Blizzard Entertainmentは「オーバーウォッチ 2」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch / PS4 / Xbox One)で,格闘ゲーム「ストリートファイター6」とのコラボを2025年5月21日に開始する。
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ヒーローシューターと格闘ゲームという異なるジャンルのゲームだが,実はコアな部分で共通点もあり,親和性も高いそうだ。
今回インタビューに答えてくれたAlec Dawson氏は,オーバーウォッチのアソシエイトゲームディレクターとして活躍するかたわら,格闘ゲームへの愛も深く,先日の「EVO Japan 2025」をはじめ,複数回EVOにプレイヤーとして参加しているという。
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オーバーウォッチとストリートファイターの両方に愛と情熱を注ぐ同氏に,今回のコラボについて,国内メディア合同で気になることを聞いてきた。
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ハンゾー × リュウ | キリコ × ジュリ |
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ジュノ × 春麗 | ウィドウメイカー × キャミィ |
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ゼニヤッタ × ダルシム | ソルジャー76 × ガイル |
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ウィンストン × ブランカ | シグマ × ベガ |
※ちなみに日本と欧米版で,キャラクター名が入れ替わっている。記事中の表記は,日本語名に準拠しています。
・ベガ(英語名:M.Bison) / バルログ(英語名:Vega) / バイソン(英語名:Balrog)
――今回のコラボが実現したきっかけや,コラボが決まった時期を教えてください。
Alec Dawson氏:
コラボは,開発陣が好きな作品から選んでいることが多いです。私たちの開発チームには,ストリートファイターをプレイしたり,観戦したりする人が多くいます。コラボ候補を挙げていくときに,ストリートファイターは必ず含まれていました。
また,オーバーウォッチのアートスタイルは,ストリートファイターの影響を大きく受けている部分もあります。現実より少し大きめの体格や,画面を飛び回るような躍動感のあるキャラクターたちです。
コラボは1年以上かけて進めてきました。ようやく皆さんにお披露目でき,もうすぐ実際に遊んでいただけると思うとワクワクします。
――「ワンパンマン」「カウボーイビバップ」「僕のヒーローアカデミア」など,日本IPとのコラボが多数見られますが,理由はありますか。
Alec Dawson氏:
日本は,素晴らしいメディアやコンテンツをたくさん生み出しています。私たちがコラボするIPは,開発チームが情熱を持って大好きなものを選んでいます。これらは,開発メンバーが一緒に成長してきたか,ここ数年で強い情熱をもった作品です。
社内Slackには,オーバーウォッチに来てほしいIPを提案するチャンネルがあるのですが,ストリートファイターに関しては,私以外にも多くの開発メンバーから提案がありました。
ストリートファイター6が発売されたときは,仕事終わりに残って対戦していたのですが,ストリートファイターファンだと知らなかった人まで参加していて,とても驚いたのを覚えています。
コラボは,作品への愛情とその作品のキャラクターたちをオーバーウォッチでどのように表現したいか,という思いから生まれたものです。
――コラボスキンの数が過去最多で,かなり力を入れられていると思います。今回のコラボにかける思いなどを教えてください。
Alec Dawson氏:
これ以上ないほど興奮しています。長い時間をかけて,コンセプトを徐々に形にして,3Dモデルを完成させて,実際にゲーム内で動いているのを見ると,本当に素晴らしいものができたと感じます。
最近の内部でのテストプレイで見かけるシグマは,ほとんどがベガスキンですし,私がウィンストンを使うときは,必ず(私の愛用キャラの)ブランカスキンを使っています。プレイヤーの皆さんが実際に使ったときの反応を見るのが楽しみです。
さらに,ここでもう1つ重要なことは,コラボするヒーローの多くが3人称視点でプレイできる「スタジアム」で使えることです。シグマとゼニヤッタは次のシーズンからスタジアムに登場するのですが,ダルシムスキンのゼニヤッタが浮遊し,跳び蹴りする様子は,まさにストリートファイターの世界そのものです。
――特殊なエフェクトや効果音などは,どのようなものが用意されていますか。こだわりの点も一緒に教えてください。
Alec Dawson氏:
たくさんあります。コラボのために本当に力を入れました。ボイスラインからエモートまで,ストリートファイターを象徴するものが出てきます。
エモートで,ジュノはスピニングバードキックを繰り出せるし,ハンゾーは波動拳を打てるという感じですね。
また,近接攻撃の音は,すべてのスキンで実際の格闘ゲームの攻撃音のようなものを用意しています。その格闘ゲームらしさにも注目してほしいです。
ヒーロー選択画面だと,ヒーロー自身の名前ではなく,コラボキャラクターの名前で表示されます。ウィドウメイカーだとキャミーと表示されるんです。アナウンサーの特別なボイスラインも用意しています。
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あとは,ストリートファイターといえば,車を殴るボーナスステージですよね。ハイライトイントロでハンゾーが竜巻旋風脚で車を攻撃する様子などは,双方のファンに楽しんでもらえると思いますし,コアなファンにも喜んでもらえるような小ネタを仕込んでいます。
――リュウにハンゾーを選択した理由を教えてください。
Alec Dawson氏:
今回のコラボで,リュウと春麗は当初から入れたいと考えていました。オーバーウォッチのラインナップから波動拳を出せそうなヒーローを考えると,ハンゾーが合っていると思います。
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ハンゾーは非常に躍動感のあるキャラクターなので,リュウの動きも彼ならできますし,日本人という共通点もある。ハンゾーがリュウのコスプレをすることは,疑いようのない組み合わせだと思います。
――オーバーウォッチには,ドゥームフィストというもっとも格闘ゲームが似合うヒーローがいますが,彼はスキン候補にいましたか。候補に挙がっていた場合は,どのようなスキンを想定していたかも教えてください。
Alec Dawson氏:
ドゥームフィストはもちろん候補にいて,バイソンを検討しました。ただ,ドゥームフィストは巨大なガントレットを片手に装備しているので,ボクシンググローブが片方は大きく,もう片方は小さく,シルエット的にしっくりこなくて見送ってしまいました。
カプコンとの仕事はとてもいい経験でしたので,ぜひまたコラボできれば,と思っています。そのときは,ドゥームフィストも再度候補に挙がってくるでしょう。
――コラボには,ヒーローのピックプールを広げてほしいという思いもありますか。キリコが苦手だったけど,ジュリスキンをきっかけに練習しよう,といった動機づけなど,そうした意図があれば教えてください。
Alec Dawson氏:
オーバーウォッチで複数のヒーローを学ぶことは,ゲームのもっとも楽しい部分だと考えています。複数のヒーローを使いこなせれば,どんな局面にも対応する力になりますから。
ヒーローBANの導入もあり,より深いピックプールを持つことが重要になっていますし,コラボが新しいヒーローを試すきっかけになるのは,素晴らしいことだと思います。
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――ストリートファイターの筋肉質な体格や派手な衣装を再現するにあたって,難しかった点や工夫した点を教えてください。
Alec Dawson氏:
IPコラボをするときは,オーバーウォッチのヒーローがコスプレをしている,という想定で作っています。ハンゾーのリュウスキンを見ると,リュウほどムキムキではないと思います。これはシルエットを変えないためです。あくまでハンゾーがリュウのコスプレをしている,という前提を大切にしています。
一方で,コスプレから1歩踏み込んだものもあります。シグマのベガスキンは,肩パットに注目して,できる限りベガのシルエットに合うように新しいものを作っています。
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ゼニヤッタのダルシムスキンは,脚が伸びるように見せるために,脚の伸縮を調整しています。オーバーウォッチのシルエットも大事にしつつ,そのうえでストリートファイターの要素をできる限り取り込むのです。
ソルジャー76のガイルスキンにおける髪型にも,そのコンセプトが表れています。ゲームプレイの視認性を保ちながら,スキンを見たときにすぐストリートファイターのキャラクターと気づけるバランスを実現できたと思っています。
――カプコンとは,どのようなやり取りがありましたか。印象に残った出来事などがあれば教えてください。
Alec Dawson氏:
カプコンは,本当に素晴らしいコラボ相手でした。私たちがやりたいと思っていたことすべてに興味を持ってくれましたし,サポートも手厚かったです。美術資料だけじゃなく,実際のアニメーションやサウンドなど,たくさんの参考資料を送ってくれました。
カプコンは全行程において非常に協力的で,できる限り原作に忠実なコラボを実現できるように務めてくれました。Blizzardではないゲームとのコラボは初の試みだったのですが,ゲーム会社同士ということもあり,制作スケジュールも自然に理解してくれて,とてもスムーズに進行できました。
――対戦格闘ゲームとFPSという異色の組み合わせですが,今回のコラボでどのような効果を生むと思いますか。
Alec Dawson氏:
今回のコラボをきっかけに,ストリートファイターのプレイヤーが,オーバーウォッチをプレイしてくれることを期待しています。
実は,オーバーウォッチとストリートファイターには,共通点もあります。オーバーウォッチのヒーローを学ぶプロセスは,ストリートファイターのキャラクターを学ぶことに非常に似ています。
ヒーローが持つ複雑な特性を1つずつ理解していき,自分にはできないと思っていたコンボや技も,数週間,数か月かけて自分のものにするといったことですね。
反対に,オーバーウォッチのプレイヤーには,ストリートファイターをプレイしてみてほしいです。どちらもかなり競技性が高く,深く掘り下げて自分の上限を探り,自分自身にも挑戦できる点など,類似点も多く発見してもらえると思います。
ストリートファイターが好きならオーバーウォッチを,オーバーウォッチが好きならストリートファイターをきっと気に入ってくれるはずです。両方の作品を楽しんでもらえることを願っています。
――今回のコラボでとくに狙っている層はありますか。
Alec Dawson氏:
特定の層を狙っていることはなく,ストリートファイターファンの皆さんに楽しんでほしいです。私たちが実現したかったのは,オーバーウォッチの中でストリートファイターの素晴らしさを伝えることです。
できる限り,多くの象徴的なビジュアルを再現して,「おっ,これは私が大好きなストリートファイターのキャラクターだ!」と,すぐ認識してもらえることを目指しました。オーバーウォッチの世界観とうまく融合させられた,と思っています。
――最後に,日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Alec Dawson氏:
日本の皆さんに確実に伝えたいことは,私たちが日本のオーバーウォッチコミュニティの潜在能力の高さを理解していることです。コンテンツクリエイターたちが,非常に強力なコミュニティイベントを多数開催しているのを見ています。
私たちは,日本のコミュニティを見て,コミュニティが成長し続ける大きな可能性を感じています。そういった根を広げる活動が続いていくことを願っています。
今後数年間でもっとも大きな可能性を秘めたコミュニティの1つだと考えているので,できる限り最良の方法でサポートしていきたいと思っています。
これまでのサポートに対して,日本のコミュニティに感謝の意を表したいです。また,我々も同じくらいのサポートを返したいと思っています。
「オーバーウォッチ 2」公式サイト
「ストリートファイター6」公式サイト
🧠 編集部の感想:
このコラボレーションは、異なるジャンルのゲームが持つ共通点を活かし、新しいファン層を生む可能性が高そうですね。開発者の情熱が反映されたキャラクターたちのデザインは、ファンにとっても魅力的です。また、ないようである両作品の結びつきに新たな楽しみを感じました。
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