ランドセルをはじめ上質なレザーアイテムで人気の「土屋鞄製造所」のグループが、ガラス器と工芸の専門店「TSUCHI-YA」の2号店を、東京・銀座にオープンさせた。
銀座から放たれる透明な熱
ガラスが繋ぐ、人と人のストーリー
2025年5月9日にオープンした「TSUCHI-YA 銀座店」。食のプロや道具にこだわる人々が集う東京・浅草かっぱ橋の1号店「TSUCHI-YA浅草合羽橋本店」が、日常使いの食器を中心に、ガラス工芸の最初の入口を広げてきたのに対し、銀座店は「日常で愉しむガラス工芸」をさらに深く、広く提案するステージだという。
銀座店では国内外のガラス作家20人以上による作品、グラスや花器、身に着けるアートともいえるアクセサリー、空間を彩るオブジェなど100点以上が並ぶ。それは、単なる「モノ」ではなく、インテリアやファッションとして、日々の暮らしのなかで飾ったり身につけて愉しめる幅広いガラス工芸の世界を提案する。
店舗面積は約9坪(29.07平米)と決して広くはないが、そこには陳列しきれないほどの作品が凝縮され、照明や展示方法にもこだわり、目利きのお客様にガラスの輝きと豊かな表現力を堪能できる空間を作り上げたという。
浅草店で生まれた「じっくりと選びたい」という声に応え、文化と情報の発信地である銀座を選んだ。そこには、モノとの出会いだけでなく、選ぶ時間そのもの、そしてその先にある豊かな暮らしへの想いが込められている。
ガラスに宿る、一期一会の輝き
TSUCHI-YAの店頭を彩るのは、たとえば神奈川の高橋禎彦氏による、普段使いしやすい透明感と温かみのある飴グレーのコップ。あるいは熊本の島田真平氏が手がける、見る人の心を弾ませる遊び心に満ちたグラスやウォールアート。東京の貴島雄太朗氏の「削紋」シリーズは、力強い削り出しの文様が、器に確かな存在感を与えている。
島田 真平©株式会社一創
貴島 雄太朗©株式会社一創
ほかにも、harunasugie氏のアクセサリー「SHIBOU series」は、「脂肪」という意外なモチーフを美しいガラスで表現し、弟子丸努氏の薩摩切子は、伝統的な技法の中に透明という新たな息吹を吹き込んでいる。その多様性と奥深さには、思わず息をのむ。
harunasugie©株式会社一創
江戸切子の伝統を受け継ぐ鍋谷聰氏の、繊細にして華やかなグラス。彼が率いる東亜硝子工芸の若き職人たちが生み出すロックグラスの斬新な表情。美大でグラフィックデザインを修めた松井文孝氏の色被せガラスは、まさに「光の彫刻」と呼ぶにふさわしい輝きだ。
鍋谷 聰©株式会社一創
松井 文孝©株式会社一創
伝統と革新が交差し、作り手一人ひとりの「個」が立ち上がる作品群。銀座店では、浅草店でも人気の三角軸ガラスペンや、フロストウォーターボトルといったオリジナル商品も展開。さらに、ガラス作家との新たなコラボレーションも予定されているというから、その進化から目が離せない。
フロストウォーターボトル©株式会社一創
手仕事の温もりを日常へ
「丁寧な暮らし」をデザインするということ
なぜ今、私たちはこれほどまでに「手仕事」に惹かれるのだろう。効率やスピードが優先される現代社会において、人の手によって丹念に生み出されたモノが持つ価値とは……。
TSUCHI-YAの母体である土屋鞄製造所は、1965年の創業以来、レザー製品を通して手仕事の価値を追求してきた。二代目社長・土屋成範氏の「『いいものを造る』だけでは届かない。お客様に伝える、伝わること」という言葉。これは、TSUCHI-YAの「つかい手も、つくり手も、豊かにする」というミッション、そして作り手と使い手を繋ぐ「つなぎ手」としての役割を力強く示している。
情報過多な時代だからこそ、私たちはモノの背景にあるストーリーや、作り手の想いに価値を見出すのかもしれない。ガラス作家でもあるスタッフが、来店客との会話の中から、その人の好みやライフスタイルを感じ取り、ゆっくりと作品選びに寄り添う。それは、単なる販売ではなく、共感と発見に満ちた「対話」だ。
ともすれば特別なものと捉えられがちな工芸品を、もっと身近な存在として、私たちの日常へと自然に導いてくれる。それは、物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさを求める現代の私たちにとって、まさに「丁寧な暮らし」をデザインするヒントに満ちている。
「Ready Made Craft」の哲学
モノとの新しい関係性を築く
TSUCHI-YAのオリジナル商品、フロストウォーターボトルに込められた「Ready Made Craft」というコンセプトは、日常で見慣れた既製品が、人の手仕事による一手間が加わることで量産品にはない魅力に生まれ変わるということを意味している。
これは、すでにあるモノの価値を見つめ直し、新たな命を吹き込むという、現代的な「アップサイクル」の精神や、長く愛せるモノを大切にする「スローライフ」の思想とも深く響き合う。
銀座という洗練された街で、TSUCHI-YAがこれから紡ぎ出すガラスの物語は、私たちの日常にどんな化学反応をもたらすのだろう。それは、ただ美しいモノを所有する喜びを超え、日々の生活にささやかな発見や心のゆとり、そして作り手との繋がりを感じさせてくれる「体験」となるに違いない。
©株式会社一創
『TSUCHI-YA 銀座店』
【営業時間】11:00~19:00
【住所】東京都中央区銀座3-13-6山陽銀座ビル1F
【一般問合】Tel. 03-6161-0962(11:00-19:00) Mail. [email protected]
【公式Instagram】銀座店、浅草合羽橋本店
Top image: © 株式会社一創
🧠 編集部の感想:
銀座にオープンした「TSUCHI-YA」の新店舗、手作りのガラス工芸品が豊富に揃い、日常生活を彩る魅力を感じます。職人たちの技術と情熱が詰まった作品を通じて、作り手と使い手の対話が生まれる空間は、心を豊かにしてくれそうです。工芸品が身近になることで、より丁寧な暮らしの実現に寄与することを期待しています。
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