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脆い「意見」の通し方小川貴之RightDesignInc.

🧠 概要:

概要

この記事は、ビジネスにおける意見の重要性と、その意見を効果的に通すための方法について述べています。著者は「意見」と「事実」を切り分ける必要性を強調し、意見がどれだけ脆弱であるかを示すことを通じて、提案が成功するための構造や要素について具体的に解説しています。

要約(箇条書き)

  • 「意見」と「事実」の切り分け:

    • 効果的な説明には、この二つを明確に分ける必要がある。
    • 意見は根拠に基づくべきであり、単なる感想では不十分。
  • 意見が脆い理由:

    • 聞き手のコンディションや期待によって簡単に崩れる。
    • 提案は「正解を言い当てる」ことではなく、「相手の心を動かす」ことが重要。
  • 提案の構造:

    • 提案に必要な三つの要素:
      1. 空間(信頼構築、期待の設計)
      2. シャリ(論理の構築)
      3. ネタ(意見の醸成)
  • 空間設計:

    • 提案前に信頼を構築し、期待をコントロールする。
    • 関係性をあたため、相手を理解し、熱意を共有することが重要。
  • 論理を構築する(シャリ):

    • 事実を基にした論理を提示し、意見を補強する。
    • プレゼン資料は簡潔に、視覚的に理解しやすい内容を心掛けるべき。
  • 意見の醸成(ネタ):

    • 提案が現実的で、ちょっとだけ飛躍した内容であることが望ましい。
    • 共感を生む物語や独自の「らしさ」を盛り込む。
  • スタイルの重要性:

    • 提案のビジュアルや表現スタイルは、内容を引き立てるものでなければならない。
    • 「論理 → 意見 → スタイル」の順番でプレゼンするべき。
  • 結論:
    • 「通す技術」が重要で、そのためには信頼、論理、意見の順序を慎重に設計する必要がある。

脆い「意見」の通し方小川貴之RightDesignInc.

何かをきちんと説明するには「意見」と「事実」を切り分けて話すことが重要であると言われる。

僕たちが日々向き合っている企画やアイデアなど、クリエイティブの仕事は、本質的に「意見」でできている。データや調査に基づく「事実」を使いながら、最終的には「こうあるべきだ」「こうしたほうが良い」という「事実を根拠とした意見」に依存している。しかし、何の根拠もなく無防備に「こう思った!」だけでは、その意見は全然通らない。普段の友人同士の会話であるならば「こう思った」は尊重されるべきだが、ビジネスの現場でのそれはあまりに責任感がない。お金も時間も人も動かす以上、もっと慎重であるべきだし、もっと説得力を持たせる必要がある。

そして、ひろゆきが言うところの「それってあなたの感想ですよね?」と言われたら終わりだ。「はい」としか言い返せない。この言葉自体は大嫌いだが、残酷なまでに本質を突いている。

小学生の流行語にもなってしまった忌まわしきネットミーム

つまり「意見」は脆い。ちょっと突かれるとすぐに崩れていってしまう。

僕たちは佐藤可士和さんではない。名前で信用される立場ではない。例えば提案の場に佐藤可士和さんがいて、何の脈絡もないが「これは○○がいいと思う」と言ったとする。その場合は「佐藤可士和さんが言うならそうなのだろう」と判断される。しかし、僕たちはそうではない。無名で弱く、向こうからお金をいただいている下の立場である。

どうやったら「脆い意見」を通せるのか。その答えを探るために、このでは「寿司屋」を例として考えながら整理してみたい。

そもそもなぜ意見は「脆い」のか

それは、聞き手のコンディションや期待値によって簡単に崩れてしまうからだ。どれだけデータや競合調査を積み重ねても、一番相手に伝えたい「だからこうあるべきだ」という部分はあくまで意見。そしてその意見の良し悪しは絶対という指標はなく、あくまで話を聞いてもらう相手との関係や様々な社会情勢や経済によって、相対的に変動する。

たとえば、どれだけロジカルに練られた素晴らしい提案でも、聞き手が「今は新しいことはやりたくない」と思っていたら、聞く耳は持ってもらえない。逆に平凡で小さな提案でも、聞き手が「今は少しでも変化が必要」と思っていれば通ることもある。

僕自身、この温度差で何度も痛い目を見てきた。完璧だと思った企画書を持って意気揚々とプレゼンに臨み、現場の反応も良かったのに後日、丁寧なお祈りメールを貰ったことは何回もある。一方で、雑談レベルでその場でブレストやプロトタイピングをしたらその場で「やってみよう」と即決されたこともある。

つまり企画とは、「正解を言い当てる」ことではなく、「相手の心を動かす」こと。そして心を動かすには相手にアジャストした「意見」が必要で、そしてその“脆さ”を支える構造も同時に必要になる。

寿司で考える、通る提案の構造

通る提案には、三つの要素が必要だ。それを寿司屋の体験に置き換えてみると、以下のようになる。

  1. 空間(信頼構築、期待の設計)

  2. シャリ(論理構築)

  3. ネタ(意見の醸成)

これはどういうことか、一つ一つ考えてみる。

1. 空間設計=信頼をつくり、期待値をコントロールする

たとえば、高級寿司店を思い浮かべてほしい。のれんをくぐり、カウンターに座ったその瞬間から、体験は始まっている。照明の落とし方、静かな店内の温度や匂い、大将の所作や温かくて柔らかいおしぼり。それらすべてが「ここは本物だ」「きっといい寿司が出てくる」という期待と信頼をつくっている。

逆に、見た目がファミレス風の店で、食後にいきなり3万円の請求をされたら驚くだろう。つまり、「何が出てくるか」だけでなく、「どう出てくるか」で、受け取られ方は大きく変わる。

提案もまったく同じだ。いきなり「こう思います!」と意見から入っても、聞き手は驚き、混乱する。その前に、「この人の話なら聞いてみたい」「きっと、これくらいの提案が出てくるだろう」と信頼と期待の地盤をつくることが必要になってくる。

信頼をつくり、期待値をコントロールするには

関係性をあたためておく

提案の前段階から、できるだけ相手との接点を増やすようする。提案のときにも「御社の店舗に行ってきました」と雑談を始めたり、「業界でこんなトレンドがありますよね」と軽く情報を提供をしたりすることから始める。

これはお互いの「聞く・話す」の温度を合わせる作業だ。そして、発注→受注の壁をやんわりとさせていく作業だ。ここの壁が高すぎると、どんな提案も聞く側が「ダメ出し」のスタンスになってしまう。これを打破して一緒に作っているという関係性を徐々に構築していく。

相手を理解する

提案の前にまず確認すべきは、話を聞いてくれる相手が社内でどんな立場にあり、どんな役割・発言権を持っているかということ。たとえば、それは予算決定者なのか、実行現場の責任者なのか、あるいは上司への説明役なのか。職位だけでなく、過去の成功事例や発信しているインタビュー記事などからも情報を拾い、相手像を解像度高く描く必要がある。

こうした理解がないままに提案をしてしまうと、現実とズレたトゥーマッチな内容になりがちだ。「誰に向けた提案か」が曖昧なままでは、どれだけ中身が良くても、響かない。

熱意を共有する

提案する側は、話を聞いてくれる相手以上に、そのブランドや商品を深く理解していなければならない。そのためには現場に足を運び、関係者やユーザーに直接ヒアリングし、一次情報を徹底的に集める。さらにはどこが競合になり、どういった社会情勢に立たされているかなど、いわゆるSWOT分析的な目線も持っておく。

そして、そのリサーチや検討の過程も含めて相手に共有することで、プロジェクトに対する熱量と精度を可視化し「ここまで調べてくれているんだ」と感じてもらう。調べた内容は先方は知っている情報が多いので、丁寧に内容それ自体を伝える必要はないが、自分たちの足で稼いでインプットされている情報の量はチラッとでも見せることで信頼値を積むことはできる。

さらに重要なのは、それらで得た情報に対して、デザイナーならデザインの視点で、マーケターならマーケティングの視点で、プロフェッショナルとしての見解を語れること。そうすることで、「先方チームの一員」でありつつ、「その中で最も専門的な立場」という発言権を獲得できる。

自分の思考や関心を日頃から発信しておく

やSNS、Podcastなどで、自分がどういう人間で、どういったことを普段から考えているかを発信しておく。僕たちもクライアントの名前を検索するように、相手も意外とこういうところを見ている。そうすることで、先方にもどういう提案が来そうかという前段階の期待を作っておくことができる。提案されるものは、ビジネスライクなものなのか、それともアーティスティックでぶっ飛んだものなのか、面白いものなのか、かっこいいものなのか。このあたりのセルフブランディングも重要である。

ちなみに僕は「Podcast聞いてます!」と言われたときの最適なリアクションがわからず、「へへっ…ありがとうございます…」としか返せない。

提案の目的をすり合わせする

提案を始めるときに、まずやるべきは与件とゴールのすり合わせだ。「いただいたお題はこうで、この提案のゴールはここです」という共通認識を、冒頭できちんと整えておく。そしてそのうえで、「今回はこういうアプローチで考えてきました」「この提案によって、◯◯という判断をしていただきたいと考えています」と、話の枠組みと目的を最初に提示しておく。

この一手間によって、聞き手の頭の中に「今から何を聞くのかという態度」ができる。プレゼンの視聴態度が明確だからこそ、話を理解する準備が整う。聞きながら「ディスカッションの準備をしよう」とか、「このあと判断が必要そうだな」といったように、聞く側のスタンスを能動的に変えることができる。

「何を話すのか」「どうしたいのか」それを最初に明確にすることが、提案の成功率を一気に引き上げる。

見た目や話し方を調整する

信頼は内容だけでなく、見た目や話し方からも生まれる。相手の会社の雰囲気に合わせた服装や見た目も意識する。必ずガチガチにジャケットを着るよりも、少し崩したほうがむしろ良い場合もある。ただ基本的には「提案が通る=先方は投資を行う」ということなので、往々にして、この人(たち)は投資するに値すると思ってもらえること、つまりは「しっかりとして見える」ことは必要だ。

また、話し方に関してもボソボソと一方向的に喋るのではなく、自信を持って眼の前の”あなた”に伝える意識を持つ。自信の表れは声の質や大きさに表れる。これらが積み重なって「この人なら任せられそう」「自信満々でなんとなく良さげだ」という印象を作っていく。

関係性の構築、熱意の共有、セルフブランディング、目的の目線合わせ、話し方の調整。これらをすっ飛ばすと、いくら提案内容が良くても届かない。多くの人が勘違いしているのは、「プレゼンの場だけで勝負が決まる」と思っていることだ。実際には、提案の前から提案は始まっている。

2. シャリ=論理を構築する

寿司で言えばシャリは徹底的に磨かれた土台だ。提案においては、「事実ベースの論理」がこれに当たる。つまり、意見を支える動かしがたい前提をしっかり提示するということ。ここに「意見」は基本的には入れない。入れることで、もしそこに聞く側が引っかかってしまった場合、その後に続く本当に伝えたい提案が濁ってしまう。

どうすれば話を論理的に構築できるかという方法論は、一般的に言われるロジカルシンキングの書籍や情報に譲るとするが、その上で「意見ベース」の仕事についている人が、論理の運びだけではない部分で気をつけたい提案における「シャリ」の部分をまとめてみる。

シャリを固めるいくつかの法則

ワンメッセージ・ワンスライド

1枚のスライドには、伝えたいことを1つだけ載せる。「あれもこれも」では、どれも伝わらない。重要な意思決定をする人ほど資料に目を通す時間がない。そのためにもスライドのヘッダーラインを見るだけで何を伝えたいのかが明確に分かる構成にする。メッセージを欲張らず、削ぎ落として、伝えたいコアのみを残す。

できる限りの図示

例えば、ファネル図、3つのポイントの並列構造、関係性を示すベン図など、文章で説明できる内容も極力図示してみる。グラフやパイチャートも積極的に活用する。図示によって自分も相手も情報の解像度が高まり、直感的に理解しやすくなる。また、プレゼン全体のリズムも良くなり、退屈させにくくなる。

資料の読み上げはしない

プレゼンの際、資料に書かれていることをそのまま読み上げてしまうのは避けたい。それをやり続けると、相手は「読めば分かる」と判断し、話を聞こうというモードから外れてしまう。資料はあくまで補助。資料にはない言葉遣いをすることで、提案に対して「聞こう」という態度を作れる。

伝えたい箇所は文字を大きく

かつて博報堂に在籍していたとき先輩社員から「文字の大きさは、自信の大きさだ」と言われた。まさにその通りで、最も伝えたいことは思い切って大きくレイアウトすべきだ。そもそも資料上に文字が大量に必要であるということは、伝えたいことが絞りきれていないということだ。小さく書くと自信がなく、ただの補足情報のように見えてしまう。強調すべきところは情報としても絞り込み、視覚的にも迷わず伝わるように整える。

文字だけの資料にせず、図像を使う

人間の記憶は、文字だけではなかなか残らない。資料の中で印象に残るよう、写真・図版・イラストなども積極的に活用する。画面の半分を大胆に画像で埋める、背景に薄く象徴的なビジュアルを敷くなど、緩急やリズムを意識した工夫も重要だ。

シャリを軽視して、ネタばかりで勝負しようとしてもだめだ。僕も若い頃は「面白いアイデアさえあれば通る」と思っていたが、何度も「で、根拠は?」と問われて撃沈した経験がある。なのでネタを成立させるためにも、シャリはきちんとしたものにする必要がある。

3. ネタとスタイル=意見の醸成

ここでようやく「ネタ」が出てくる。このネタというのは論理的な説明以降の「仮説からアイデアまで」の意見ベースとなっている箇所を指す。冒頭、意見の良し悪しは絶対的なものはなく、相対的なものであると話した。そうした中でいいネタとは何かについて考えていきたい。

いいネタとは

アイデアの精度が相手に合っている

何を提案するか自体の精度も重要だ。どれだけ素晴らしいアイデアでも「これは実現できない」「うちには無理」と思われた瞬間にアイデアは死ぬ。逆に、当たり前すぎる内容でも響かない。重要なのは、相手の現実に足をつけつつ、「ちょっとだけ飛躍したもの」を届けることだ。

Louis Vuittonの先代のアーティスティック・ディレクターであった、ヴァージル・アブローは、彼の創作哲学として「3%アプローチ」というものを提唱している。これは、既存のモノやアイデアの97%はそのままに、残りのたった3%だけを意図的に変えることで、まったく新しい意味や価値を生み出すという創作のスタンスで、それこそが本当に世間が「欲しいもの」になるという考え方だ。新しすぎるものは売れず、当たり前すぎるものは欲しくないという哲学をまさに表している。

OFF-WHITEによるAir Jordan 1

ブランドが既に持っている資産を引用しながら「ほんの少しの違い」が欲望を生み出す。僕自身もこの考え方に強く共感している。良いネタとは、そのブランドの歴史をきちんと継承しつつも、わずかに違うことで未来へと進ませる可能性を持っているものだ。PLAZAのリブランディング時に手がけたHeart Up!のロゴマークも、まさにこの「継承と刷新のバランス」を意識しながら制作した。

新スローガンHEARTS UP!のロゴは、ハートが左斜め45°上に向いているデザインとして制作した。形状は全く新しい形として作らず、PLAZAロゴの「P」のラインから引用した。ブランドにとって違和感のないかたちで、資産を”新しく”継承しないと、インナーにもファンにも浸透していかないと考えたからだ。 pic.twitter.com/j4wPGyf6Hh

— 小川貴之RightDesignInc. (@ogw_tkyk) February 20, 2024

共感を生む物語がある

意見は相対的なものだ。立場や状況によって良し悪しは変わる。それでもなお、「わかる!」と誰もが思える瞬間には、普遍的な強度がある。話し手と聞き手の間に“あるある”の共感が生まれたとき、アイデアは一気に受け入れられやすくなる。だからこそ、人間の本能や日常感覚に根ざした視点を意識することは、意見に説得力を宿すうえで極めて有効だ。

たとえば、FamilyMartのプライベートブランド「ファミマル」のパッケージデザインでは、一部の商品に色による識別が用いられている。これは、交通標識のように色の記号性に人が自然に反応すること、あるいは僕がある時スマホの似たような配色のアプリアイコンを見間違えたという日常的な体験が着想の源になっている。こうした共感を呼ぶ物語があると、アイデアが通りやすくなる。

もし道路上の信号が赤黄青の色分けによる意味伝達でなかったら、交通事故は今よりもっと起きているだろう。情報の速さは「色>形>文字情報」の順で伝わる。ファミマルのパッケージは、隣り合う同カテゴリ内で商品特性が違う場合、明確な色分けをして判別性を上げ、目的の商品に辿り着きやすくしている。 pic.twitter.com/VpqAs4rF0K

— 小川貴之RightDesignInc. (@ogw_tkyk) June 3, 2023

「らしさ」があり、自分たちのものだと感じてもらえる

提案において重要なのは、その企業やブランドの「らしさ」を肌で理解していることだ。どれだけアイデアが優れていたり、ロジックが丁寧に構築されていたとしても、最終的に「これは私たちらしい」「私たちがやる意義がある」と先方に思ってもらえなければ、受け入れられることはない。

たとえば、「青森びいき」というファンコミュニティのロゴデザインでは、青森の象徴である「りんご」をモチーフにしている。加えて、ロゴには笑いとも驚きとも取れる「口」の形を取り入れている。これは、実際に僕が青森を訪れたときに感じた「青森の持っているオーバーさ」に由来している。食事は基本的に大盛り、雪は一面の豪雪、建造物や遺跡は予想を超えるスケール、ねぶた祭の力強さ。すべてが想像よりも大きかった。この誇張されたリアルさこそが、青森らしさだと思った。

「らしさ」を掴むには、単なる情報では足りない。実際に訪れ、感じ、驚いた体験が、そのブランドの本質に触れる唯一の方法で、それは必ず提案に表れるものなのだ。

企画者自身が「それをやりたい」と心から思っている

「これは本当にやりたい」「伝えたい」という思いは、きわめて感情的なものだ。だけどその熱は話を聞いてくれる相手にも、さらにその先にいるエンドユーザーにも確実に伝わっていく。

たとえば、京丹波町のタウンプロモーションの仕事を始めてから、約3年が経つ。戦略立案からWeb制作まで多くの施策を行い、それぞれに成果も出てきた。けれど、ずっと実現できずにいた企画があった。それが「東京で京丹波の食を届けるイベント」だった。

京丹波の魅力は、何と言っても「食」だ。野菜、ジビエ、酒など、すべて美味しく、豊かだ。だが、距離の問題からその良さが東京の人にはなかなか届かない。何度も町に通い、自分自身がその魅力に触れてきたからこそ、「これは東京の人にも知ってほしい」という思いは強かった。

そんな中で、先日ついに「京丹波バル」というイベントを東京で開催できた。3年越しの夢だった。企画、会場設営、グラフィック、映像、Webなど、利益度外視ですべて全力で取り組んだ。結果、会場には多くの来場者が訪れ、実際に食を体験した人たちからも、京丹波の関係者からも「こんなにいい形で伝わるとは」と喜んでもらえた。

あのときの「やりたかったからやった」という熱は、間違いなく伝わった。意見や提案は、論理だけでは人を動かさない。「自分もやってみたい」と思わせた瞬間に、ただの意見が「動かす提案」になる。

京丹波バルのデザイン制作において、チームがドライブした瞬間はアーチ型をモチーフとすると決めた時だった。扉や舌といった意味的な部分で全員が納得したのと、この形が醸し出す「優雅さ」によって体験させたい方向性が規定され、明文化せずともwebや空間、レイアウトの間などに共通認識が生まれた。 pic.twitter.com/TxFLW3qJl7

— 小川貴之RightDesignInc. (@ogw_tkyk) March 16, 2025

スタイルについて

また最後になったが、アイデアを際立たせるのが「スタイル」だ。デザインでいえば、色、フォント、写真、レイアウトなどのもっとも表層的な部分だ。つまり、これだけでは成立しないものだ。あくまでスタイルは、事実と意見の合わさったものをより魅力的に引き立たせ、提案にオリジナリティを加えるものだ。

デザイナーは提案においてここの部分を丁寧に説明しがちだが、デザイナーではない人にとっては正直些細な話である。HelveticaとFuturaに違いはなく両方とも「ゴシック体」であり、良い素材は「コストで上下する対象」でしかないのだ。

話す順番は絶対に間違えてはいけない。スタイル→意見→論理の順で話すと、すべてが“感覚”に見えてしまう。順番は必ず「論理→意見→スタイル」にしないと、通るものも通らない。

脆い意見を通すということ

どんなにアイデアが良くても、通らなければ意味がない。本屋に行けばアイデアの発想術は溢れているが、それを「通す」技術についてはほとんど語られていない。しかし、これこそが最も重要なスキルだ。良いアイデアを思いついても、必ず通るわけではないのだから。

このでは寿司で例えたが、意見を通すために必要なのはこの三つの順序と構造だ。

  1. 信頼(空間設計)で聞く姿勢をつくる

  2. 論理(シャリ)で納得の土台をつくる

  3. 意見+スタイル(ネタ)で心を動かす

企画を提案するとは、事実を積み上げた上で「こうであってほしい」という意見を相手に伝える行為だ。それは脆く、繊細で、タイミングや文脈に左右される。だからこそ、丁寧に準備し、順序を間違えず、慎重に設計していくことが大事になる。

信頼で説得力を高め、論理で骨格を作り、熟成された意見で心を動かす。それらすべてを織り込んではじめて、脆い意見は「通る提案」になる。

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