アメリカのロサンゼルスで開催されているSummer Game Fest: Play Daysで「Exoborne」(PC / PS5 / Xbox Series X|S)を開発するSharkmobの共同創業者でナラティブディレクターのMartin Halberg氏と,ワールドディレクターのFrancois Roughol氏に,最新プレイテストの結果と今後の展望について話を聞いた。
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開発チームは,「プレイヤーが竜巻に車両ごと巻き上げられる瞬間」を求める声に応え,それを実装したという。彼らはどんな哲学で「Exoborne」を開発しているのだろうか。
なお,Exoborneの基礎情報については,以前行われたテスト時のプレイレポートを参照してほしい。
[プレイレポ]ディビジョンの元開発者たちが送る「Exoborne」。広大なマップを楽々移動できる特徴を備えたエクストラクションシューター
スウェーデンを拠点とするゲームスタジオ,Sharkmobが開発するエクストラクションシューター「Exoborne」のプレイテストが2月12日から2月17日まで開催された。筆者もこのテストに参加したので,プレイレポートをお届けする。
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- プレイレポート
- ライター:夏上シキ
4Gamer:
よろしくお願いします。
最新のプレイテストで最も予想外だったフィードバックは何でしたか。そしてそれはデザインの決定にどのように影響したのかを教えてください。
Martin Halberg氏(以下,Halberg氏):
テスト前からどのような反応を得られるかをかなりシミュレートしていたため,そこまで予想外なことはなかったです。ただ,進行システム,インベントリ,そしてExo-rig自体をどのように改造し,何をするのかといった点で,非常に貴重なフィードバックを得られましたね。
Francois Roughol氏(以下,Roughol氏):
予想外というよりはむしろ期待通りでした。しかし,私たちがまだサポートできていなかった,あるいは実装できていなかったことがありました。
その一つが,例えば車両が竜巻に巻き上げられるような演出です。これはすべてのプレイヤーにとって本当に素晴らしい瞬間を作り出すもので,実装したいと思っていましたが,最初はできていませんでした。ほぼすべてのプレイヤーがそれを求めていることが分かり,今は車も竜巻で吹っ飛びますよ。
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4Gamer:
グラップリングのアクションはかなり楽しく,プレイへの影響もかなり大きいです。全キャラクターが気軽に使えるようにする決定はすぐにできましたか。
Halberg氏:
とても良い質問ですね。 テストの結果,グラップリングは常に持っているべきだということが分かりました。なぜなら,それがキャラクターの流動的な動きにおいて非常に重要な部分だったからです。
ですが,そこに至るまでは多くの内部議論がありましたよ。そして,プレイヤーからのフィードバックを得て決着がついたわけです。これは多くの開発チームで典型的なケースでしょう。
最終的に,私たちはデータドリブン(※)であることに重点をおいています。ですから,プレイヤーが何を考えているかを知りたいのです。
※データドリブン(Data-Driven):感覚や経験則ではなく,実際のデータや統計に基づいて意思決定を行うアプローチ。ゲーム開発では,プレイテストの結果,プレイヤーの行動ログ,アンケート結果などの客観的なデータを分析し,それを基に仕様やバランスを調整する手法を指す
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Roughol氏:
最終的には簡単な決定になったといえるでしょう。その簡単な決定とは,世界をできる限り移動しやすくする必要があるということです。なぜなら,プレイヤー対プレイヤーの遭遇に焦点を当てる必要があったからです。
Exoborneでは垂直方向のゲームプレイが特徴であり,自然の力がプレイヤーを吹き飛ばす可能性があります。ですから,グライダーが全員の標準装備であることはもちろん,グラップリングも全員に必要だったのです
4Gamer:
では,天候システムと動的要素のバランスで,最も複雑だったデザイン上のトレードオフは何でしたか。
Halberg氏:
実際の天候システムは非常に複雑です。なぜなら,非常に多くの側面があるからです。私たちは天候がゲームプレイに影響を与えることを望んでいますが,それは意味のある影響でなければなりません。単にイライラさせたり,プレイをより難しくしたりするだけではなく,面白さを提供しなければなりません。
私たちにとっての課題は,プレイして楽しい天候を見つけ,そして天候の変化をゲームサイクルの重要な要素にする方法を見つけることでした。これらのことは,デザインレベルでかなり複雑でしたね。
Roughol氏:
加えて,プレイヤーが本当に求めているのは,より激しく,よりダイナミックな体験だと気づいたんです。
ですから,ゲームプレイに本当に良い合理的な影響を与えながらも,さらに多くの天候効果を詰め込まなければなりませんでした。自然の力がどこでも適用されていることが分かる視覚的要素を持ちながら,ゲームプレイを壊さず,遭遇したものに関係なく全員が生存のチャンスを持てるようにするため,多くの試行錯誤がありましたね。
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4Gamer:
マップ全体で緊張と緩和のリズムを作るために,ランドマークやゾーンをどのようにデザインしたのかを教えてください。
Roughol氏:
ゲームをひたすらプレイすることで発見したことですが,私たちはマップやランドマーク,そして要素の配置について,従来の「平面的な」デザインアプローチを取っていました。つまり,上から見下ろした地図のような,一般的なゲームや現実世界の地図と同じような2次元的な設計です。
ですが,スペースキーを2回押してグライダーを展開し,風に突然巻き上げられるというアイデアを導入したとき,立体的な設計を考えるようになりました。なぜなら,目の前の障害物を飛び越えることができ,すべての戦闘空間が3Dの球体になったからです。
その時点から,鳥瞰的な視点で見るようになりました。各マップには独自の難度レベルがあり,ある数値を尊重するように機会の総数を増減させたいと考えたんです。例えば,150メートルごとに何か興味深いものを見つけるべきで,そこで何かを略奪したり,PvP遭遇がなければPvE遭遇があったりします。
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4Gamer:
異なるExo-rig間のバランスをどのように管理していますか? 特に支配的なメタを避けるために。
Halberg氏:
Exo-rigにはKestre,Kodiak,Viperという3つのアーキタイプがあります。これらはプレイスタイルがかなり異なり,それぞれを大幅に改造して挙動を変えられます。そしてExo-rigに適用できる改造の幅が広いため,「これさえあれば必ず勝てる」という最強の組み合わせは存在しません。
とはいえ,正直なところプレイヤーはいずれ「この組み合わせが強い」という定番の戦術を見つけ出すでしょう。どんなゲームでも,ほかより効果的な戦い方というものは生まれてしまうものです。
そこで私たちは,使える改造パーツを定期的に入れ替えたり,期間限定の特別な改造パーツを追加したりする予定です。こうすることで,「この組み合わせ一択」というような固定化した戦術―――いわゆる「メタ」を防ぎ,常に新鮮な駆け引きを楽しめるようにするわけです。
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Roughol氏:
このゲームでは探索中に,倒したNPCやほかのプレイヤーから特殊能力のパーツを入手できます。ただし,見つけたパーツがすぐに自分のExo-rigに装着できるとは限りません。Kestre専用の飛行パーツをKodiakでは使えない,といった具合です。
これこそが,このゲームの醍醐味―――予測不能な状況への適応力が試される部分と言えるでしょう。すぐに使えないパーツでも,バックパックに保管しておけば,後で役立つかもしれません。
4Gamer:
プレイヤーの行動やヒートマップからどのような洞察を得たのかを教えてください。
Roughol氏:
ワールドデザインにおいて,ヒートマップは私たちが知らなかったことを発見するための本当に重要なツールでした。私は否定的な目で物事をデザインしたくありません。選択肢を奪うことは,おそらく間違った選択です。
ヒートマップが「このエリアで多くの人がプレイしている」と示している場合,それは実際には良いことかもしれません。そこにある活動やルートが魅力的だということでしょう。
つまりプレイヤーがより良い脱出を可能にする追加のツールを提供して,その場所でそれほど死なないようにしたいのです。その場所に出現する車両の総数を増やすと,死亡数が減少することが分かります。これが,各プレイテストで世界を少しずつ修正する方法ですね。
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4Gamer:
脱出システムは本作でどのように機能していますか。
Halberg氏:
ゲーム開始時,各プレイヤーには「推奨脱出ポイント」が個別に割り当てられます。例えば,私には北の脱出ポイント,あなたには南の脱出ポイント,という具合です。ただし,これは推奨に過ぎず,実際にはマップ上のどの脱出ポイントからでも脱出可能です。
ここで面白いのは,天候によって使えない脱出ポイントが出てくることです。竜巻が通過中だったり,嵐で封鎖されていたり。しかも,どのポイントがいつ使えなくなるかは,ゲーム開始時には分かりません。つまり,自分の推奨ポイントに向かったら使えなくて,急遽別の場所を探さなければならない,ということも起こり得ます。
さらに,脱出ポイント付近で銃声が聞こえたら,ほかのプレイヤーが待ち伏せしているかもしれません。安全を優先して別の脱出ポイントを目指すか,リスクを冒して突破するか―――プレイヤーの判断が試されます。
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4Gamer:
プレイヤーが困難に直面したとき,それを解決するためのデザイン哲学について教えてください。
Roughol氏:
私たちの開発哲学は「引き算ではなく足し算」です。プレイテストでプレイヤーから「ここが不便」「これがほしい」といったフィードバックをもらったら,機能を削るのではなく,新しい要素を少しずつ追加していくわけです。すると面白いことに,その小さな追加が予想外の遊び方を生み出すことがあるのです。
プレイヤーは実に多くの選択を迫られます。どの武器を使うか,どの弾薬タイプにするか,どのExo-rigを選ぶか,どんな能力を装備するか。さらにマップの選択,一緒にプレイする仲間,挑戦するミッション―――これらすべてが,プレイヤーの戦略に影響します。
重要なのは,これらの選択がゲーム開始前だけでなく,プレイ中にも常に変化し続けることです。状況に応じて戦術を変え,装備を組み替え,臨機応変に対応する。この「選択の連続」こそが,本作の核心といえるでしょう。
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4Gamer:
初心者プレイヤーへの配慮について教えてください。複雑なシステムを持つ本作で,新規プレイヤーが圧倒されずに楽しめる工夫はどんなところでしょうか。
Roughol氏:
本作では段階的な学習システムを採用しています。新規プレイヤーは,まず専用のチュートリアルマップでゲームの基本を学びます。このとき使用するExo-rigも,機能を限定した初心者用のものです。
まずはゲームの基本的な要素―――移動,戦闘,脱出といった核となる部分をしっかり理解してもらいます。その後,徐々に複雑な要素を開放していき,最終的には自分なりのプレイスタイルを見つけられるよう導いていきます。いきなりすべてを詰め込むのではなく,段階的に学べる仕組みです。
4Gamer:
それでは最後に,日本の読者へのメッセージをお願いします。
Roughol氏:
私は日本を心から愛しています。これは私の個人的な感情ですが,皆様が「Exoborne」を心から楽しんでくれることを願っています。
Halberg氏:
私の日本語能力は非常に限られていますが,書かれていることすべて,見えることすべてに目を向け,皆様からいただくフィードバックに感謝しています。皆さんがフィードバックを送り続けてくれる限り,私たちはそれをゲームに取り入れ続けます。
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開発チームは,プレイヤーの声に真摯に耳を傾け,データに基づいた決定を下しながらも,「楽しさ」を最優先に考えている。車両が竜巻に巻き上げられる瞬間から,Exo-rigのカスタマイズまで,Exoborneは既存のゲームとは一線を画す体験を提供しようとしているのでないだろうか。
本作には,動的な天候システムとプレイヤーの選択が織りなす無限の可能性がある。Exoborneはエクストラクションシューターというジャンルに新たな風――突風を吹かせようとしているのかもしれない。
「Exobornee」公式サイト
🧠 編集部の感想:
「Exoborne」の開発哲学がプレイヤー体験を重視している点がとても印象的です。特に、車両が竜巻に巻き上げられる演出の導入は、実際にプレイヤーの声を反映させた結果であり、遊びの楽しさが増しています。動的な天候システムとカスタマイズ要素が絡み合った新たな体験を提供する「Exoborne」に期待が高まります。
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