下記の記事は,游研社(→リンク)に掲載された記事を,許可を得て翻訳したものです。可能な限りオリジナルのまま翻訳することに注力していますが,一部,画面写真などを変更したり,文化的な背景などで理解されづらいものについては日本向けに表現を変えたりしている箇所があります。→元記事

 4月21日,アメリカのボードゲームメーカーStonemaier Gamesは公式サイトで,We Are Suing the Presidentを題したブログ記事を発表し,トランプ大統領に対する集団訴訟に参加する意向を示した。理由は,近頃トランプ政権が中国からの輸入品に最大145%の関税を課したことにある。
 ここ1か月,急上昇する関税はボードゲーム業界に非常に不安定な状況に置いた。主に,中国の製造業者に依存するアメリカのボードゲーム企業に深刻な打撃を与えているからだ。
 Stonemaier Gamesの創業者Jamey Stegmaier氏は,文中で次のように述べている。

「我々は,行政部門が無制限に関税を課す権限に異議を唱える訴訟に参加します。私たちの生計,そして米国内の何千もの中小企業オーナーや請負業者の生計,さらには幸福追求の権利,私たちが大切にしてきた顧客たちが,政治的駆け引きの駒として扱われる中,私たちは手をこまねいて見ているわけにはいきません」

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[2021/01/22 12:00]

 Stegmaier氏によれば,145%の関税が正式に施行されれば,今後中国でStonemaier Gamesが製品を10ドルで生産するたびに,14.50ドルの関税を支払わなければならなくなる。氏は,関税政策によって会社に150万ドルの追加出費が発生すると予測しており,わずか8人の従業員を抱える企業にとって,これは明らかに受け入れがたい負担だ。
 関税政策が発表されて以来,多くのボードゲームメーカーが声明を出し,彼らのゲームが中国に足止めされていると訴えている。
 高騰する関税により,これらの企業はゲームの輸入コストを負担できず,たとえゲームの生産が完了していても,損失のリスクを冒してまでゲームを発売しようとはしない。価格を強制的に引き上げて損失を補おうとしても,145%もの関税は,消費者がそれに対応することを難しくしているだろう。
 「そもそも関税は自国産業を保護するためのものであって,一見して製造工程がそれほど複雑とは思えないボードゲームなら,アメリカ国内での生産も可能なのではないか」という疑問を持つ読者もいるだろう。
 この点について,同じくアメリカのボードゲームメーカーのCephalofair Gamesは,関税政策が発表された当初から明確な見解を示していた。
 曰く「残念ながら現在のアメリカは,自国でボードゲームを生産する能力が既に失われているのです」

Cephalofair Gamesの責任者が,2019年に中国のボードゲーム生産工場で撮影した写真
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 Cephalofair Gamesは今年4月9日に発表したブログ記事で,アメリカの高い人件費や材料コストが国内ボードゲーム産業の発展を著しく妨げていると指摘した。
 例えば,Cephalofair Gamesが製作するボードゲームは通常,価格を50ドル前後に抑えているが,ゲームがアメリカ国内の小売店で長期的な販売を実現するためには,発売元は商品コストの基本価格に5〜7倍の価格を上乗せする必要がある。
 この倍率の設定は,卸売価格の値引き後も極めて薄い利益空間を残し,他の追加支出や運営コスト(輸送費,倉庫保管,人件費,製品開発,デザイナーへのロイヤリティ,再版など各種費用)をカバーするためのものだ。
 そして,50ドルの販売価格のゲームは実際には20ドルの卸売価格で流通業者に販売されることになり,これは会社に残る利益率がほぼ消滅することを意味している。

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 また,ボードゲームは非常にカスタム性が高く,多種多様な特注材料から作られた数多くのカスタムパーツを含んでいる。中国では,これらすべてを一つのパートナーのもとで調達できるが,アメリカでの生産となると,個々のカスタム部品ごとに別々の製造業者に入札をかけなければならない(まぁそもそも,少ない製造ロットに対してアメリカの業者が関心を持ってくれないとのことだが)。
 さらに原材料を輸入し,すべてを組み立てる労働力を自前で確保するか探し出す必要がある。そういった難関を仮にすべて克服したとしてもそれは,現在のボードゲーム市場のどこよりも高い価格につながるだろう。
 アメリカ国内には,ボードゲーム業界に必要な生産能力も,市場競争力も,経験の蓄積も不足しており,大規模生産はおろか業界全体のニーズを満たすことは到底できない状況なのだ。

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 このような理由から,145%の関税政策は特に致命的なものとなっている。
 現在,Stonemaier Gamesは危機に対応するためにさまざまな対策を講じており,欧米以外の市場販売の拡大,アメリカに向けて予定されていた製品を中国の倉庫に一時保管すること,コストを自社負担して製品の補充を維持することなどが含まれる。
 Stegmaier氏は海外メディアPolygonに対し,この件を担当する法律事務所は今週後半に訴訟を提起する予定であり,訴訟が提起されるまでは,訴訟の詳細やその他の情報についてコメントできないと明かした。
 Stonemaier Gamesがトランプを提訴するというニュースが広まった後,ここ2日間で関税の影響を受けた100社以上のアメリカ企業が同社に連絡を取ったという。皆が関税政策に長い間苦しんでおり,この訴訟はこれらの企業の存続を左右する可能性がある。
 同様の状況は,隣接する印刷業界でも実際に発生しており,一部の複雑な印刷技術のほとんどは,中国の一部の印刷工場でしか実現できない。両者は同様に重要なビジネスチャネルが突然断ち切られるという困難な状況に直面している。
 いずれにせよ,トランプ氏の関税政策はすでに世界貿易市場を高圧的な状況に置いており,「Made in China」に依存する中小企業は前例のない困難に直面している。
 中米間の関税戦争が予想通りに速やかに沈静化するのか,それとも予測不可能な行ったり来たりの攻防に発展するのかは,現時点では未知数である。この影響を受けた各企業が無事に冬の時代を乗り切れるよう,政治的な駆け引きによって,本来負うべきではない損失を被ることがないよう願うばかりだ。(著者:Okny

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