月曜日, 5月 19, 2025
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露伴をめぐるオリジナル展開が熱い! 映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」試写レポート


 荒木飛呂彦氏のマンガ「ジョジョの奇妙な冒険」から生まれたスピンオフ作品「岸辺露伴は動かない」。その実写化シリーズの最新作となる映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」が、5月23日から全国公開される予定だ。

 今回は劇場公開に先立ち、試写によって本作を視聴する機会が得られた。一体どのような内容となっているのか、その魅力と見どころについて詳しく紹介していきたい。

【映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」本予告】

消えない“罪”を犯した男……シリーズの原点「懺悔室」の内容

 「岸辺露伴は動かない」は、「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する岸辺露伴を主人公とした物語だ。

「岸辺露伴は動かない」1巻

 露伴といえば、最高の作品を描くためならどんなことにでも手を染める変人漫画家で、人の心を“本”にできる「ヘブンズ・ドアー」という能力の持ち主でもある。作中ではそんな彼が好奇心に駆られ、さまざまな事件に巻き込まれる様子が描かれていく。

 実写シリーズは2020年12月から不定期で制作されており、2023年5月には「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」として劇場版1作目が公開。露伴役は俳優の高橋一生さんが演じている。

キービジュアル

 劇場版2作目となる今作では、単行本1巻の冒頭に収録されている「懺悔室」を映像化。簡単にあらすじを紹介しておくと、作中で描かれるのはとある“罪”を犯した男の物語だ。

 その男は若い頃、市場で働いているときに浮浪者と出会い、食べ物を恵んでほしいと懇願される。しかし男は彼を怠け者だと決めつけ、重い荷物を運ばせたことで、無残な事故死を招いてしまう。するとその浮浪者が怨霊となって現れ、「幸せの絶頂の時」にお前を迎えに来ると宣言するのだった。

 それから男の人生には、不気味なまでに幸運が舞い込んでくるようになり、億万長者となって妻と娘にも恵まれる。そしてまさに「幸せの絶頂」を感じたとき、怨霊がふたたび姿を現し、命がけの試練を課してくる……。

傍観者だった露伴が当事者に! 原作の“その後”を補完したシナリオ

キャラクタービジュアル

 それに対して映画版のシナリオは、原作「懺悔室」をなぞりつつも大胆にオリジナル展開を盛り込んだものとなっている。

 露伴はイタリア・ヴェネツィアで取材のため教会に足を運び、そこで見かけた告解室のなかに入る。すると彼を神父だと勘違いした男が、自身の罪を告白し始めるという流れで、そこで語られる罪の内容もほとんど同じだ。

 ただ、原作とは違って男は日本人という設定。世界を旅しているときにヴェネツィアで旅費を盗まれ、仕方なく仕事で金を稼ぐことになり、そこで浮浪者と出会うという流れに変わっていた。

 さらに大きな変更点は、原作のエピソードが映画版では中盤くらいの尺で終わることだ。つまりは残り半分ほどの尺を使って、原作にないオリジナル展開が描かれていく。とはいえそれは決して原作を逸脱するものではなく、むしろ誰もが気になるであろう“その後の運命”を補完した内容となっている。

 原作では男がとある策略によって怨霊を出し抜くのだが、さらなる怒りを買ってしまい、その後も呪われ続けることが示唆されていた。映画版ではその設定を忠実に引き継ぎ、呪いと向き合い続ける男の人生をさまざまな角度から描き出している。

 そしてこの後半のオリジナル展開において、露伴が物語に深く関わっていくことに。原作ではたんなる傍観者として話を聞くだけで終わっていたが、とあるきっかけから当事者となるばかりか、“呪いと対決する”という構図にまで発展していく。

 怨霊は呪いをかけた相手にもっとも深い絶望を味わわせるため、あえて異常なほどの幸運を押し付け、「幸せの絶頂の時」に復讐を果たす……。ある種の奇妙な“怪異”と対決するストーリーとして、この上ないスリルを体験させてくれる。

 またオリジナル要素として、飯豊まりえさん演じる名物キャラクター・泉京香が強烈な存在感を発揮していることも見逃せない。原作では登場すらしていなかった京香だが、映画版ではヴェネツィアで露伴と行動を共にした上、呪いに巻き込まれる当事者となる。

泉京香

 能天気かつパワフルな言動で観る者を圧倒するのは毎度のことだが、今回はとくにその一挙一動が生き生きとしている印象を受けた。これまでになく血なまぐさい物語なので、なおさら京香の存在が救いになっていることも確かだ。また露伴との掛け合いもこなれているせいかとても楽しく、冒頭から最後まで思わずクスッとしてしまうような描写が満載だった。

最大の見どころは? 迫力に満ちた“怨霊との対決”と仮面職人・マリアの魅力

 もちろん同作では、原作の大きな山場である“ポップコーン対決”の場面もしっかり再現されている。

キャラクタービジュアル

 これは男が怨霊に課された試練で、「ポップコーンを街灯よりも高く投げ、三度続けて口でキャッチする」という内容。もし失敗すれば、“絶望”を与えられることになるという。太陽光の眩しさやポップコーンにつられて集まってくる鳩など、さまざまな悪条件に見舞われながら、男は機転を利かせて窮地を切り抜けようとする。

 映画版ではほとんど同じ流れで一連のシーンが描かれるが、その男・水尾を演じる大東駿介さんの演技はきわめて壮絶。たんに原作のセリフを口にするだけでなく、声にならない声を喉の奥から絞り出すなど、まさしく“怪演”と言うべき迫力を放っていた。

 その一方、怨霊が娘の身体を奪う演出には若干の変更点がある。原作では娘が分かりやすく化け物じみた姿に変貌していたが、映画版では真っ赤な衣をまとったどこか神々しい姿となり、その舌のなかに邪悪な顔が浮かび上がる描写に変わっていた。それによって、まるで人間が神に試される試練であるかのような緊張感が生じている。

 「原作をそのまま実写化すると安っぽく見えてしまいかねない」という配慮なのかもしれないが、その演出意図は見事に成功していた。

 また、もう1つの見どころは玉城ティナさん演じる仮面職人・マリアの存在だ。作中では一種のヒロインに近い役どころで、物語に深く関わってくる。

マリア

 マリアは「異常なほどの幸運が舞い込んでくる」という数奇な運命に翻弄される女性。その名前の通り、聖人のような純粋無垢なところがある一方、運命に抗い自分の意志で幸せを掴み取ろうとする人間らしい部分も兼ね備えている。

 玉城さんといえば、映画「地獄少女」の閻魔あい役がそうだったように、この世のものならぬ雰囲気を身にまとうことができる個性的な役者だ。その透明感のある佇まいは、現実離れしたヴェネツィアの街並みや、人間の理外にある“呪いの物語”にこの上なく馴染んでいた。マリアが作中屈指の魅力的なキャラクターになっているのは、彼女の演技によるところが大きいだろう。

ヴェネツィアの街並みに本格的なオペラ……映像と音楽のすばらしさ

 同作の魅力は、シナリオ面ばかりではない。映像も音楽もきわめて洗練されているため、「岸辺露伴は動かない」シリーズに触れたことがない人でも満足できるのではないだろうか。

 まず映像面に関しては、なんといってもロケーションの美しさが圧巻。同作は日本映画初となる全編ヴェネツィアロケを敢行しており、あらゆるシーンで絵画のような美観が作り上げられている。

 とはいえ露伴の佇まいは歴史ある街並みにも決して負けておらず、むしろ見事に調和している。まさに“歩いているだけで絵になる”状態だ。

 たとえば冒頭では露伴が観光客狙いのスリに絡まれ、「ヘブンズ・ドアー」を放つ場面がある。そこで「今、心の扉は開かれる」という決めゼリフをイタリア語で放つのだが、背景の美しさも相まって惚れ惚れするほどスタイリッシュな名シーンとなっていた。

 ほかにも露伴が告解室に忍び込む荘厳な教会、運河をゴンドラが進んでいく光景、印象的な仮面の数々など、ヴェネツィアロケならではのカットを堪能できる。

【映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」ヴェネツィアメイキングPV】

 そして菊地成孔氏と新音楽制作工房が手掛ける音楽も、映像に負けないクオリティ。本格的なオペラが流れる場面もあるのだが、作品の主題となっている“運命の強制力”を感じさせるド迫力の音響効果を生み出していた。

 キャストからスタッフまで、全員が徹底的なこだわりをもっていたことが伝わる同作。純粋に映画としての完成度が高く、予備知識なしで楽しめる物語なので、「岸辺露伴は動かない」シリーズに触れたことがない人が最初に観る作品としても最適だと思われる。

 だからといってカジュアルな作りにはなっておらず、原作の深いテーマ性を丁寧に表現していることも評価したいポイントだ。運が人生に及ぼす影響、そして運に左右されない生き方を選び取るということ……。自分の人生と向き合う気持ちを呼び起こしてくれるという意味で、強く記憶に残る作品と言えるだろう。

 映画の公開は5月23日を予定しているので、気になる人はぜひ映画館まで足を運んでほしい。

映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」作品情報

出演:高橋一生 飯豊まりえ / 玉城ティナ 戸次重幸 大東駿介 / 井浦新
原作:荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫
製作:『岸辺露伴は動かない 懺悔室』 製作委員会
制作プロダクション: NHKエンタープライズ、P.I.C.S.
配給:アスミック・エース
公式サイト:kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp
公開日:2025年5月23日





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🧠 編集部の感想:
映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」のオリジナル展開が、原作の緊張感を保ちながら新たな深みを加えているのが魅力です。特に、露伴が傍観者から当事者になる過程は興味深く、ストーリーのスリルが増しています。映像美と音楽も相まって、未体験の面白さを感じられる作品に仕上がっていますね。

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