🧠 あらすじと概要:
映画『ファーストキスさち』あらすじ
『ファーストキスさち』は、松たか子演じるカンナさんと松村北斗演じる駈さんの複雑な人間関係が描かれる物語です。物語は、現実の厳しさとファンタジーが交錯し、特に夫婦関係の難しさや再生の希望がテーマになっています。坂元裕二の脚本により、日常の中に潜む小さな幸福とやりきれない運命が交錯し、観客に深い感情を呼び起こします。
記事の要約
感想文では、脚本家坂元裕二と松たか子のタッグが絶妙であったことが強調されています。観客は日常生活の中での厳しい気持ちや心のすれ違いを共感し、同時にファンタジックな軽快さも楽しめる作品であると述べられています。特に、カンナさんのキャラクターが持つコメディ要素や、松村北斗の役どころが観客に親近感を与えることに言及されています。また、物語が描く人間関係のリアルな側面と、それに伴う感情の揺れ動きが、観客の心に深く響くことが伝えられています。最終的に、この映画は時間が経っても色褪せない魅力を持つ作品であり、リバイバル上映も期待されるほどの作品だと締めくくられています。
余韻がすごすぎて感想文にするまでに時間がかかりました。坂元裕二脚本に松たか子主演。間違いないタッグですが、期待をはるかに越えました。本作はすぐにもう一度観たくなる中毒性がありです。日曜に観たのに、月曜仕事中もこの映画で頭がいっぱい、火曜に再度観に行ってしまうくらい。もしや、松村北斗くんに恋してしまったのかと思いましたが、2回観たら冷静になり、森本担の自我が返ってきました。細部まで造り込まれた1つ1つの場面に気づいて冷静になった次第。大枠は悲しい話ではあるのですよね。坂元裕二さんは幸せと不幸せとを等価に描く印象ですが、今回もやりきれない運命。なのに不思議と人生を愛おしまないとね、と思わされる作品。カルテットも大豆田さんも夢中になって観ましたが、本作は圧倒的に柔らかい。お話を紡ぐ人は人に優しいけれども、物語の終結は残酷だったりします。この作品では人生で起きる良いことと悪いこと、両方を描いているのに、観たあとは良いことがずんと心に残りました。そんなところが大ヒットにつながったのかなと思います。
冷めきった夫婦が無言で台所を共有するヒリヒリするような時間、投げやりに餃子を焼いて失敗前に戻りたくなる絶望感、あぁ離婚ってこんな感じとおそろしいくらいに思い出しました。朝ごはんですれ違う所作は世界中の誰よりも息が合っているのに、心は全く預けられず誰よりも気を張っている時間、十年以上前の自分の離婚直前を鮮明に思い出します。離婚までいかなくとも、世の夫婦の何割かは、世界中で一番自分の存在を肯定してくれる相方との関係が変わり果て、世界で一番自分を傷付ける存在になってしまう、そんな危機を経験しているのではないでしょうか。亡くなった後の遺影に向けるカンナさんの視線さえその延長線に見られ、やるせないことこの上ない。上手すぎます。
それから一転、ファンタジーな展開が続き、松さん演じるカンナさんのコメディエンヌぶりに笑ってしまったり、歳を経た女性のちょっとしたキュンを共有するのだから、このパートは純粋娯楽。私はここを味わいたくて2度目観に行ったと後から気付きました。松さんは才能あふれた美しい女優さんですが、庶民の我々が親近感を感じられるとても稀有な存在。対して、北斗くんの駈さんも当て書きかと思うほどぴったり。すてきな外見なのにどことなく不器用で屈折した感じ、理系のオタクなのに専門はITや数学ではなく文系要素もある古代生物専門という絶妙な設定に夢中になります。北斗くんはリリー・フランキーさん演じる教授や吉岡里帆さん演じる教授の娘、松さんは森七菜さん演じる同僚、との関係がとても「らしくて」それも素敵でした。
少し脱線しますが、森七菜さん、彗星のごとく現れて主演という王道を歩んでいますが、本作で少し安心しました。主役で消費されるだけでなく地に足がついていそう。遠い将来は、さえない中年女性の役とかできそうで、楽しみな俳優さんです。
心ゆくまでファンタジー&ラブ&コメディー満載の場面を楽しみ、そのあとにやり直したあとの、仲睦まじく過ごす大切な時間を見せられるのだからたまりません。カンナさんは何も知らないのか、駈さんはどんな想いなのか、涙が止まりませんでした。
この映画は、もうこれを書いている今、上映はほぼ終わっていますが、数年後、十数年後、いえもっと後にリバイバル上映されても不思議のない作品です。
★★★★★監督 塚本あゆ子脚本 坂元裕二出演 松たか子、松村北斗、リリー・フランキー、吉岡里帆、森七菜 他
2025年日本
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