

目の前の死体は何を伝えたいのか――。元監察医の上野正彦氏は「轢き逃げされたとか絞殺されたとか、突然大変なことを言い出す死体もある……」と語る。現役時代に遭遇した切なく記憶から消えることのない事件・事故の数々。窒息死した女性の遺体が教えてくれた真実とは……。本記事では、上野正彦氏の最新刊『死体はこう言った』(ポプラ社)から内容を一部抜粋・編集して紹介します。
「病死、他殺、自殺」3つの可能性
ある地主の20代前半の一人娘が、家の近くのコンビニエンスストアでアルバイトをしていた。
その店の40代の独身の店長が、ひとめで彼女を気にいった。
彼は彼女に付き合いたいと言って、交際を迫ったが、彼女にとって彼はアルバイト先の店長でしかなかったので、その申し出は断った。
その後、彼からのアプローチはなかったので彼女への思いは終わったかのように思われた。だが、あるときその女性が自宅の二階の部屋で亡くなっているのを母親が発見した。
検死により、窒息死と判断された。
窒息死というのは、三つのケースが考えられる。
一、気管支ぜんそくの発作で呼吸困難に陥ったことによる病死。
二、他人に首を絞められた絞殺や扼やく殺などの他殺。
三、自分で自分の首を紐などで絞めることによる自殺。
解剖を行った医者は、「窒息死ではあるが、私は現場を見ていないから病死なのか、他殺なのか、自殺なのか、どれかは分からない。捜査によって判断してほしい」と言ったという。
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