ダニング・クリーガー効果は「顔にレモン汁を塗る男」から始まった

自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明
自分の政治知識を過大評価している人ほど感情的な対立を起こすと判明 / Credit:Canva

私たちの認知の世界には、ちょっと不思議な“鏡”が潜んでいます。

それは「能力が低い人ほど自分を高く評価し、能力が高い人ほど逆に自信を持てない」という心理現象で、1999年にデイビッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが実験を通じて証明しました。

これがいわゆる「Dunning-Kruger効果」です。

彼らが最初に注目したのは、「顔にレモン汁を塗れば監視カメラに映らない」と信じ込んで強盗に及んだある男性のニュースでした。

常識的にはあり得ない発想ですが、本人は“完璧な手口だ”と自信満々。結果は言うまでもなく、あっさり逮捕されてしまいました。

能力や知識の不足を自覚できない――まるでピンボケした鏡の前で「自分は映っていないから安全だ」と思い込んでいるような状態です。

政治の世界でもこの歪んだ“鏡”が問題になっています。

たとえば、「自分は政治に詳しい」と思い込む人ほど過激な意見をSNSに投稿したり、異なる見解を持つ人を頭ごなしに批判したりしがちです。

本来ならば、さまざまな立場の人と話すことは互いの理解を深めるはずでした。しかし現実には、ネット上の議論が罵り合いや人格攻撃に転じ、感情的な対立(アフェクティブ・ポラライゼーション)がますます深まる光景を目にします。

これは例えるなら、運転経験が浅いのに「自分は運転の天才だ」と思い込んでスピードを出しすぎ、ブレーキのタイミングもわからず事故を起こすようなもの。

過度な自信が招く“見誤り”は、他者への攻撃だけでなく、自らの評価を正しくできないという点でも危ういのです。

そしてこうした「自分の確信が間違っているかもしれない」という視点が欠落すると、政治以外の領域でも大きなリスクが生まれます。

こうして見えてくるのは、「自分が知らないことを知らない」という認知の限界が、社会の様々な場面で対立や誤認を引き起こしている可能性です。

民主主義の基本にあるはずの“多様な意見交換”が過熱した対立の火種になるのも、犯罪捜査が誤った疑いを生み人権侵害に繋がるのも、その背景には往々にして「過度な自信」や「知識の欠如」が隠れています。

そこで今回研究者たちは、「政治におけるDunning-Kruger効果がオンライン上での議論や対立構造にどのような影響を及ぼすのか」を検証することにしました。



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