水曜日, 5月 14, 2025
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計量単位の歴史は科学技術の進歩の歴史~産総研、重要文化財「メートル原器」とキログラム原器」を同時公開 – PC Watch


 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は2025年5月12日、「メートル条約締結150周年」メディアセミナー&見学会を実施した。メートル条約締結からちょうど150周年にあたる今年の世界計量記念日(5月20日)に先立って実施された見学会で、メートル条約に関連する重要文化財「メートル原器」、「キログラム原器」が公開された。

 国家計量標準、すなわち日本における長さや質量の基準となる装置や機器であり、2つが同時に公開されたのは今回が初めて。特にキログラム原器は、定義改定によって定義そのものではなくなった現在も、日本で最も正確な分銅として用いられており、少しの塵の付着も許されないため、一般には公開されていない。

 産総研の産総研 計量標準総合センター 総合センター長の臼田孝氏は「今年は計量標準150年目の年。世界の関係者が計量の重要性を改めて認識してもらうために取り組んでいる。原器は意思疎通するためのツールであり共通言語。その象徴がメートル原器でありキログラム原器。それを150年維持している関係者がいることを知ってもらいたい」と述べた。

メートル原器

メートル条約とは?

産総研 計量標準総合センター 計量標準普及センター 国際計量室 室長 森岡健浩氏

 まず産総研 計量標準総合センター 計量標準普及センター 国際計量室 室長の森岡健浩氏から、産総研計量標準総合センターとメートル条約の概要、フランスで開催されるメートル条約締結150周年記念式典について解説が行なわれた。

 国や地域によって異なる単位が使われていると、何かと不便だ。また、恣意的に計量単位が変更されたら困ったことになる。そこで単位を統一しようという考え方が生まれた。

 「メートル条約」は計量単位をメートル法に統一して普及することを目的に1875年に締結された。質量と長さを測る単位を統一するこの条約の当初加盟数は17カ国だったが、現在の加盟国数は64カ国、準加盟国は37カ国。日本は1885年から加盟している。

 メートル条約のもとで国際的に中立な機関として国際度量衡局が設置されており、単位の名称や定義、その実現方法を定めている。各専門分野ごとに諮問委員会も設置されている。委員会の下には分科会も設置されており、各国固有ニーズも議論に反映されるようになっている。

国際的に中立機関が設置され、計測の同等性を国際的に相互承認している

 メートルの定義は現在は人間が作った原器に依存しない形になっている。森岡氏は「国際単位系の歴史は科学技術の進歩の歴史でもある」と語った。

国際単位系の歴史は科学技術の進歩の歴史

 測定精度もどんどん向上している。その結果、それまで問題なかった小さな差も問題になるようになった。「自分の国でもう一度測りなおせ」といった話になる。そこで生まれた仕組みが「国際相互承認(CIPM-MRA)」である。CIPM-MRAが認められている国の間では、ほかの国の校正/試験データを自国でも受け入れる。これによって国際取引がスムーズになる。

国際相互承認の仕組み

 日本ではメートル条約と時を同じくして、尺貫法から度量衡単位の統一に取り組んできた。尺貫と国際単位の関係付けを初期から行ない、1921年には尺貫法を廃止。1959年には完全にメートル法に完全に移行した。計量法による波及効果は広く、日本では計量標準総合センターが普遍的なシステム構築に向けて努力を続けてきた。森岡氏は「今後も継続して、より普遍的なものに進んでいくことが重要」と語った。

日本国内でのメートル法移行への歴史

「メートル条約はもっとも成功した国際条約」 世界計量記念日とは

産総研 計量標準総合センター 総合センター長 臼田孝氏。国際度量衡委員会 幹事。

 国際度量衡委員会 幹事で、産総研 計量標準総合センター 総合センター長 臼田孝氏は世界計量記念日について紹介した。1999年、メートル条約の理事会に相当する国際度量衡委員会が毎年5月20日を世界計量記念日とすることを提唱した。その翌年から啓発に用いている。2023年にはユネスコの国際記念日に登録された。「科学と教育を通じてより良い世界を築く」というユネコスの理念とも合うということで採択された。

5月20日にはユネスコ本部で記念式典、講演などが開催予定

 5月20日にはユネスコ本部で記念式典が行なわれる。計量学が直面する課題に関する講演などが行なわれる。オンライン配信も行なわれ、現在も参加登録は可能。公式サイトはこちら

 21日、22日にはベルサイユ国際会議場で、科学にウェイトをおいた講演会も行なわれる。量子時代、地球環境、デジタル技術、ライフサイエンスなどと計量学の関係が議論される予定だ。こちらも参加登録が可能。後日youtubeで配信される予定で、地球時間と、時間が早く進む月時間との同期を取る問題なども議論されるという。

ベルサイユ国際会議場でも講演会が行なわれる予定

 臼田氏は「メートル条約はもっとも成功した国際条約。水や空気のように使われている単位/計量の重要性や存在意義を認知してほしい」と語った。人間活動が広がり、世界秩序が変化するなか、メートル条約の今後のあり方についても議論が行なわれる予定だ。





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🧠 編集部の感想:
計量単位の歴史が科学技術の進歩に深く結びついていることを再認識させられる貴重な公開イベントです。メートル原器とキログラム原器が同時に公開される意義は、計量の標準化が国際的な協力の象徴であることを強調しています。これを機に、計量の重要性やその裏にある長い歴史を多くの人が知ることができると良いですね。

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