日本通信は、4月10日にドコモ回線を使ったデータ通信専用のサービス「ネットだけプラン」を開始しました。標準のデータ容量は、20GBで1200円と破格の安さです。その名称通り、この料金プランは音声通話やSMSに非対応。現時点ではSIMカードも提供されておらず、eSIMのみでサービスが提供されています。

 大手キャリアにもデータ通信専用プランは存在しますが、現状では、どちらかと言えば単体提供に主眼は置かれておらず、メイン回線の紐づける形の“2回線目”が提供されています。

 では、日本通信の「ネットだけプラン」は、こうしたサービスに対抗できるのでしょうか。MVNO各社とも比較しつつ、そのお得さを検証していきます。

タブレットやWi-Fiルーター用の回線として破格の料金を打ち出した日本通信の「ネットだけプラン」。1200円で20GBの利用が可能だ

20GBでわずか1200円、1GB以下なら119円に

 まずは、「ネットだけプラン」の特徴を見ていきます。標準的な価格は上記のとおり20GB、1200円。同じ日本通信が提供する「合理的みんなのプラン」が20GBで1390円なので、それよりも190円安く設定されています。

 合理的みんなのプランは、音声通話に加えて5分間のかけ放題か月70分までの無料通話を選択可能。その差分が、190円という金額設定になっていると見られます。

合理的みんなのプランは、データ容量が「ネットだけプラン」と同じ20GB。音声通話や通話定額がつくぶん、190円高い

 190円程度であれば音声通話付きの方がいいと思われるかもしれませんが、最初からタブレットやWi-Fiルーターで使おうと考えている人にとっては、これも無駄なお金。それを省き、データ通信のみで提供することで料金を割安にしたのが「ネットだけプラン」の特徴と言えます。

 元々、合理的みんなのプランが他社と比べても割安だったため、「ネットだけプラン」でもその競争力は健在です。

 ただし、SMSも利用できない点には注意が必要です。MVNOのデータSIMは大きく言って、「本当にデータ通信しかできないもの」と「SMSとデータ通信しかできないもの」の2つに分かれています。

 前者は設備ごと音声通話に対応していないのに対し、後者は音声通話という機能を塞いでいるだけという違いがあり、そのぶん、基本料も高くなっています。「ネットだけプラン」は、真の意味で“ネットだけ”というわけです。

 SMSができなくても、メッセージアプリなどを使えばコミュニケーションを取ることは可能ですが、アプリのユーザー認証などに使われているケースに対応できません。

 メインで使っているスマホのアカウントでログインするというのであればいいのですが、スマホとタブレットを使い分けたいときには、対応できない点は念頭に置いておいた方がいいでしょう。

SMSには非対応。メッセージサービスとしてなら代替手段はありそうだが、SMS認証を使うサービスでアカウントを作れない点には注意が必要だ

 タブレットやWi-Fiルーター、PCなどで使う回線だと、利用頻度が日によってまちまちになりがち。出先で仕事をする際には通信する一方で、そうでない日はオフィスや自宅のWi-Fiにつなぎっぱなしということもあります。実際、筆者もiPad Proにソフトバンク回線を入れていますが、毎日必ず使うかというとそうでもありません。スケジュール次第では、1週間ほどほぼWi-Fiしか使わないということすらあります。

 「ネットだけプラン」は、このような使い方にも対応しており、毎月のデータ使用量が1GB以下になった時には、料金が119円まで下がります。日本通信には、毎月のデータ容量が1GBの「合理的シンプル290プラン」がありますが、1GBで収まった場合の料金はこの半額。この金額であれば、もしもの時のために維持しておく回線にもなりそうです。

データ使用量が1GB以下に収まる月は、119円まで料金が下がる

 あまりに最低利用料を安くしすぎてしまうと、いわゆる“MNPの弾”としてストックされてしまう懸念もあります。“弾込め”したあと毎月寝かせておき、おトクな条件が出たときに転出するという使い方がそれです。

 一方で、「ネットだけプラン」は音声通話に対応していないため、MNPができません。1GB以下を大胆な料金設定にできた背景には、こうした事情も関係している可能性がありそうです。

最大60GBまで上限設定が可能、ただし料金は容量に正比例

 逆に、データ通信をたくさん使う人は、あらかじめ上限を設定しておくことで20GBを突破することもできます。PCでうっかりクラウドに大容量のデータをアップロードしてしまったという時などに便利。フォルダを移動するだけで自動的に同機が始まってしまうPCなどのデバイスでは、こうしたことが起こりがちです。

 設定できる上限は40GBと60GB。データ容量が20GB増えるごとに金額が1200円ずつ上がっていき、40GBで2400円、60GBで3600円になります。

 ボリュームディスカウントが効いていないため、最初から20GBを超えるようであれば同じ日本通信でも、音声通話付きの「合理的50GBプラン」を契約した方が割安にはなりますが、データ使用量の変動を吸収したいという人にはいい仕様です。

通常は20GBだが、マイページで上限を40GB、60GBに変更可能。40GBの料金は2400円、60GBは3600円になる

 なお、設定できるのはあくまで上限。そのため、この値を40GBなり60GBなりにしても、実際に使ったデータ使用量が20GB以下に収まっていれば、料金は1200円しかかかりません。

 一方で、合理的シンプル290プランのように、1GBごとに料金が変動していくわけではないため、20GBを少し超えただけの人にとってはお得感が薄れてしまいます。上限値は後から設定を変更できるため、とりあえず最低の20GBにしておいた方がいいでしょう。

合理的シンプル290などの料金プランは、1GBあたり220円でデータ容量を追加できる

 物理SIMの対応は今後になるため、eSIM非対応モデルでは利用できませんが、アップルのiPadシリーズが24年に発表された「iPad Pro(M4)」「iPad Air(M1)」を皮切りに、続々と「eSIMオンリー」になっているため、これらのデバイスでは利用が可能。直近に発売された「iPad(A16)」もeSIMオンリーです。

 おそらく、サービス開始にあたって優先順位を考える際に、まずはタブレットでシェアの高いiPadシリーズをターゲットに設定し、eSIM対応からのスタートにしたということでしょう。

 一方で、iPadと比べて価格の安いAndroidタブレットやWi-Fiルーターの中には物理SIMオンリーの端末もあるため、物理SIMへの早期対応も期待したいところです。

大手キャリアのシェア回線並みの料金、MVNOの中でも断トツの安さに

 1200円という価格設定は絶妙です。例えば、大手キャリアの場合、メイン回線に紐づける形でデータ通信用の2回線目を発行できますが、いずれも料金は1100円程度。ドコモは「データプラス」、auは「タブレットシェアプラン」、ソフトバンクは「データシェアプラン」として料金プランが提供されています。

 シェアと言っても、ほとんどの場合、メイン回線のデータ容量は無制限のため、シェア回線には30GBなり60GBなりの容量制限が設けられています。これらと比べると、日本通信の「ネットだけプラン」は、データ容量が少なく、やや料金も割高です。

 ただし、先に挙げたようにタブレットの特性を考えると、使わない月に119円まで下がるお得感があります。こうした使い方をするユーザーを、大手キャリアから奪ってくることはできそうです。

大手キャリアには単独のデータプランが少なく、メイン回線とのシェアが基本になる。ドコモの場合、ahamoは実際に30GBがシェアされるが、eximoはデータプラス回線用に30GBが設定されている

 他のMVNOと比較しても競争力が高く、ここまで割安なデータ通信専用回線はなかなかありません。

 例えば、同事業でトップシェアのIIJmioでは、ギガプラン内でデータSIMやSMS付きデータSIMを提供していますが、15GBで全社が1730円、後者が1780円と、日本通信の「ネットだけプラン」より500円強高く、データ容量も少なくなっています。IIJmioの場合、フルMVNO回線の「データeSIM」の方が価格を抑えているものの、それでも15GBが1430円です。

IIJmioは、フルMVNO回線のデータeSIMを安めに設定している。ただし、15GBで1430円と日本通信にやや及んでいない

 ただし、IIJmioの場合、データシェアに対応しており、1回線目が音声通話、2回線目がデータ通信専用というような使い分けが可能。これを利用すると、1回線目を35GBにしておき、スマホで20GB程度を使いつつ、2GBで契約したデータ通信専用の回線に15GBを回すことも可能になります。2GBであれば740円。データeSIMであれば440円で契約できます。

 2回線計37GBで2880円になるため、日本通信で1390円の合理的みんなのプランと1200円の「ネットだけプラン」を契約した時との差は縮まります(それでも日本通信の方が安いですが)。

IIJmioの場合、データシェア機能を使うと日本通信の料金に肉薄できる

 シェア2位のmineoも音声通話付きの「デュアルタイプ」とは別に、データ通信だけの「シングルタイプ」という料金プランを用意していますが、こちらも「マイピタ」の20GBコースが1925円です。

 各社とも、データ通信専用の料金プランは用意しているものの、料金的にはやや高く、さらに毎月の使用量に応じて料金が変動するといった工夫がありません。その意味でも、日本通信の「ネットだけプラン」は競争力が高いと言えそうです。

mineoも20GBのシングルコースは1925円。ただし、日本通信で40GBを超えると3600円かかるため、mineoの50GBプランの方が安くなる

 とは言え、1GBを超えると一気に20GBという金額設定は、やや極端なようにも思えます。特にタブレットやPCのような端末の場合、扱うデータのサイズが大きくなりがちで1GBはすぐに超えてしまうからです。1GBから20GBの間に、もう一段料金設定があった方がより使いやすかったような気もしています。

 多すぎるデータ量で高い料金を設定することや、高い超過料金を設定し、実態とのミスマッチで稼ぐ仕組みは海外で「breakage(ブレケッジ)」と呼ばれています。

 日本通信はミッションとして「このブレケッジの問題に取り組み、お客様にとって合理的な携帯料金プランの提供を目指しています」と掲げているだけに、今後、より合理的な料金設定になることを期待しています。

ブレケッジが発生しない合理的な料金を目指すことをミッションに掲げる日本通信。ただ、「ネットだけプラン」は、ややブレケッジがありそうにも見えた



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