4月の市場混乱で売却に失敗した約60億ドル(約8600億円)相当の企業買収関連貸し付け債権について、ウォール街の銀行が投資家向け販売を再開する見通しだ。
いわゆる「ハングデット」と呼ばれる未処理の買収ファイナンスを保有する銀行は20行以上に上る。中でも、アポロ・グローバル・マネジメントによるゲーム・ギャンブル製品関連企業の買収を支援する43億ドルのジャンク債は注目を集めている。
同時に、銀行は新規のファイナンスも引き受けており、3Gキャピタルによるスケッチャーズの買収に向けた65億ドルの案件が進行中だ。
ハングデットを抱えた幾つかの金融機関は、早ければ5月26日のメモリアルデーの祝日以降に売却を図る可能性があると、事情に詳しい関係者が述べている。
4月に滞留した「ハングデット」、57億ドルに
取引内容 | 金額 | 買収完了日 |
---|---|---|
ABCによるTIフルイドの買収 | 22.3億ドル | 4月15日 |
ペーシェント・スクエアによるパターソン買収 | 23.5億ドル | 4月17日 |
HIGキャピタルによるカナダのコンバージ買収 | 11億ドル | 4月22日 |
ハングデットの中には、ペーシェント・スクエアによるパターソンの買収に伴う23億5000万ドルや、HIGキャピタルによるカナダのコンバージ・テクノロジー・ソリューションズ買収に関連した11億ドルのレバレッジドローンも含まれる。
これらの買収ファイナンスを主導したシティグループ、UBSグループ、JPモルガン・チェース、モントリオール銀行はコメントを控えている。企業側で唯一コメントしたコンバージは、買収完了を明らかにした。
一部のハングデットが市場に再登場し始めたが、長年M&A(企業の合併・買収)活況を待ち望んできたバンカーや投資家にとって望ましいとは言えない状況だ。銀行側はこれらの債権を割引価格で売却せざるを得ない可能性もあり、損失リスクを抱えている。

トランプ米大統領が4月2日に発表した新たな関税政策は、非投資適格企業の資金調達を一時的に完全に凍結状態となった。銀行にとっては、M&A関連の引き受け案件が少なかった分、バランスシート上の負担は限定的だった。
「この波は非常に特異だった」と、ゴールドマン・サックス・グループの米レバレッジドファイナンス責任者クリス・ボナー氏は語る。「通常は、銀行が短期的に市場投入を要する大量のリスク資産を抱え、投資家の現金が不足するという構図になる」という。
2022年には、急激な利上げにより信用市場が混乱、銀行は400億ドル超のハングデットを抱える事態に陥っていた。
ハングデット再発の懸念がある中でも、銀行は新規案件の引き受けを継続している。トランプ氏が一部の関税を緩和したこともあり、スケッチャーズ買収など幾つかの案件が動き出している。
バークレイズの米レバレッジドファイナンス責任者ジョン・スクローブ氏は「われわれは完全に営業再開している」と述べた。「22年は、音楽が止まったような状態だった」と振り返った。
原題:Banks Stuck With $6 Billion in Debt Ready to Lure Back Investors(抜粋)
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