『自らの蝋人形館を火事で失った職人は精神に異常を来し、夜な夜な人間を殺して精巧な蝋人形を作っていた!!』
という、人間を蝋人形にするために殺人を繰り返す狂気の職人を描いた古典のスリラーホラーです。
今作は1953年とかなり昔の作品なので緻密な心理描写や登場人物のバックボーンなどの掘り下げはほとんどありません。なもんである程度ストーリーもしっかりまとめつつ、その中でシンプルに恐怖やショッキングなシーンをたくさん見せようと作っているTHE•娯楽映画です。
主人公のジャロッドと第一犠牲者バーク(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
なんですけどもこれが以外と面白く、オチや先の展開も読めるっちゃ読めるんですけど、舞台セットや衣装にもかなりこだわっているため、どこを切り取っても絵として十分に楽しめます。
また、分かりやすい音楽的な演出(今でいうところのジャンプスケア)で「ここが驚くところですよ!怖いところですよ!」と教えてくれるのもなんだか時代を感じます。今見たらそこまで怖くはないのでホラー映画が苦手な方でも楽しめると思います。映画として普通に面白かったです。
ヒロインのスー(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
しかも凄いのが今作は70年以上前の作品にも関わらず、なんと偏光フィルターのメガネ(いわゆる3Dメガネ)をかけて見る3Dの立体映画として公開されており、この頃の3D映画において最大のヒット作となったそうです。
配信では当然2Dなのでどんな感じかなのかは定かではありませんが、ちょっと見てみたいですよね。
そんな今作は時代が時代なだけに衣装も非常にオシャレですし、消防や警察は馬車だったり、呼び込みのおじさんがバンバンボールを巧みに操っていたりと今では見られない貴重なシーンがたくさんあります。
そのため2014年に『文化的・歴史的・芸術的にきわめて高い価値を持つ』とみなされ、アメリカ国立フィルム登録簿に登録されたそうです。昔の映像が好きな方には堪らないと思います。
蝋人形の館に来た御婦人たち(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
消防の馬車
馬の躍動感とか蒸気が堪りませんね!(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
なお今作はチャールズ・ベルデン作の未公開の三人芝居用の戯曲「The Wax Works」を基にしており、1930年にベルデン氏が映画用脚本を書き始めた後にワーナー・ブラザースが脚本を買い取ったことで1933年に一度目の映画化。※邦題は同じく「肉の蝋人形」ですが原題は「Mystery of the Wax Museum」です。
そして20年の時を経て2度目の映画化として今作が公開されました。前作はミステリー要素強めだったそうですが今作はスリラーや恐怖を売りにすることでしっかりと差別化に成功しています。ちなみにこちらの原題は「House of Wax」です。
バンバンボールおじさん(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
また3度目の映画化として2005年に「蝋人形の館」(原題はHouse of Wax)が公開されておりますが、ストーリーは前作までとは大きく異なり、よくある『若者がヤバいところに迷い込んじゃった』系のお話になっております。
ストーリーは全然違いますがこちらの2005年版も相当面白いです!NetflixとU-NEXTにて配信中です。余談ですが何かとお騒がせなパリス・ヒルトン氏がお色気キャラ役で出演していらっしゃいます。
そして!
そんな今作で監督を務めたアンドレ・ド・トス氏はハンガリー出身の映画監督で主に50〜60年代に御活躍されていらっしゃいました。
めちゃめちゃかっこいいですね!
(アンドレ・ド・トスWikipediaより引用)
ちなみに2002年まで御存命であり、89歳とかなり長命でした。生涯に7回結婚しており、計19人の子供がいるそうです。お元気ですね。
余談ですが、今作の主人公である狂気の蝋人形師ジャロッドの弟子イゴールがやたら顔が濃いなと思っていたらそれもそのはず!
まだブレイクする前のチャールズ・ブロンソン氏でした。
この左の方です。濃すぎますよね笑(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
当時はまだ本名のチャールズ•ブチンスキーという名前で活動しており、ほぼほぼ無名の存在でしたが、今作からおよそ7年後の1960年には「荒野の七人」で世界的な俳優の仲間入りを果たしました。
余談の余談ですが、この頃ハリウッドでは冷戦の影響から赤狩り旋風が巻き起こっていたそうです。そのため当時共産主義圏だった東欧風の響きのあるブチンスキーという名前を避けなければならず、チャールズ・ブロンソンと相成ったわけです。
現在U-NEXTにて配信中です。90分弱でしっかりまとまってますし、娯楽映画として十分に楽しめました。古めの映画がお好きな方にはオススメです!
Amazon.co.jpより引用
◇蝋人形の製作に情熱をかけるジャロッドは金や名声には目もくれず、ただひたすらに技術を磨いていた。しかし彼が細々と営んでいる蝋人形館の出資者であるバークはついに痺れを切らし、多額の保険金を狙ってなんと館に火を放った。ジャロッドは焼け死んだと思われ、目論見通りバークは保険金をせしめた。しかし実は生きていたジャロッドは大切な蝋人形を全て失ったショックから精神に異常を来し、夜な夜な殺人を犯してはその死体を蝋で固めて蝋人形にしていた。そして彼が一番大切にしていたマリー・アントワネットの蝋人形にそっくりな美女を見つけ、今度はその美女に狙いを定めるのだった…
というのが今作の細かめのあらすじです。
主人公のジャロッド
演じるのは怪奇スターの一人であるヴィンセント・プライス氏です。(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
蝋人形の製作に情熱をかけるジャロッドは今日もただひたすらに人形作りに精を出していた。
まるで生きているかのような彼の蝋人形は大変評判が良かったが、彼自身が富や名声にむとんちゃくということもあり、細々と営んでいる蝋人形館も客足はいまいちだった。
彼の蝋人形館の出資者であるバークはもっと過激なものでも作れとネチネチ嫌味を言うが、その日訪ねて来た高名な美術評論家のウォーレスもジャロッドの作品を気に入り、反応も上々。もしかしたら彼からも出資してもらえるかもです。
金にがめつい嫌味なバーク(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
しかしウォーレスが帰宅後、ついにしびれを切らしたバークはあろうことか保険金目当てに館や蝋人形に次々と火を放ち、ジャロッド必死の抵抗も虚しく、館はたちまち炎に包まれた。
ジャロッドは遺体こそ発見されていませんがおそらくは焼け死んだと断定。
バークは目論見通り多額の保険金をせしめて、若くて美しい女性をはべらせながら「惜しいやつを無くした」や「助けられなかった」等とのたまっている。
キャシーを必死に口説くバーク(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
浮かれ気分で帰宅したバークは顔に大火傷を負った男に襲われ死亡。さらには首をロープで括られた状態で突き落とされ、首つり自殺に見せかけられた。
一体この男は何者なのか…
数日後、バークに口説かれていたキャシーは悲しむ様子も見せず、すぐ別の男に乗り換えていた。同じ下宿先の親友スーに手伝ってもらいながら今夜もデートへと向かいます。
しかしその日の深夜、スーがキャシーの部屋を訪ねると彼女はなんと冷たくなって死んでいた。呆然としている彼女の背後にはあの火傷男が佇んでいた…
笑い方のクセがすごいキャシー(左)と心優しいスー(右)(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
火傷男を目撃したスーは驚きのあまり絶叫。慌てて外へと逃げ出す。火傷男は必死に彼女の後を追います。
スーはどうにか近くの実家まで逃げ果せ、下宿先の大家もすぐに警察を呼んだため、それ以上の被害はありませんでした。
検死の結果キャシーは絞殺。遺体安置室へ送られますが、なんとあの火傷男は安置室に侵入し、子分二人に手伝わせながらキャシーの遺体をどこかへと持ち帰ってしまいます。
死体のフリをして遺体安置室に忍び込む火傷男(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
ある日、美術評論家のウォーレスのもとになんとジャロッドから手紙が届きます。
指定された工房には身体は不自由ながら弟子二人を抱え、また蝋人形作りに勤しむジャロッドがいました。彼は手や足に後遺症はあるものの、どうにかあの火事から生還していたのです。
ということはあの火傷男は誰なのでしょうか…
また新しい蝋人形館を開き、今度は電気椅子で処刑されている人や犯罪者の蝋人形を飾ったりと、恐怖やショックを売りにして客をたくさん呼びますよと以前とはまったく違うことを口にするジャロッド。
貧しくも人形作りに打ち込む彼の姿はそこにはありませんでした…
車椅子のジャロッドとウォーレス
ジャロッドは出資を頼むために手紙を送っていたようです。(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
あなたらしくないなと少々引き気味のウォーレスをよそに、ジャロッドは彼を地下へと案内します。
そこでは大量の蝋を人形に一気にかけるという新しい手法で人形を製作しており、新作の首つり自殺人形も見せてくれます。
それはバークに似ているというかバークそのものに見えますが気のせいでしょうか…
犯人が捕まらないのでスーも怯えっぱなしです。(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
ウォーレスからの出資を受けて新たなジャロッドの蝋人形館が大々的にオープン。
今まで通りの普通の蝋人形もありますが、本物のギロチンで首を刎ねられる蝋人形や電気椅子などの拷問を受けている蝋人形を売りにしているようです。
そしてその一角には首を吊って死んでいるバークの人形も飾られています。
そこへスーと知人の彫刻家スコットがやって来ます。スコットはスーをモデルにした頭像を作っているらしく、どうやら2人は付き合っているようです。
ギロチンの蝋人形(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
その館でスーはどう見てもキャシーすぎるジャンヌ・ダルク像を見つけてびっくり。ジャロッドは新聞に死亡記事が出ていた彼女の写真をモデルにしたと言っていますが、こんなそっくりにできるのでしょうか…
そして自身の最高傑作だったマリー・アントワネット像とスーを重ねて見ているジャロッドは彼女に執着するようになります。
その晩、さっそく火傷男がスーの部屋に侵入しますが悲鳴を上げられそそくさと退散します。
翌日、スーとスコットはディナーショーを楽しんでいますが、やはり彼女はジャンヌ・ダルク像とキャシーが似すぎている件が引っかかるようです。
あまりにも彼女が気にするもんですから後日スコットは彼女と一緒にブレナン刑事のもとを訪ねます。
一番お気に入りだったマリー・アントワネット像も燃えてしまいました…(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
警察も一応ジャロッドとその周りを捜査。スーはやっぱり気になるのでまたジャンヌ・ダルク像を調べます。
するとそこへスコットが手がけたスーの頭像から型を取って作った彼女の頭部を持ってきたジャロッド。どうやら彼女をモデルに再びマリー・アントワネット像を作るようです。
一方、蝋人形館の人形たちが最近亡くなったけど遺体が行方不明となった人たちに妙に似ていることに気付き始めた警察はジャロッドたちをマークし始めます。※ちなみにバークの遺体もジャロッドが持ち帰っています。
めっちゃ怖いですけどね…(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
するとジャロッドの助手の一人であるレオンが過去に刑務所に入っていたヘンドリックスという男で、しかも出所後に再び犯罪を犯しており、指名手配中だということが発覚。警察はさっそくレオンを逮捕します。
一方、やっぱりまだまだジャンヌ・ダルク像が気になるスーは閉館後に館に忍び込みます。しかしすぐさまイゴールに、そしてジャロッドにも見つかってしまい、捕らえられてしまいます。
真ん中のイゴールは生きてます。(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
必死に抵抗する彼女の手がジャロッドの顔に当たると彼の顔はボロボロと崩れ、なんとその素顔はあの火傷男。やはり彼が殺人を犯し、そして遺体を持ち帰っていたのでした。
気絶したスーを地下の工房に連れていくジャロッド。いよいよ彼女を蝋で固めて理想のマリー・アントワネット像を作ろうとします。
ジャロッドの真の姿(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
警察に捕まったレオンはあの館の蝋人形が死体から作られていること、ジャロッドが毎回殺人を繰り返していることなどを洗いざらい白状します。
ブレナン刑事たちは慌てて現場に急行。それより一足先にスコットがデートの待ち合わせ時間になってもスーが来ないのでもしかしたらと思い、館の中へと入っていきます。
すると彼女の帽子が落ちており、さらには地下から彼女の悲鳴が!
しかしイゴールが立ち塞がり、ボコボコにされたスコットはギロチンで首を刎ねられそうになります。
ジャロッドのこの顔は蝋で作ったマスクだったわけです。
(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
そこへようやくブレナン刑事たちが到着。イゴールを取り押さえ、スコットも助け出します。
しかし地下では拘束されたスーに熱々の蝋がかけられそうです。「美しさをたもったまま永遠の美しさを手に入れられるぞ」と言うジャロッド。やはり明らかに常軌を逸しています。
そこへドアをぶち破って警察が押し寄せる。揉み合いになったジャロッドは熱々の蝋が入った釜に転落。自分自身が蝋人形になってしまった…
というところで物語は幕を閉じます。
無事に保護されたスーとスコット(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
ストーリーはシンプルでしたが面白かったです。
これを読んだ後に今作を視聴される方はぜひ若き日のチャールズ・ブロンソン氏が演じるイゴールにも注目してみてください。セリフは無いですがキャラが爆裂に濃いです笑
髪型も絶妙ですね!(https://m.imdb.com/title/tt0045888/mediaindex/?ref_=mv?ref_=mv_smより引用)
そして!
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