2025年最新 東南アジアのスタートアップ事情総覧岡本拓真@スタートアップ

前書き：東南アジアのスタートアップ事情をまとめるにあたって

みなさん、こんにちは！
最近、私の大変お世話になっているヘルスケア分野でチャレンジされ続けている欧州の起業家の友人が、東南アジアをフィールドにコスメプロダクトの開発や東南アジアでのマーケティングをされております。今回は東南アジアのビジネストレンドに強く関心を持ち、特にスタートアップエコシステムの動向を追いかけてみました。シンガポールのユニコーン企業の台頭や、インドネシアの巨大デジタル経済、ベトナムの才能あるIT人材の活躍など、日々刻々と変化する状況に魅了されています。

この記事は、そんな東南アジアのスタートアップシーンを全体的に理解するため最新の情報を集め、整理したものです。作成にあたっては、AIツールを積極的に活用しながら、膨大な情報から価値のあるインサイトを抽出することに挑戦しました。生成AIの力を借りることで、私一人では追いきれない多角的な視点や最新データを効率良く収集し、より包括的な内容にまとめることができたと思います。

なぜこのテーマに注目したのかというと、自身がこれからVCとして、または起業家としてアクティブになるとしてもグローバルマーケットのなかで日本企業と東南アジアの連携がますます重要になると感じており、基本的なエコシステムの全体像を把握することが第一歩だと考えたからです。「冬の時代」と呼ばれる現在の投資環境でも、確かな成長の種が蒔かれており、それを見逃さないためにも、地域全体を俯瞰する視点が必要だと感じています。

私自身、この記事を作成する過程で多くの発見がありました。各国の特性の違い、成功企業の戦略、最新のテクノロジートレンドなど、知れば知るほど興味は尽きません。にするにあたり内容は一定以上の要約となってしまいますが、この記事が、東南アジアのスタートアップシーンに興味を持つ皆さんにとって、何かしらの気づきやインスピレーションになれば嬉しいです。（ガンガン,、book LMなど活用していきましょう。）

それでは、2025年最新の東南アジアスタートアップ事情、ぜひご一読ください！

Appendix:

2025年最新 東南アジアのスタートアップ事情総覧

東南アジア地域のスタートアップエコシステムは、過去数年で目覚ましい発展を遂げる一方、最近は「冬の時代」とも呼ばれる投資環境の変化に直面しているそうです。本記事では、2025年時点での東南アジアスタートアップの最新状況、各国の特徴、注目企業、投資動向、そして日本企業との協業可能性について詳しく整理してみます。

1. 東南アジアスタートアップの現状概観

地域全体の特性

東南アジアは、基礎的な社会インフラが十分に整備されていない一方で、ネットやスマートフォンの普及率が先進国並みに高いという独特の環境にあります。2023年時点では、東南アジアのインターネット普及率は約75％に達し、一部の国ではスマートフォン利用率が90％を超えています。この「モバイルファースト」の環境が、多くの革新的なデジタルサービスを生み出す土壌となっています。

この経済圏では、基礎的な社会インフラやサービスの欠如を補う形で、フィンテック、ヘルステック、物流・交通インフラなどのスタートアップが台頭し（いわゆるリープフロッグ現象）、生活者のニーズを補完する役割を果たしてきました。しかし、国ごとに言語、宗教、文化、消費者行動が大きく異なるため、ローカライズ戦略が不可欠となっています。

市場規模と成長率

東南アジアのスタートアップ市場は、米国や中国などの巨大市場と比較するとまだ小さいものの、着実に成長を続けています。例えば、デジタル決済市場だけを見ても、2023年から2029年までの年平均成長率（CAGR）は22%で、75億ドルの規模に達すると予測されています。

しかし、2023年以降、米国のテック株下落の影響が時差を経て波及し、東南アジアの資金調達環境も厳しさを増しています。2024年の東南アジア地域全体の投資案件件数は633件、総額は45.6億ドルで、前年比41.7％減少しました。

2. 国別のエコシステム特性

東南アジア各国のスタートアップエコシステムは、それぞれが独自の特徴と強みを持っています。以下、主要国のエコシステムを詳しく見ていきましょう。

シンガポール

シンガポールは、東南アジアのスタートアップハブとして突出した存在感を示しています。資本、技術、人材が集中し、特にスタートアップの資金調達では、東南アジア全体の60〜70%がシンガポールに集中しています。また、ユニコーン企業数でも、東南アジア全体の過半数をシンガポール企業が占めています。

シンガポールの成功要因:

• 政府主導の「スマートネーション構想」による積極的支援

• 優れた法的・金融インフラ

• グローバル人材の集積

• 先進的な研究開発環境

シンガポール政府は「Startup SG」などの支援プログラムを通じて、積極的に国内外のスタートアップを誘致・育成しています。これらの取り組みにより、シンガポールのスタートアップエコシステムは2024年のグローバルランキングで2022年の18位から7位にまで上昇しています。

インドネシア

インドネシアは、2億7000万人を超える人口を背景に、東南アジア最大のスタートアップ市場となっています。2022年の東南アジアにおけるテック系企業へのVC投資額では、インドネシアが最も多くの投資額を集めました。

インドネシアのスタートアップ環境の特徴:

• 大規模な人口と急速に成長する中間層

• デジタル経済への移行が加速

• スマートフォン普及率の急上昇

• 地理的な課題（17,000以上の島々）が逆にデジタルサービスのニーズを生み出している

ただし、物流インフラの未整備や、伝統的流通構造、環境問題などの課題も抱えており、これらを解決するスタートアップにも投資が集まっています。

ベトナム

ベトナムは、豊富なIT人材と成長中の国内市場を背景に、急速にスタートアップエコシステムを発展させています。

ベトナムの強み:

• 質の高いエンジニア人材の豊富さとコスト競争力

• デジタル教育への政府の積極投資

• 比較的若い人口構成（平均年齢33歳）

• 日系企業を含む海外企業の進出増加

2024年のベトナム・スタートアップへの投資金額は前年比25％減の3億9,800万ドルでしたが、投資件数は前年の122件から3％減の118件と、件数ベースではほぼ横ばいを維持しています。特に、AI分野（前年比8倍の8,000万ドル）、農業分野（前年比9.6倍）、ビジネス自動化分野（前年比6.6倍）などが大きく成長しています。

タイ・マレーシア・フィリピン

これらの国々は、それぞれ固有の市場特性と産業基盤を持ちながら、スタートアップエコシステムを発展させています。

タイの特徴:

• 東南アジアにおけるフィンテック資金調達で5位にランク

• 商業銀行と中央銀行の積極参加によるデジタル金融システムの発展

• 国内観光産業との連携によるトラベルテック分野の成長

マレーシアの特徴:

• 多言語・多文化社会を生かしたグローバル展開のしやすさ

• 政府主導のMSCマレーシア（マルチメディア・スーパー・コリドー）計画

• イスラム金融技術の発展

フィリピンの特徴:

• 英語人材の豊富さを生かしたBPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）関連スタートアップ

• 海外送金関連のフィンテックサービスの発展

• ゲームやエンターテインメント分野での成長

3. 主要ユニコーン企業リスト

東南アジアのユニコーン企業（評価額10億ドル以上の非上場企業）は近年急増しています。特にシンガポールは28社のユニコーン企業を擁し、アジアで中国、インドに次ぐ第3位にランクインしています。以下、主要なユニコーン企業を国別に紹介します。

シンガポールのユニコーン企業

シンガポールのユニコーン企業28社の中から、特に注目すべき企業を紹介します:

1. Grab（配車・スーパーアプリ）

   • 創業: 2012年

   • 事業内容: 配車サービスから始まり、フードデリバリーや決済サービスを含むスーパーアプリ

   • 現状: 東南アジア全域で展開、アプリ利用者数は数億人規模

2. Sea Limited（Garenaの親会社）

   • 創業: 2006年

   • 事業内容: オンラインゲーム「Free Fire」の開発元Garenaと、ECサイト「Shopee」を運営

   • 現状: 2017年にNYSEに上場、東南アジア最大のテック企業の一つに

3. Lazada（Eコマース）

4. PropertyGuru（不動産テック）

   • 創業: 2006年

   • 事業内容: 不動産ポータルサイトを運営

   • 現状: 東南アジア5カ国で展開、月間3,000万人以上のユーザー

5. Carro（自動車マーケットプレイス）

インドネシアのユニコーン企業

インドネシアには以下のようなユニコーン企業が誕生しています:

1. GoToグループ（Gojek & Tokopediaの合併企業）

   • 創業: Gojek（2010年）とTokopedia（2009年）が2021年に合併

   • 事業内容: ライドシェア、フードデリバリー、Eコマース、電子決済など

   • 現状: 2022年に上場、インドネシア国内で圧倒的なシェアを誇る

2. Traveloka（トラベルテック）

3. J&T Express（物流）

4. eFishery（農業テック）

5. Ajaib（フィンテック）

その他の国のユニコーン企業

ベトナム、タイ、フィリピンなどでも、ユニコーン企業が誕生しています:

1. VNG（ベトナム）

2. VNPay（ベトナム）

3. Flash Express（タイ）

4. Voyager Innovations（フィリピン）

4. 最新の投資動向と課題

投資金額の減少トレンド

東南アジアのスタートアップ投資は、2021年をピークに減少傾向にあります。2024年の地域全体の案件件数は633件、総額は45.6億ドルで、前年比41.7％減少しています。この背景には、以下の要因があります:

1. グローバルなテック株の下落による投資マインドの冷え込み

2. インフレ対策としての各国中央銀行の金利引き上げ

3. 世界的な政治・経済の不確実性の高まり

4. 投資家の「成長志向」から「収益性重視」へのシフト

CB Insightsによると、2021年には東南アジアで10社以上のユニコーン企業が誕生しましたが、2023年には新規ユニコーン企業の誕生が1社以下にまで落ち込みました。

資金調達ステージの変化

投資家の姿勢の変化に伴い、資金調達のステージ別の特徴も変化しています:

• シード/アーリーステージ: ベトナムの事例では、2024年は50万ドル以下の少額投資が前年比7割増の57件となり、アーリーステージのスタートアップへの投資活動が回復の兆しを見せています。

• ミドルステージ: 資金調達の難易度が上昇し、以前ほど容易には資金を調達できなくなっています。

• レイトステージ: メガラウンドの減少が顕著で、大型の資金調達が減少しています。

国別の投資動向

国別の投資動向にも変化が見られます:

• シンガポール: 引き続き地域全体の投資額の60〜70%を占め、優位性を維持。特にディープテック、AIなどの先端技術分野での投資が目立ちます。

• インドネシア: 2022年には最も多くの投資額を集めましたが、近年は伸び悩んでいます。ただし、大規模な国内市場を背景に、中長期的には成長が期待されています。

• ベトナム: 投資家の関心が高まっており、AI、農業、ビジネス自動化分野で大きな成長を見せています。2024年のベトナムへの投資金額は前年比25％減の3億9,800万ドルでしたが、投資件数は前年の122件から3％減の118件と、件数ベースではほぼ横ばいを維持しています。

• タイ・フィリピン: 近年、投資家の関心が高まっており、特にフィンテック、Eコマース、サービスプラットフォーム分野が成長しています。

5. 成長が期待される分野

東南アジアでは、以下の分野で特に成長が期待されています:

フィンテック

フィンテック関連（ペイメント、送金、バンキングサービス、クレジット分析など）は引き続き投資のメガトレンドです。東南アジアでは銀行口座を持たない「アンバンクト」人口が多く、モバイル決済や代替的な金融サービスへのニーズが高いことが成長要因です。

特にインドネシアでは、中小企業向け金融サービスが急成長しています。東南アジア最大の経済大国であるインドネシアでは、急速に成長するデジタル経済の中で、フィンテック分野のスタートアップが多数誕生しています。

B2B向けSaaS

これまでB2C向けスタートアップが目立っていた東南アジアですが、近年はB2B向けのSaaS市場が新たに立ち上がっています。2025年の東南アジアSaaS市場は33.9億米ドルに達すると推定され、2029年までに年平均成長率（CAGR）22%で拡大し、75億ドル規模に達すると見込まれています。

特に、中小企業向けの会計、財務、HRテック分野では投資が継続しており、クラウドベースのサービスが普及しつつあります。

AI技術

AIスタートアップ市場も急成長しています。例えば、ベトナムの人工知能（AI）スタートアップ市場の総投資額は、2023年の1,000万ドルから2024年には8倍の8,000万ドルに拡大しました。

AI技術は、金融、ヘルスケア、電子商取引（EC）など様々な分野で活用されており、特に:

• 画像認識技術を活用した小売分析

• 自然言語処理による多言語対応カスタマーサポート

• 予測分析を活用した与信評価システム などが注目されています。

持続可能なエネルギーと農業テック

環境問題への関心の高まりから、持続可能なエネルギー分野や農業テックへの投資も増加しています。

• 再生可能エネルギー: 太陽光発電のマイクログリッド、P2P電力取引プラットフォームなど

• 農業テック: eFisheryのようなIoT技術を活用した養殖業支援、精密農業、サプライチェーン最適化など

• サーキュラーエコノミー: 廃棄物削減、リサイクル促進のためのプラットフォームなど

Proptech（不動産テクノロジー）

不動産テクノロジー（Proptech）分野も東南アジアで成長を続けています。特に、都市開発が急速に進行する地域では、不動産の取引・管理・開発を効率化するテクノロジーへの需要が高まっています:

• 仲介手数料削減のためのP2Pプラットフォーム

• スマートビルディングソリューション

• データ駆動型の不動産評価サービス

• オンライン契約・決済システム

6. 日本企業との協業事例

東南アジア市場は、経済成長とデジタル化の進展により、日本のスタートアップや大企業にとっても有望な事業展開先として注目されています。以下、日本企業と東南アジアスタートアップとの協業事例を紹介します。

NTTグループの「NTT Startup Challenge」

NTTグループは、東南アジアのスタートアップとの協業による新規事業の創出を目的に「NTT Startup Challenge」プログラムを展開しています。

• 2024年から開始され、2025年は参画企業が従来の8社から13社に拡大

• 東南アジアを中心に700社以上のスタートアップが応募

• 成功事例として、ProfilePrintがNTTグループと戦略的パートナーシップを締結し、日本市場を含めたグローバル展開を実現

2025年のプログラムでは、東南アジアに加えて韓国、台湾、香港のスタートアップも対象に含め、より幅広い地域でのビジネスマッチングを目指しています。

経済産業省の支援プログラム

経済産業省は「日本のスタートアップによるASEAN企業との協業を通じた海外展開促進事業」を実施し、日本のスタートアップのASEAN進出を後押ししています。このプログラムでは:

• 個別メンタリングを通じた戦略策定支援

• ASEAN現地でのビジネスマッチング機会の提供

• 海外販路開拓や協業を促進するための資金支援

2023年度には、複数の日本のスタートアップがこのプログラムを通じて東南アジア市場への進出を果たしています。

業種別の協業事例

日本企業と東南アジアスタートアップの協業は、様々な業種で見られます:

• 製造業: 自動化技術やIoTソリューションの導入

• 小売: Eコマースプラットフォームとの連携、デジタル決済の導入

• 金融: フィンテックスタートアップとの提携による新サービス開発

• モビリティ: ライドシェア、配車サービスとの連携

• ヘルスケア: オンライン診療、医療データ分析など

7. 今後の展望

東南アジアのスタートアップエコシステムは、現在の「冬の時代」を経て、より持続可能な形で成長していくことが期待されています。

短期的な見通し

2025年にかけては、以下のような傾向が予想されます:

1. 資金効率の高いスタートアップへの選別的投資の継続

2. 収益性重視の経営モデルへの転換

3. M&Aや事業統合の活発化

4. 政府支援プログラムの拡充による成長支援

東南アジア地域内でも、各国の市場成熟度の差が顕在化し、シンガポール、インドネシア、ベトナムなど一部の国でスタートアップエコシステムの発展が加速する可能性があります。

中長期的な成長要因

中長期的には、以下の要因が東南アジアスタートアップの成長を後押しすると予想されます:

1. 若年層主体の人口構成と中間層の拡大

2. デジタルリテラシーの向上とインターネット普及率の上昇

3. 各国政府による積極的なデジタル経済政策

4. 域内の経済統合の進展（ASEAN経済共同体など）

5. グローバル投資家の東南アジア市場への関心の維持・拡大

特に、AIやブロックチェーンなどの先端技術を活用したサービスの発展と、伝統的な産業（農業、製造業、小売など）のデジタルトランスフォーメーションが進むことで、新たな成長機会が生まれると期待されています。

日本企業の機会

日本企業にとって、東南アジアは依然として魅力的な市場であり、特に以下の点で協業や投資の機会があると考えられます:

1. 現地の課題解決に日本の技術やノウハウを活用

2. 日本のハードウェア技術と現地のソフトウェア開発能力の組み合わせ

3. 日本市場で成功したビジネスモデルの現地適応

4. 現地スタートアップへの投資を通じた市場理解の深化

東南アジア市場は多様性に富み、国ごとに異なる市場特性を持つため、進出に際しては現地パートナーとの協業や、各国市場に適したカスタマイズ戦略が重要となります。

東南アジアのスタートアップエコシステムは、グローバルな経済環境の変化の中でより成熟したフェーズに移行しつつあります。短期的には投資環境の厳しさが続くものの、基盤となる市場の成長力と政府支援の拡充により、中長期的には持続的な発展が期待されます。日本企業にとっても、東南アジア市場への関与を深め、現地のイノベーションエコシステムとの連携を強化することは、今後のグローバル戦略において重要なファクタとなるかもしれません。

Appendix②: