20年間消息不明だった謎の男が、夢を失くした若者たちとともに腐った大人に立ち向かっていく姿を描く連続ドラマ『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。桐谷健太演じる主人公・赤山と20年ぶりに再会し、バディとして、教え子探しや復讐計画に協力していく樋口ゆかりを、長濱ねるが演じている。現実と向き合いながらもどこか夢を捨てきれないゆかりを、長濱はどのように捉え、どう演じているのか。俳優としての変化と現在地についても話を聞いた。
「小さい頃は空港のグランドスタッフになりたかった」
ーー“児童養護施設の熱血職員と元教え子たち”という設定が、今までにあまり見たことがなく新鮮です。
長濱ねる(以下、長濱):私もそう思いました。“熱血教師と生徒たち”という組み合わせのドラマはこれまでたくさん観てきましたし、私自身も大好きなジャンルなのですが、30歳になった元教え子たちに、あえて“暑苦しい大人”が関わってくるという設定はすごく新鮮でした。『いつか、ヒーロー』というタイトルにも表れているように、「自分の人生にもこういう人がいたらいいのに」と思えるような物語だと感じました。
ーー長濱さんが演じているゆかりは、小さい頃は「海外で活躍する通訳」になることを夢見ていたけれど、現在は介護職に就いているという設定です。そんなゆかりをどんな人物だと捉えていますか?
長濱:彼女が置かれている境遇というよりも、「ちゃんとしなきゃ」「いい子でいなきゃ」と思ってしまうところにすごく共感しました。理想の自分を保ち続けることができないからこそ、ゆかりが壊れていく瞬間や感情のほころびも、大切に演じたいと思っています。
ーーゆかりを含め、赤山の元教え子たちは、“かつて思い描いていた将来像”とは違う生活を送っています。
長濱:私自身も、今の活動は小さい頃に思い描いていた夢とは全く違います。小さい頃は空港のグランドスタッフになりたかったし、小学校の卒業文集には「ヤクルト工場で働きたい」と書いていました(笑)。「今の自分に満足できていない」とか、「社会に対する不満や怒り」を持ちながら、「自分のせいかもしれない」と思う情けなさややるせなさって、きっと多くの人が感じたことがあると思います。そのような感情を丁寧に表現していきたいです。
ーー今回、役作りで児童養護施設についてもご自身で調べられたそうですね。
長濱:はい。本を読んだり調べたりしていて、とくに印象的だったのは「どれだけ辛い経験をしても、血のつながった親への希望は捨てきれない」ということでした。外から見ると“血のつながりなんて関係ない”と言えますが、やっぱり何かにすがっていたい気持ちは簡単には消えないんだなと。だからこそ、ゆかりが30歳になっても引きずっている価値観やトラウマがあるというのは、特別なことではなく、誰にでもあることだと思います。
ーーゆかりは長濱さんがこれまで演じてきたような役柄とは少し違った印象を受けます。
長濱:そうですね。これまで明るいキャラクターや天真爛漫な役を演じることが多かったのですが、今回は“人には見せたくない姿”をさらけ出すような場面もあって。自分の中でどういう芝居になるのか、共演者の方とどう関係を築いていけるのか、楽しみであり不安でもあります。
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ーー長濱さんは欅坂46を卒業しソロ活動後初のドラマ出演となった『君と世界が終わる日に 特別編』(2022年/日本テレビ系)以降、出演作が途切れないほどのご活躍ぶりですよね。
長濱:ありがたいことに、少しずつですが経験を積ませていただきました。『君と世界が終わる日に 特別編』は、ちょうどアイドルを卒業してすぐで、右も左も分からない状態でした。でも、お芝居を始めて本当に良かったと思っています。たくさん挫折もありますが、「あ、自分ってこんなにできないんだ」と気づけたことで、いい意味で力が抜けたというか。無理に期待しなくなったのかもしれません。
ーーお芝居を好きだと思えるようになったのはいつ頃からですか?
長濱:実はここ1年くらいです。それまでは、「迷惑かけてないかな」という気持ちのほうが強かったのですが、例えば、涙を流すシーンで「台本に“泣く”とは書かれてないから、1回泣かないバージョンでも撮ってみましょう」と言われてやってみたら、そっちのほうが悲しく見えたり。そういった瞬間に「おもしろいな」と思えるようになりました。人間観察的なおもしろさや芝居の奥深さに少しずつ惹かれていきました。
ーー長濱さんは俳優業以外にもキャスターや文筆業、社会的な活動もされています。“誰かの役に立ちたい”という思いが伝わってくるのですが、やはりそういう思いは強いですか?
長濱:そうですね。“誰かのために”という思いがずっとあります。ただ、直接的な社会貢献活動だけではなく、ドラマや映画を通して「こんな社会問題があるんだな」と気づいてもらえたり、「人に優しくしよう」と思ってもらえるようなメッセージを伝えられるのが、エンターテインメントのすごいところだと思っています。だからこそ、お芝居と社会的な視点の両立は、これからも続けていきたい目標です。
■放送情報
『いつか、ヒーロー』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:15~放送
TVer、ABEMAにて、地上波放送終了後見逃し配信
U-NEXT、Prime Videoにて全話配信
出演:桐谷健太、宮世琉弥、長濱ねる、泉澤祐希、曽田陵介、星乃夢奈、でんでん、小関裕太、駒木根葵汰、板谷由夏、北村有起哉
脚本:林宏司
監督:アベラヒデノブ、星野和成、松本喜代美、松浦健志
チーフプロデューサー:南雄大(ABCテレビ)
プロデューサー:小森千裕(ABCテレビ)、比屋根り子(ABCテレビ)、松野千鶴子(アズバーズ)、増田玲介(アズバーズ)
主題歌:「HERO」石崎ひゅーい(EPIC Records Japan)
制作協力:アズバーズ
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/itsukahero/
公式X(旧Twitter):@abcdrama_hero
公式Instagram:@abcdrama_hero
フォーミュラライン:@ABC_DRAMA
編集部の感想:
長濱ねるさんの新しいドラマ「いつか、ヒーロー」は、社会問題に触れた新鮮な視点を提供しています。彼女が演じるキャラクターの成長を通じて、多くの人が抱える葛藤や希望を描く様子が印象的です。また、エンターテインメントを通じて社会にメッセージを伝えるという彼女の思いにも共感しました。
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