🧠 あらすじと概要:
映画『関心領域』(2024)あらすじと評価
あらすじ
『関心領域』は、ナチスの強制収容所の隣に住むドイツ人所長の家庭を描いた作品です。映画は、強制収容所からの音声がBGMのように流れる中、家族の無関心な日常を淡々と映し出します。観客は、全く映し出されない収容所の存在を通じて、主人公たちの特異な無関心を追体験することになります。
記事の要約
映画はドキュメンタリー的手法を取り、カメラは固定され、出来事は淡々と表現されるため、観客は無機質さを感じます。特に映像のリズムや反復が少ない点が批判されますが、異常な感情抑制がある中でナチスの歴史を描く感覚が評価されます。最後の10分では、現代のアウシュヴィッツを描写する展開により、評価が一転し、感情が揺さぶられます。このラストシーンは、物語に深いつながりを持たせる効果的な要素として際立っています。
全体として、作品は感情を抑制した描写が強く、視聴者に強烈な印象を残す一方で、細部の無理をも含むラストが全てを浄化する形となっていました。
この映画は大抵カメラを固定しており、被写体に寄り添う意図は無く、観察に徹底する。どの出来事も淡々と描かれ、全てが等価に映る。ドキュメンタリー性が出る。無機質に映る。無機質故に、セットのセット性が気にならない。
犬、ウマなどの動物が出てくる。
花から赤一色への推移。
暗視カメラ。
こういった点は、特殊で、良かった。こうした攻めた映画を2024に制作、配給できていることはとても高く評価する。
けれど、関心領域はどこか空回りしている。その理由は複数あって、ショットが雑然と並べられている、反復が少ない、カメラ固定に耐えきれずショットを転換してしまっている、等々。
特に反復の少なさは大問題であって、それによってリズムが生まれない。一方、淡々と日常を描くジャンヌディエルマン(1975)は、その緩急で惹く。
単に、一つ一つのショットの画が堪えていない、というのもあるだろう。80分なら良かった。
とはいえ、これほどまでに感情を抑制し、淡々と、ユダヤ人やヒトラーを排除して描かれたナチス映画が、2024に制作、配給でき、多くの人に見られたことはやはり高く評価する。
以上の評価は、Amazon Primeで映画を見ながら、書いていた。
けれど、最後の10分で大きく評価が変わった。
突如、現代のアウシュヴィッツの収容所、それも資料館となったアウシュヴィッツへと転換する。このラストが本当に良い。こうして位相を大きくズラすことで、大きく感情が揺れる。資料館の清掃員も、ヘス家の人と同様に淡々と仕事をこなす。
犯人が解るだとか、誰かが死ぬだとかそういった開示性や衝撃性を伴うものではない、これが良い。美しき仕事(1999)もそうだが、このように完全に位相をズラすラストシーンは、とても効果的に作用する事が多い。ネタバレに左右されないというのもある。
そして、エンドロールには音楽が鳴り響く。これも良かった。
空回りの不自然さをも含む細部が無に帰されるラストであった。『関心領域』を純粋にとても高く評価する。
以上。
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