「こんな終わり方を望んでいたわけではなく」
栄枯盛衰が激しい芸能界のなかでも、とくに波乱万丈だったのではないでしょうか。
5月15日、自身のSNSで突如引退発表をした西内まりやさん。
《この度西内まりやは芸能界を引退することとなりました。》と引退宣言から始まったその文面には、《決してこんな終わり方を望んでいたわけではなく寂しいですが、本当に感謝しています。》といった言葉もあり、引退がポジティブな理由ではないことが伺えます。
――さて、モデル、俳優、歌手といった肩書きを持っていた「芸能人・西内まりや」とはなんだったのか?
福岡県出身の1993年12月24日生まれで、13歳だった2007年にティーン向けファッション誌でモデルデビューした西内さん。翌2008年にはドラマ出演で俳優デビューも果たしていますが、彼女が夢見ていたのは歌手としてスターダムにのし上がること。
モデルや俳優としての需要が高かったことと、自身が重視したいのは歌手活動だったことの齟齬が、彼女の芸能人生の歯車を狂わせる一因だったようです。
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歌手デビューまでは順調すぎるほど順調だった
ローティーン向けファッション雑誌「ニコラ」、その後にハイティーン向けファッション誌「Seventeen」の専属モデルをそれぞれ務めていた西内さん。
モデルとしてティーンのカリスマとなっていた彼女が、幅広い世代に認知されるようになったのは、2013年の19歳のときにgooランキングが発表した「10代の女の子がなりたい顔」1位に選ばれ、テレビなどへの露出が増えた頃からでしょう。
10代女子から「なりたい顔」と憧れられることは、モデルとしてひとつの頂点に立ったと言っても過言ではありません。
また、「なりたい顔」1位に選ばれる少し前には、23時台の連ドラ『山田くんと7人の魔女』(フジテレビ系)に主演しており、俳優としても引っ張りだことなっていたのです。
そして彼女にとって待望だった歌手デビューは2014年に実現します。
2014年8月にファーストシングル「LOVE EVOLUTION」をリリース。なんとその年の「日本レコード大賞」最優秀新人賞と「日本有線大賞」新人賞を受賞し、歌手として上々の船出をしたのでした。「レコ大」の授賞式に登壇した西内さんは、「獲ったよ、お母さん!」と歓喜の涙を流したほど。
とにもかくにも、モデルとして「10代の女の子がなりたい顔」1位に輝き、俳優として数々のドラマに出演して主役にも抜擢され、歌手としてデビュー早々に新人賞を獲得するという、ここまでは絵に描いたような順風満帆な芸能人生だったわけです。
狂いはじめた歯車
モデルや俳優の仕事をないがしろにするつもりはなかったでしょうが、おそらく歌手デビューを果したことで、西内さんとしては歌手を主軸とした活動にスライドさせていきたかったはず。
しかし、ここから歯車が狂い始めるのです。
もともと歌手志望だっただけあり、彼女の歌唱力は高く、素晴らしい歌声でした。とは言えヒット曲を連発できるかは別問題。セカンドシングル以降の世間の注目度は下降線をたどっていきます。
忌憚なく語るなら、ファーストシングルはモデル・俳優としてブレイクしていたタレントの歌手デビューということで脚光を浴びたわけですが、そのフェーズで「歌手・西内まりや」のファンをあまり獲得できなかったのが原因でしょう。
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こうして歌手活動を主軸にしていくことができなくなっていくわけですが、俳優としての需要はまだ高く、2015年にはGP(ゴールデン・プライム)帯の連ドラ『ホテルコンシェルジュ』(TBS系)に主演していました。
ですが俳優としてのキャリアにも味噌を付ける事態が発生。
2017年にGP帯の月9ドラマ『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)に主演するのですが、その当時の月9史上ワースト視聴率を記録してしまいます。それだけでなく、このドラマは“月9の恋愛ドラマにトドメを刺した作品”にもなってしまったのです。
フジテレビの月9と言えば、1991年の『東京ラブストーリー』、1996年の『ロングバケーション』、2000年の『やまとなでしこ』などを生み出しており、恋愛ドラマのイメージが非常に強かったドラマ枠。
けれど2010年代中頃の月9は視聴率低迷にあえいでおり、特に恋愛ドラマだと視聴率が取れないという傾向があったのです。そこに来て『突然ですが、明日結婚します』がワースト視聴率を叩き出してしまったため、この作品を最後に6年以上も月9では一切恋愛ドラマが作られなくなってしまうのです。
それ以前から月9は視聴率で大苦戦しており、『突然ですが、明日結婚します』の酷評は主にストーリーに対してだったため、決して彼女だけの責任ではないのですが、結果として「俳優・西内まりや」評が下落してしまったのでした。
衝撃のビンタ事件から約半年後に事務所退所
栄華を極めていた芸能人生の転落は、ここからさらに加速していきます。
『突然ですが、明日結婚します』終了後、西内さんはあまり表舞台には出て来なくなるのですが、2017年10月に久しぶりに彼女の名前が世間を賑わせたのは、ショッキングな出来事でした。
それは西内さんが所属する芸能事務所内で、事務所関連会社社長の顔面にビンタを食らわせたという暴行報道。詳細は定かではないものの、西内さんがなんらかの不満を募らせていたことがきっかけだったようです。
ビンタ事件から約半年後となる2018年3月、西内さんは事務所を退所。個人事務所を設立して芸能活動をリスタートしますが、そこからは第一線での活躍からは遠のいていきます。
退所後の活動では、2021年配信のNetflixオリジナルドラマ『全裸監督 シーズン2』への出演で久しぶりに話題を集めましたが、多くのメディアで取り上げられた作品はそれぐらい。2023年には音楽劇で舞台に初挑戦するといった活動もしていますが、地上波ドラマでばんばん主演していた往時と比べると、注目度は雲泥の差と言わざるをえませんでした。
頂点もどん底も……数奇な運命をたどった芸能人
そして社長ビンタ報道以後、彼女の名前が週刊誌やネットニュースの活字で躍るのは、芸能活動に関する話題ではなく、プライベートに関する報道が目立つようになっていくのです。
2019年には母親が5000万円の投資詐欺に遭ってしまったという報道があり、昨夏には17歳年上の実業家との交際宣言をしたものの、約2ヵ月でスピード破局したことが報じられていました。
実は年上実業家というのが、深田恭子さんと長年交際していたことでも知られた著名人だったこともあり、“深キョンの元彼と付き合って即破局”というセンセーショナルさで、余計に注目が集まってしまったのは不運だったかもしれません。
そして今回の突然の引退劇。
SNSで発表した文面には、理由について次のように綴られていました。
《理由について詳細は控えさせて頂きますが、今年になって身内があるトラブルを起こしている事が発覚し、その件に私自身は関与してはいないものの、場合によっては大きな問題になり関係各所にご迷惑が及ぶ可能性があると考え、活動を自粛していました。》
「週刊文春」のスクープによれば、西内さんの実姉が1億5000万円にも及ぶ金銭トラブルを起こしていたことが原因だとされており、物議を醸しているのです。
――モデルとしては「10代の女の子がなりたい顔」1位に選ばれ、俳優としては月9などのGP帯ドラマに主演し、歌手としては「レコ大」最優秀新人賞を受賞と、一時期は芸能界の最高峰にまで登り詰めていた西内さん。
しかし、歌手活動や俳優活動の失速で歯車が狂い、その後は自身や家族のスキャンダルが続発してしまい、迎えた突然の引退発表。
「芸能人・西内まりや」は頂点もどん底も味わった数奇な運命をたどった存在だった、そう言えるのではないでしょうか。
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