土曜日, 5月 17, 2025
ホームニューステックニュース20年前に故障したと思われていたボイジャー1号のスラスターを250億km離れた地球から遠隔で復活させることにNASAが成功 - GIGAZINE

20年前に故障したと思われていたボイジャー1号のスラスターを250億km離れた地球から遠隔で復活させることにNASAが成功 – GIGAZINE



20年前に故障したと思われていたボイジャー1号のスラスターを250億km離れた地球から遠隔で復活させることにNASAが成功 - GIGAZINE

by Kevin Gill

ボイジャー1号は、太陽系の外惑星および太陽系外の探査を目的としたボイジャー計画の一環として1977年に打ち上げられ、記事作成時点でも地球から約250億km離れた場所を飛行しています。そんなボイジャー1号の、2004年に壊れたと思われていたスラスター(推進システム)を復活させることに成功したとNASAが報告しました。

NASA’s Voyager 1 Revives Backup Thrusters Before Command Pause – NASA Science
https://science.nasa.gov/blogs/voyager/2025/05/14/nasas-voyager-1-revives-backup-thrusters-before-command-pause/


NASA resurrects Voyager 1 interstellar spacecraft’s thrusters after 20 years: ‘These thrusters were considered dead’ | Space
https://www.space.com/space-exploration/missions/nasa-resurrects-voyager-1-interstellar-spacecrafts-thrusters-after-20-years-these-thrusters-were-considered-dead

ボイジャー1号は姉妹機であるボイジャー2号の16日後に打ち上げられ、1979年に木星、1980年には土星およびその環の観測を行って主な任務を達成しました。その後も、時速約5万6000kmものスピードで深宇宙に向けて飛行を続け、太陽系についての貴重な科学データを地球に送信しています。

しかし、いずれのボイジャー号も老朽化と地球からの距離が問題となっており、さまざま問題に見舞われています。2024年にはボイジャー1号のヒーターをオンにするコマンドを送信した結果、障害保護システムが意図せず作動してしまい、通信が一時的に途絶する事態となりました。

240億km以上離れたボイジャー1号と通信が途絶えるも40年使っていなかったサブ通信システムにより復帰 – GIGAZINE


そんな2つのボイジャー号にとって重要な機器のひとつが、探査機の姿勢を制御するスラスターです。地球から遠く離れた宇宙空間を飛んでいるボイジャー号は、地球との通信を維持するためにアンテナを地球に向け続けなくてはなりません。スラスターは探査機本体をゆっくり回転させて、アンテナの向きを制御するために用いられています。

ところが2004年、ボイジャー1号の2つの内部ヒーターが電力を失って機能を停止し、その影響で主要なロールスラスターが機能しなくなってしまいました。当時のNASAのエンジニアらは、壊れたヒーターは修理できない可能性が高いと判断し、バックアップ用のロールスラスターに切り替えることを選択しました。

NASAのジェット推進研究所でボイジャー計画のマネージャーを務めるカリーム・バダルディン氏は、「当時のチームは、主要なロールスラスターが機能しないことを受け入れても問題ありませんでした。なぜなら、完璧なバックアップがあったからです。率直に言って彼らは、ボイジャー探査機があと20年も続くとは思っていなかったでしょう」と述べています。

しかし、ボイジャー1号は主要なロールスラスターが故障してから、20年以上も稼働し続けてきました。そんな中、バックアップ用のロールスラスターでは、チューブ内に蓄積する燃料の残留物が問題になったとのこと。チューブ内に蓄積した残留物はスラスターの動作に悪影響を及ぼし、早ければ2025年の秋には動作が停止するリスクがあるそうです。

by Chris Devers

そこでNASAのエンジニアリングチームは、2004年に発生したスラスターの故障を再調査することにしました。その結果、ヒーターの電源を制御する回路の予期しない乱れにより、スイッチが間違った位置に切り替わったことが故障の原因である可能性が浮上。スイッチを元の位置に戻すことができれば、ヒーターが再び動作するようになり、バックアップ用のロールスラスターが詰まった際に、再び主要なロールスラスターに切り替えられるかもしれないと判明しました。

ボイジャー1号のスラスターを修理するには、休止中のスラスターをオンにした上でヒーターを修理し、再起動しなくてはなりません。しかし、スラスターをオンにした際にスタートラッカー(姿勢センサー)が正常な位置からズレすぎていると、安全対策としてスラスターが自動噴射する可能性があります。そのため、NASAのチームはボイジャー1号のスタートラッカーをできるだけ正確に調整してから、スラスターをオンにする必要があったとのこと。

ボイジャー1号と通信するオーストラリアのアンテナ・DSS-43は、2025年5月~2月にかけてアップグレードのためオフラインとなり、8月と12月の短い期間にだけ一時的にオンラインになります。NASAのチームは、アンテナがオフラインになる前に修理を行い、使用中のスラスターが詰まっている可能性がある8月には、休眠していたスラスターが使える状態にしたかったと説明しています。

そして3月20日、NASAのチームは地球から送信した信号がボイジャー1号に届き、コマンドを実行する様子を地球から見守りました。ボイジャー1号からの無線信号が地球に届くには23時間以上かかるため、NASAのチームが様子を見守っている時点ですべての作業は完了しており、「もしかしたら今頃ボイジャー1号は危機的状況になっているかもしれない」という不安を抱えていたとのこと。結局、コマンドの実行から20分以内にヒーターの温度が劇的に上昇し始め、NASAのチームはボイジャー1号のスラスター修復ミッションが成功したことを知りました。

ジェット推進研究所のミッション推進責任者であるトッド・ハーバー氏は、「これはとても輝かしい瞬間でした。その日のチームの士気は非常に高かったです」「このスラスターは死んだと思われており、それは正当な結論でした。ただ、エンジニアの1人がもしかしたら他にも原因があるかもしれず、それは修復可能かもしれないと洞察したのです。これはボイジャー1号にとって、またとない奇跡的な救いとなりました」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする



続きを見る


🧠 編集部の感想:
NASAがボイジャー1号のスラスターを20年ぶりに復活させたことは、技術の進歩と探査機の耐久性を示す素晴らしいニュースです。この奇跡のような修復は、科学者たちの粘り強さと創意工夫の賜物であり、人類の宇宙探査への興味を再igniteさせるでしょう。未来のミッションでも、このような挑戦が続くことを期待しています。

Views: 3

RELATED ARTICLES

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

- Advertisment -

インモビ転職