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視覚障害者向け歩行支援アプリ「Eye Navi」が、大阪の万博記念公園での移動を楽しむためのオリジナルマップを4月25日から提供開始します。このマップは、視覚障害者が安全に公園内を巡るためのルートを提供し、AIを活用して道案内や障害物検出を行います。
要約の箇条書き
- アプリ名: 視覚障害者歩行支援アプリ「Eye Navi」
- 提供開始日: 2025年4月25日
- 目的: 視覚障害者が万博記念公園内を楽しめるようサポートするオリジナルマップを作成
- マップ制作のきっかけ: 「ロハスフェスタ」での実証実験を通しての発展
- 課題: イベントごとに店舗位置が変わることやGPS精度の限界
- ルート作成: 7つの安全な歩行ルートを提供
- 参加者の声: 視覚障害者が「以前訪れた場所に一人で行ける可能性がある」と期待
- 評価と展開: JTBに評価され、他の公園への導入も検討中
- 目指す未来: より多くの公園や公共施設での視覚障害者の行動範囲を広げることを希望
みなさん、こんにちは!視覚障がい者歩行支援アプリ「Eye Navi」編集部です。Eye Naviは視覚障がい者の方々の行動範囲を広げ、より自由な移動をサポートするために、さまざまな場所での活用を進めています。
今回は、大阪の万博記念公園と協力して制作した、公園内を巡るためのオリジナルマップについてご紹介します。こちらのマップは2025年4月から提供スタート!
マップができた経緯や、そこに込めたEye Naviの想いについてこの記事をきっかけに知っていただけると嬉しいです。
マップ制作のきっかけは、万博記念公園で開催された「ロハスフェスタ」での実証実験
万博記念公園でのEye Naviオリジナルマップ制作は、2023年夏ごろにスタートしました。きっかけは、Eye NaviとJTBとの連携が実現し、万博記念公園で開催される「ロハスフェスタ」に参加させていただいたこと。
ロハスフェスタは「一人ひとりの生活スタイルが地球の未来を変えていく」というコンセプトで、ハンドメイド作品を販売する数百もの店舗が並ぶ大規模なイベントです。
ロハスフェスタとEye Naviの親和性に着目し、「視覚障害のある方でもイベントを楽しんでほしい」という想いを持ったJTBから声をかけていただきました。
「Eye Navi障がいの有無にかかわらず多様な方々が新たな場所へチャレンジできる安心感を提供すること」や「会場でさまざまな人々が交流することでロハスフェスタをより豊かな場所にすること」などを共通のビジョンとして、Eye Naviを活用した会場案内の実証実験を実施しました。
Eye Naviでは、最寄り駅2か所から会場までの案内ルートや、会場内のブースからトイレまでの案内など、点字ブロックが少ない環境でもAIナビで歩行をサポートするシステムを構築。多くの視覚障がい者の方々に実際に体験していただきました。
大規模イベントの会場案内には課題が山積み。しかし、誰もが楽しめる公園づくりへの想いから新たな発展へ
こうして始まったロハスフェスタでの実証実験は好評だったものの、イベント開催のたびに店舗の位置が変わることや、現在のGPSの精度だけでは細かな案内が難しいことなど、イベント会場内の案内にはまだまだ課題があることがわかりました。
しかし、視覚障がい者がイベント会場に行くハードルをぐっと下げることができたロハスフェスタの取り組みをJTBには高く評価していただくことができました。「今回のプロジェクトで終わりにせず、そもそもの公園全体に活用できるナビルートを作りませんか」
JTBさんからそんな提案をいただき、2024年4月から新たなプロジェクトとして「Eye Navi 万博記念公園オリジナルマップ」の制作がスタートすることになったのです。
JTBでは過去にも万博記念公園内で利用できるアプリ開発など観光促進のための取り組みを行ってきましたが、時代を反映した新たな取り組みとして、視覚障がい者のためのバリアを下げる今回のプロジェクトが始まりました。
点字ブロックがほとんどない万博記念公園で、視覚障がい者が単独歩行をできるよう実証実験を開始
万博記念公園は、1970年の大阪万博のために整備された公園です。50年前に作られた公園であるため、点字ブロックはほんの一部にしか敷設されていないことが課題として挙げられていました。
一方で、公園全域に点字ブロックを新しく敷設するには莫大な予算がかかってしまうため、設備の実装に取り組むには限界があったそう。そんななか、公園の運営と視覚障がい者へのサポートを両立できるEye Naviのオリジナルマップ制作は、万博記念公園にとってぴったりの取り組みだったわけです。
今回、万博記念公園の抱える課題を解決するため、私たちは公園内を歩いて回れる7つのルートを作成しました。
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モノレールの駅から公園の入口まで
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公園の入口から国立民俗学博物館の入口まで
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博物館の入口から日本庭園の入口まで
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日本庭園内のルート
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日本庭園から戻ってEXPO70パビリオンまで
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パビリオンから中央口入口まで
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メインの入口から太陽の塔まで
それぞれのルートでは、公園全域を安全に回りながら、各ポイントで観光情報や右左折のタイミング、施設情報なども含めて案内できるよう、丁寧に作り込みを行いました。
視覚障害当事者と歩行訓練士がともに作り上げたオリジナルマップ
このオリジナルマップの制作過程で大切にしていたのは、視覚障がい者の当事者と歩行訓練士の双方に参加してもらい、実際に歩きながらチェックを重ねたことです。
視覚障害当事者の方だけに参加してもらうテストでは、制作したマップに対して「良いか悪いか」を評価してもらうだけの一方向的なフィードバックになってしまいます。
そこに歩行訓練士の視点が加わることで、視覚障害のある方に歩行訓練として歩き方を指導する立場から、専門的なアドバイスをもらえると考えました。
例えば、当初は公園内にある石畳が敷かれた広い歩道の中央を歩くルートを想定していましたが、実際にテストをしてみると歩道には目印がなく、まっすぐ歩くのが難しいことが判明。歩行訓練士のアドバイスで、車道と歩道の間にある小さな段差に沿って歩くルートに変更しました。段差に沿って歩くルートは、車道に近い位置で歩行することになり、開発側から見ると危険性が高いように感じていました。しかし、視覚障がい者にとっては、この段差が重要な手掛かりになり、より安心して歩行できることがわかったのです。また、公園内の庭園を回るルートでは川にかかった橋を歩くポイントがありましたが、橋には手すりがなく下手をすると落下の危険があるため、あえて迂回ルートを設けるなど、安全性を最優先した工夫も随所に行いました。
さらに各ポイントでは、「高さ3.5mの2段落ちの滝を中心に…」といった景観の説明や歴史情報も音声で提供。見える人なら看板や石碑で読むことができる情報も、音声でお知らせすることで、視覚障害があっても景観を楽しめるよう配慮しています。
「また1人で公園を楽しめる可能性」に胸躍る当事者の声
実際にテストに参加した視覚障がい者の方からは、「小さいころ、まだ見えていたときに遊びに来たことがあった万博記念公園に、今度は1人で行ける可能性があるということはすごくわくわくします」という声をいただきました。
約9ヶ月の企画・開発期間を経て完成した今回のマップ。2025年4月25日からは、Eye Naviを持っている方なら、誰でも無料で利用可能に。Eye Naviアプリを最新版にアップデートして、道案内ボタンを選択すると、リストの中に「万博記念公園ナビ」という項目が表示されます。
また、JTBには今回の取り組みを高く評価していただき、JTBが管理する他の公園施設への横展開も視野に入れています。
まだまだ視覚障がい者向けの整備がなされていない公園がたくさんあるなか、私たちEye Naviもより多くの公園にマップを導入したいと考えています。
より多くの公園や公共施設で視覚障がい者の行動範囲を広げたい
視覚障がい者にとって、点字ブロックのない公園を1人で歩くことは難しいものです。しかし、Eye Naviのようなテクノロジーを活用することで、ハード面の整備がなくても、安全に楽しく公園を巡ることができるようになります。
今回行った万博記念公園での取り組みは、視覚障がい者の行動範囲を広げ、新たな体験を提供する可能性を広げる第一歩となりました。
「Eye Navi 万博記念公園オリジナルマップ」をきっかけに、今まで訪れにくかったという視覚障がいのある方も、ぜひ一度万博記念公園に足を運んでみていただけると嬉しいです。
Eye Naviは今後も、視覚障がい者の皆さんの行動範囲を広げ、より自由な移動をサポートしていきます!
(取材・執筆 目次ほたる (@kosyo0821))
視覚障がい者歩行支援アプリ「Eye Navi」について
Eye Naviは、スマートフォンひとつで、道案内と障害物検出、歩行レコーダー機能を備えた歩行支援アプリです。
2023年4月にリリースされ、リリース開始から4ヶ月ほどで1万ダウンロードを突破しました。
Eye Naviの特徴は、AIを活用した「障害物・目標物検出」と、視覚障がい者に寄り添った「道案内」が組み合わさっていること。
この2つを実現することで、目的地までの方向や経路、周辺施設、進路上の障害物、歩行者信号の色、点字ブロック等を音声でお知らせできるアプリになっています。
Eye Navi公式ページ
アプリのダウンロードはこちらから
株式会社コンピュータサイエンス研究所 ホームページ
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