設である。世界ビデオゲームの殿堂では、アーケード、コンソール機、PC、携帯ゲーム機、モバイル向けなど、あらゆる種類のビデオゲームが展示されている。

殿堂入りするタイトルは2015年から毎年、厳しい選考と投票を経て決定されている。ノミネートされるには、Icon status(象徴的な存在である)、Longevity(長く人気を保っている)、Geographical reach(広い地域に知られている)、Influence(影響力を持つ)という4つの条件をすべて満たす必要があり、候補作となるだけでも大変狭き門である。『たまごっち』をはじめとした殿堂入り作品や、惜しくも殿堂入りを逃した作品のどれもが、これらの条件を満たしていた(関連記事)。
『たまごっち』は、1996年より販売された携帯ゲーム機および、その中で遊べるゲームだ。全世界的な売上や多岐にわたるプラットフォームでの展開はもちろんのこと、発売当初の品薄状態といった社会現象や、子どもも大人も楽しんだ作品として世代間のギャップを埋めたことも紹介されている。また『Neopets』や『nintendogs』といった育成ゲームや、「ファービー」や「AIBO」のような電子ペットなど、後の「育成」というゲームジャンルの隆盛に影響した点などが解説されている。

『ゴールデンアイ 007』は全世界で800万本以上を売り上げたニンテンドー64の代表作として紹介されている。深いストーリー要素があったために、それまでPCが中心だったFPSというジャンルを家庭用ゲーム機に広げたほか、ステルス要素の強いゲームプレイの戦略性やマルチプレイヤーモードが、後のFPSというジャンルに強い影響を与えたと評された。開発を手がけたのは『スーパードンキーコング』などを手がけたイギリスの企業レア社。本作は今なお日本国内でも人気が高い作品だ(関連記事)。
『Quake』はそれまで主流だったP2P(ピアツーピア:サーバーを介さない直接の通信)だけでなく、専用サーバーへの接続をサポートしていたほか、リアルタイム3Dレンダリング技術が、現代のマルチプレイを提供しているゲームの基礎を形づくったとされた。また、広範なModサポートを提供し、本格的なModコミュニティを形成した初期のシューティングゲームであるとも紹介されている。また『Defender』は1981年のアーケードゲームであるため、日本国内では知る人の少ない作品かもしれない。同作については、特に「習得を容易に、極めるのは難しく」という考えが主流だったとされるアーケードゲーム市場で、「高難度」であったことが後のゲームデザインに影響を与え、高難度ゲームというひとつの市場を形成したと評されている。
過去に殿堂入りした作品は、どれもゲームの歴史に深く関わっている。そこに『たまごっち』がビデオゲームのひとつとして名を連ね、展示されることになるのは興味深い事例だ。ちなみに『たまごっち』については、初代『たまごっち』および『新種発見!!たまごっち』の“復刻版”ともいえる『Original Tamagotchi』などの各製品が展開中。またNintendo Switch/Switch 2向けには、おみせやさんお手伝いアクション『たまごっちのプチプチおみせっち おまちど~さま!』も6月26日にリリース予定だ。登場から約30年を経た現在においても、未だ『たまごっち』の勢いはとどまることを知らないようだ。
なお世界ビデオゲームの殿堂では、来年も殿堂入りの選考をおこなう見込みである。ノミネート作品は誰でも推薦することができる。過去の殿堂入り作品の中に、「殿堂入りすべき」と感じた作品がまだ名を連ねていなかったら、直接推薦をしてみるのも良いだろう。
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