金曜日, 5月 16, 2025
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貢献利益は固定費の回収に貢献する利益六角明雄(中小企業診断士・経営コンサルタント・ビジネス書作家)

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概要

この記事は、中小企業診断士である六角明雄が、限界利益と貢献利益の違いについて説明しています。限界利益は売上から変動費を引いた利益で、売上の変動に正比例するが、貢献利益は固定費の回収に寄与する利益であり、より広い概念です。著者は、理解しやすくするためにこれらの概念を具体的な例や説明を通じて掘り下げています。

要約(箇条書き)

  • 限界利益は売上から変動費を引いた利益で、売上高と正比例する。
  • 貢献利益は固定費の回収に寄与する利益を指し、限界利益よりも広い概念。
  • 限界利益は変動費のみに基づき算出され、新たな受注での利益判断に使用される。
  • 固定費や直接関係のない費用は、通常、売上高には影響を与えない。
  • 貢献利益と限界利益は、一般的に固定費を回収するという点で一致することが多い。
  • 貢献利益の概念は、スループット会計にも関連する。
  • 記事では、具体例を通じてこれらの概念を分かりやすく解説。

貢献利益は固定費の回収に貢献する利益六角明雄(中小企業診断士・経営コンサルタント・ビジネス書作家)

[要旨]

売上から変動費を引いた残りを限界利益と言いますが、これは、売上の端にある利益という意味で、売上高と正比例する関係にあります。一方、貢献利益は、何らかの費用の回収に貢献する利益を指し、限界利益よりも広い概念ですが、一般的に、貢献利益が回収すベき費用を固定費とすることが多いので、結果的に貢献利益と限界利益は一致します。

[本文]

今回も、前回に引き続き、公認会計士の金子智朗さんのご著書、「教養としての『会計』入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、原価を下回る価格での製品の追加受注があったとき、その価格が、直接材料費と直接労務費の合計額を上回っていれば、利益が得られることになるので、単に、製造間接費を加えた原価を下回っているというだけで受注を断ることは得策とはいえないということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、限界利益と貢献利益について述べておられます。「(限界利益とは)売上高から直接材料費という変動費だけを引いた利益です。(中略)限界利益の『限界』はわかりにくい日本語です。二ュアンスとしては『変動的、追加的』という意味を持たせた言葉です。重要なのは、その変動が『売上高の変化に対して正比例する』ということです。正比例とは売上高の変化に完全に追随するということです。売上高が10%増えれば、利益も10%増え、売上高が2倍になれば、この利益も2倍になるということです。

決算書に登場する利益はそうはいきません。営業利益も経常利益も当期純利益も、売上高の変化に対して正比例することは一般的にありません。なぜならば、どこかで知らないうちに固定費が引かれでいるからです。売上総利益だけは、業種によっては正比例するとみなせる場合もあります、少なくとも製造業ではやはりダメです。売上原価の元となる製造原価に相当程度の固定費が含まれているからです。

限界利益は変動費だけを引いた利益なので、売上高が2倍になれば変動費も2倍になり、その差額の限界利益も2倍になるのです。先ほとの追加受注のケースにおけるポイントは、その限界利益がプラスであることです。プラスということは、『やらないよりやったほうが、変動的、追加的な利益がプラス』ということです。だから、やらないよりもやったほうがいいという判断になるわけです。売上高から変動費だけを引いた利益は、貢献利益とも言います。(中略)

多くの書籍では、『売上高から変動費だけ引いた利益を限界利益または貢献利益と言う』というように、言い方として2種類あるだけのような書き方がされていますが、言葉が違う以上、概念が違います。貢献利益とは、『固定費の回収に貢献する利益』という意味です。(中略)ピザ屋の例で言えば、人を雇い店舗を偕りた以上、人件費と賃料は常に発生します。固定費は、寝ても覚めても遊んでいても、組織に常にドーンと横たわっています。

これを、ピザをつくって売るごとに、ピザ1枚の個別利益が回収してくれるというイメージです。ピザ1枚の利益とは、ピザの売価から材料費という変動費だけを引いた利益です。貢献利益の本来の意味に基づけば、『何らかの費用の回収に貢献する利益はすベて貢献利益』と言えます。したがって、貢献利益と限界利益は同じものではなく、貢献利益のほうが広い概念です。

一般的に、貢献利益が回収すベき費用を固定費とすることが多いので、結果的に貢献利益と限界利益が一致することが多いだけです。追加受注のケースを貢献利益で考えると、新たに表れたお客様の貢献利益がプラスということは、その利幅が小さかったとしても、やらないよりやったほうが固定費の回収に間違いなく新たに貢献します。ですから、やらないよりやったほうがいいという判断になるわけです」(294ページ)

私もそうなのですが、「限界」という言葉からは、多くの方は「Limit」の意味を思い浮かべると思います。しかし、限界利益は、英語では、Marginal Profitといいます。Marginalとは、Marginの形容詞形ですが、Marginは、「マージンをもらう」などで使われるマージンのことです。このマージンは、もともとは端や縁という意味なので、Marginal Profitは、売上の端の方にある利益という意味のようです。

本旨からそれますが、金子さんも限界利益は分かりにくいと述べと述べておられる訳ですから、Marginal Profitを「周辺利益」と訳した方が、少しはわかりやすくなったかもしれません。話を戻すと、金子さんのいう貢献利益は、恐らく、スループット会計のスループットを指していると思います。ただ、スループット会計を採用している会社はかなり限られているので、多くの場合、限界利益と貢献利益は同じと考えて問題ないと思います。

しかし、少しややこしいのは、売上と変動費の差以外の意味で使われることがあるということです。それは、売上から変動費と部門固定費を引いた残りを貢献利益ということもあるということです。例えば、X社で、製品Aと製品Bを製造しているとき、製品Aに関する広告宣伝費や販売手数料は製品A製造部門の部門固定費です。

ちなみに、X社の本社部門の従業員の給与や、事務所の減価償却費などは、他の部門との共通固定費です。この意味での貢献利益は、部門ごとの採算などを把握するときに使われます。ここまでの説明は、少し細かいことが続きましたが、限界利益については、「売上から変動費を差し引いたもの」と覚えていただければよいと思います。では、限界利益はどのように活用するのかというと、これについては、次回、説明する予定です。

2025/5/14 No.3073



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