🧠 あらすじと概要:
あらすじ
映画『能登デモクラシー』は、石川県の穴水町を舞台にしています。人口約7,000人のこの静かな町では、元教員の80歳の男性が自ら手作りした新聞「紡ぐ」を発行し、町政を監視しながら住民の関与を促しています。しかし、2024年1月に能登半島地震が発生し、その町は大きな試練に直面します。映画は、地震の影響を受けた町民や町の現状を追いながら、困難を乗り越える力強さと民主主義の重要性を探っています。
要約
『能登デモクラシー』は、短い上映時間に濃密な情報を詰め込んだドキュメンタリーで、観る者に強い印象を与えます。穴水町の現状や過疎化、インフラの問題を掘り下げつつ、町民の声を大切にする新聞「紡ぐ」の意義を描いています。地震後の変化や、民主主義を維持するために必要な胆力についても考察がなされ、観終わった後には深い余韻が残る作品です。特に、参加することの重要性や他者へのケアといったテーマが強く感じられ、観客に感想を共有したくなる思いを抱かせる映画です。
感想
まず情報量に圧倒されました。上映時間は101分。
近年は3時間近い映画も少なくないなかで、本作は比較的短い尺の中に、濃密な取材内容がぎゅっと詰め込まれています。観終わった後にはどっと疲労感がありましたが、それは難解な映画を観たというより、スポーツ後の疲労に近い感じというのでしょうか。リズミカルに情報が展開されていくため、ドキュメンタリー苦手という人にもぜひ観てほしい映画でした。
人口減少、過疎化、土砂崩れが起きてもなかなか舗装されない集落への道…。地震以前から、穴水町を取り巻く状況は困難が伴うものでした。新聞「紡ぐ」はそんな町の現状に過疎化とは人がいなくなるだけなのか?と問いかけます。
町民の足となる100円バス。1日の利用者は2、3人。その利用者がいることを噛み締めるような職員の笑顔がとても印象的でした。手が回りきらないインフラ整備、コンパクトシティ推進
―その現場を映し出しています。
そして2024年の能登半島地震。
日常が変わってしまったあの日以降、カメラはその先を見つめます。地震による被害や、その中で生きる人々の暮らしの手触りについては映画館でみてもらいたいです。
映画の後味
ルール違反が見過ごされ続けると、将来的にはその歪みが加速度的に広がってしまうだろうということを感じました。「なんだ、そんな小さなこと」と一見流されてしまうようなこともいずれ根底を揺るがす問題へと発展するかもしれないという予感がありました。
自身にも経験がありますが、組織に所属していると、会議室に集まった誰もが気づいている問題にあえて触れずに、空気に依存したまま意思決定が進んでいく場面に遭遇します。
— 英語圏にはこうした状況を表す「Elephant in the room(部屋の中の象)」という慣用句があるそうです。誰の目にも明らかな問題があるのに、なぜか誰も言わない。気づいた人間が声を上げ続けることには、思った以上に大きな意味があることを感じました。
民主主義は、制度というより態度なのかもしれないです。言い続ける胆力がなければ前に進まない—その難しさと必要性を、この映画で改めて突きつけられた気がします。
映画の中でも、穴水町の議員構成が男性9人・女性1人という数字にも表れていましたが、そもそも日本の政治における女性の少なさそのものが、「民主主義」と言えるのか?という疑問を抱きました。
通底する”他者へのケア”という視点は、まさにそうしたテーマとも深くつながっていて、見終わったあとに感想をシェアし、話し合いたくなる映画だと感じました。
5月17日に始まり、全国順次公開中です。ぜひ劇場でご覧ください。
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