花粉症の人や、慢性的な鼻炎を抱える人の中には、シーズンや体調によっては鼻詰まりを解消してくれる点鼻薬が手放せなくなる人が少なくないはず。充血除去薬や血管収縮薬入りの点鼻薬は、鼻詰まりを素早く緩和して呼吸を楽にしてくれますが、使いすぎると鼻炎のさらなる悪化などの代償を支払うことになると、専門家が警鐘を鳴らしています。
From headaches to addiction: the risks of overusing nasal decongestant sprays
https://theconversation.com/from-headaches-to-addiction-the-risks-of-overusing-nasal-decongestant-sprays-254830
イギリスのキングストン大学で薬学実務の上級講師を務めるディパ・カムダール氏によると、鼻詰まりは鼻や副鼻腔(ふくびくう)の粘膜がアレルゲン、ウイルス、汚染物質などによって炎症を起こした際に発生するとのこと。炎症反応が発生すると、免疫細胞が炎症性化学物質を放出し、それが腫れや粘膜の分泌増加につながります。この腫れが空気の流れを阻害することで息苦しくなるほか、睡眠の妨げになることもあります。
そして、ほとんどの鼻詰まり用点鼻薬には、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリンなどの薬剤が含まれています。これらの薬剤が鼻腔の血管にあるアドレナリン受容体に作用することで、血管が収縮して腫れが軽減されると、空気の通り道が開いて鼻が通るようになる、というのが主な点鼻薬の働きです。
これらの点鼻薬は即効性があるため、多くの人が重宝していますが、その便利さには代償が伴うことがあります。まず、鼻詰まり用点鼻薬には使用してからやめると頭痛や鼻詰まり、鼻の乾燥、さらには精神的な不安感などを発生させる離脱症状のリスクがあります。
そして、点鼻薬の過剰使用に関する副作用で最も懸念されるのが、リバウンド性鼻閉、または「薬剤性鼻炎」と呼ばれる症状です。これは、鼻詰まりを治すのを点鼻薬に依存している状態で、そのまま使用を続けると薬の効果が薄れ、やがて急に効き目がなくなるタキフィラキシーと呼ばれる現象が起きます。その結果、同じ効果を得るためにスプレーをより頻繁に、よりたくさん使用してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
こうなると、頑固な慢性副鼻腔炎に発展するおそれがあるほか、繰り返し血管が収縮することで鼻腔組織への血流が減少し、粘膜が薄くなる「菲薄化(ひはくか)」や、鼻血や乾燥の慢性化、さらには左右の鼻を隔てる鼻中隔に穴が開く鼻中隔穿孔を引き起こすこともあります。
また、点鼻薬の使いすぎは鼻甲介(びこうかい)を傷つけます。鼻甲介は鼻の中にある小さな骨の構造で、吸い込む空気をろ過し、温め、加湿する働きがあります。この鼻甲介が腫れたり炎症を起こしたりすると鼻甲介が肥大して肥厚性鼻炎になり、鼻詰まりが悪化するおそれがあります。さらに、点鼻薬を過剰使用すると、鼻からアレルゲンを除去する繊毛の機能が損われるリスクもあります。
身体的な依存性にとどまらず、多くの点鼻薬使用者が心理的な問題も経験しています。なぜなら、点鼻薬に頼りすぎると「点鼻薬なしでは息ができなくなる」という恐怖が大きな不安感を呼び、過剰使用の症状が悪化しても点鼻薬が手放せなくなるからです。
カムダール氏によると、より安全な代替品として生理食塩水の点鼻薬や鼻うがいを使用すると、リバウンド性鼻閉を引き起こすことなく異物を洗い流し、鼻腔を潤すことができるとのこと。
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また、どうしても鼻詰まり用点鼻薬を使用する場合の目安は3~5日で、長くても1週間といわれています。加えて、必ず添付文書や製品ラベルに目を通し、用法と用量を守ることも重要です。
カムダール氏は「即効性のある鼻詰まり用点鼻薬は便利ですが、乱用すると離脱症状による鼻詰まりや鼻腔組織の損傷、精神的依存などの深刻な結果につながる危険性がありますので、使用はほどほどにして、鼻詰まりが1週間以上続く場合は医療専門家にご相談ください。より安全な代替手段と医師の指導があれば、長期的なリスクを負うことなく、呼吸を楽にすることができます」と述べました。
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🧠 編集部の感想:
点鼻薬の過剰使用がもたらすリスクについての警告は、非常に重要です。便利な薬でも、依存や身体的な問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要ですね。効果的な代替手段を知り、健康的な使い方を心掛けることが大切だと感じました。
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