

5月17日は「高血圧の日」だ。日本高血圧学会(JSH)と日本高血圧協会が共同で推進している疾患啓発活動で、各地でライトアップなどイベントが行われる。
JSHによる高血圧の基準値は病院での測定値(診察室血圧)140/90mmHg以上、かつ家庭血圧135/85mmHg以上(以下、単位は省略)。家庭で血圧が測れない場合は、病院での測定値で判断される。
高血圧と診断された後の「下げ目標値」は年齢で変動する。75歳未満は診察室血圧130/80未満、家庭血圧125/75未満と厳格な降圧が求められるが、75歳以上では同140/90未満、135/85未満と緩め。高齢者は腎機能や血管の状態などによって、降圧治療がマイナスに影響することもあるからだ。ただし、糖尿病患者は年齢に関係なく厳格な降圧が求められる。
また、暦年齢より生物学的年齢――疾病や身体機能を反映した年齢が若い人は、健康寿命を延ばすためにもしっかり降圧すべきだろう。
若いからと油断してもいけない。東北医科薬科大学の研究グループは、複数の疫学研究を統合した「EPOCHJAPAN研究」の7万0570人(平均年齢59.1歳、女性57.1%、全体の8割が未治療)をおよそ10年間追跡したデータを解析し、血圧と心血管疾患死との関連を調べている。
その結果、心血管疾患死は血圧が高くなるとともに、段階的に上昇。この関連は65~89歳の高齢者グループより40~64歳の若年者かつ未治療群で顕著だったのだ。さらに高血圧としてはまだ軽症の部類(I度高血圧)に当たる診察室血圧140~159/90~99、家庭血圧135~144/85~89の集団で最も影響が大きいことが示された。
すでに高血圧治療を受けている人たちを含めた場合でも、高血圧は若年者の心血管疾患死リスクを2倍に押し上げる可能性があり、基準値を一歩超えただけで、死亡や要介護リスクが上がってしまう。
高血圧の治療は基準値より血圧を下げればよいというのではなく、低値を維持し合併症の発症と進行を予防することが目的。余命が長い若年者ほど、高血圧と診断される以前から減塩、減食、減酒などで対策しておきたい。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
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