世界第4位のコーヒー消費国というコーヒー大国・日本も、世界のコーヒートレンドにおいては非主流!? 日本で定番であるハンドドリップは実のところ少数派で、世界のコーヒーシーンの主流はカプセル式エスプレッソマシンだというのだから、ここに挑む意義は「大いにあり」。日本におけるコーヒー業界の雄・UCCが手掛けて10年を迎えた「ドリップポッド」シリーズとその背景に迫る。
日本の本格コーヒースタイルと言えばハンドドリップ。この作法や味に感激したアメリカ人バックパッカー、ジェフリー・フリーマン氏がのちに「ブルーボトルコーヒー」を立ち上げたというのは有名な話だが、つまりアメリカではハンドドリップが一般的でなく、抽出テクニックそのものがマジカルなショーとなる。
しかし実態としてコーヒー文化先進国の欧米で増加しているのは、カプセル式コーヒーマシンである。(以下、グラフ参照)
そんな実態を背景に提案を続けるのが、「カプセル式」で「ドリップ式」の「一杯抽出型コーヒーマシン」のUCC「ドリップポッド」シリーズだ。初代発売は2015年。マシンとしては直系第三世代にあたる『DP3』(税込価格1万3200円)と、最新モデル『DRIP POD YOUB』(税込価格2万4200円)を展開している。

『ドリップポッドユービ』
日本は出汁文化だからドリップコーヒー?
「ドリップコーヒーが主流でブラックコーヒーの飲用頻度が高いことから見ると、日本は“消費大国”でありながら“独特”なコーヒー文化をもっていると言えます。またこの嗜好の背景には日本ならではの出汁(だし)と共通する“素材の旨味を水に移して飲む”食文化が背景としてあるのかも知れません」。
そう語るのは「ドリップポッド」を手掛けるソロフレッシュコーヒーシステム株式会社のブランドマネージャー、小牧美沙さん(写真)だ。

ドリップポッドの直近の売り上げは堅調で2027年には100億円を狙うというが、「現在の普及の原動力は?」と尋ねると、
「まず大きいのはインバウンド増加に対応したホテル需要の伸びです。さらに2019年以降の新型ウイルスによるホテル人員の減少~アフターコロナの戻りインバウンドなどがあり、これに呼応する形で顧客満足度の向上を目的とした「ドリップポッド」の採用が続いています。エスプレッソマシンに比べて作動音が静かなこと、「ジャパニーズドリップコーヒーがおいしい!」と味への評価も多くいただいています」。
確かにエスプレッソマシンの作動音はなかなかの大きさだ。では一般ユーザーへのリーチはどうだろう?
「こちらも新型ウイルスに伴うリモートワークやおうち時間の増加などで、イエナカコーヒーの充実を求めるニーズにハマって伸びをみせています。昨年にはデザインコンシャスな新型マシン『DRIP POD YOUBI』を発売し、Z世代をはじめとするインテリア感度の高い方々に響いています」。



『DRIP POD YOUBI』は従来の「DP」シリーズと異なる直線基調デザインとアプリ連携が特長で、UCCが提供するコーヒーレシピを使うことで「同じカプセルなのに違う味わい!」を楽しむことができる。DPシリーズは初代開発者が女性ゆえか、あるいは優し気なフォルムからか、現在でも女性に選ばれるケースが多いという。
ゲイシャ、ブルマンが「一杯198円」という衝撃!
以上のように近年業績を伸ばしてきた「ドリップポッド」にとって今年は勝負の10年目。年間10のトピックを予定しているというが、とりわけ『リアルサウンドテック』読者のみなさんに、声を大にして言いたいのが、
「ゲイシャ(100%)、ブルマン(100%)が一杯198円で飲めるのは衝撃以外の何物でもない!」

『10th アニバーサリーカプセルセット』
高級豆「ブルーマウンテン」はおなじみだが、「ゲイシャ」もそれに並ぶ憧れのコーヒー豆だ。味や音楽など判断が感性にゆだねられるジャンルに関してあまりコスパ・コスパ言いたくないが、この値段、ハッキリ言ってウルトラ・コスパ! こんな値段で売っちゃダメと強く言いたい……が、ユーザーとしては嬉しすぎる価格設定。
いい意味で“積極的な非常識”。この「100%豆コンビ」は<10周年記念プロジェクト第一弾>として発売中の「10th アニバーサリーカプセルセット」(4752円/各12カプセル入り・税込み)だ。

いち早く試飲した筆者のコメントは、もうしわけないが、これ以外にない。
「うまい!」。
「ローズヒル ブルーマウンテンNo.1」は、口にした誰しもが「おいしいコーヒーってこれだよ!」と唸るだろう、ディス・イズ・王道。
対する個性派が「サンタクララ グァテマラ ゲイシャ」。「ゲイシャ」は、柑橘系のフレーバーが特徴的な品種として一躍名を馳せ、サードウェーブコーヒー加熱時にはとんでもない金額で取引された「黒い黄金」。ただしモカだ、コロンビアだという定番コーヒーのイメージを覆す個性派ゆえ、苦手とする人も一定数いた。今回の「サンタクララ グァテマラ ゲイシャ」は香りや酸味の豊かさはそのままに、柔らかさを与えることで飲みやすく仕上げられた、いわば「気負わずに楽しめるゲイシャ」と言える。

なぜ「DRIP POD」なのか?
取材中、興味深いエピソードを聞いた。それは「イエナカコーヒーは思いのほか、正しく淹れられていない」ということ。
一例にカップオンコーヒー。適正量に対して湯をなみなみと注いだり、設定時間より長く浸けて濃さを増すなどの利用実態があるようなのだ。
「コーヒードリップのラストワンマイル(カップへの抽出)はユーザーに委ねられています。もちろん好みや工夫は自由なので取説通りでなくてもいいのですが、やはりおいしい豆は正しく淹れて頂きたい。「ドリップポッド」開発の背景にはその“ドリップコーヒーのラストワンマイルまでサポートしたい”という想いが強くありました」。

日本の喫茶文化は緑茶からコーヒーへ……。自宅でもラテやカプチーノを作る、より薄く/濃くといった好みへのチューニングも積極的に行われている。しかし、特にこだわりのストレート、シングルオリジンと言われる豆については、ブラックで、その豆の育ったテロワール(土壌)まで感じ尽くしたいもの。その上で、意外性ある「コーヒー×和菓子」といったスイーツペアリングを追及するのもまた一興だ。


「なぜドリップポッドなのか?」と問われれば、回答はまったく明快。おいしい豆を、おいしいドリップで、間違いなく淹れるために他ならない。日常的にカップオンを楽しむのも、趣味としてハンドドリップの腕を磨くのもいい。しかし「コーヒーをおいしく飲むこと、それ自体が趣味」という『リアルサウンドテック』読者諸兄には、ドリップポッドが有力な選択肢になる。
キミが最注力すべきは、ドリップポッドカプセルの定番15品種(+限定品、緑茶など)から、「今日の一杯」を選ぶことだ。

◯参照情報
ドリップポッド ブランドサイト
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編集部の感想:
UCCの「ドリップポッド」シリーズが、ゲイシャやブルーマウンテンの高級コーヒーを198円で提供するという驚きの発表。日本の独自のコーヒー文化への挑戦と、カプセル式マシンの普及が背景にあるのが興味深い。お手頃価格で質の高いコーヒーが楽しめるのは、ユーザーにとって嬉しいニュースです。
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