最近、「総合通信局」なる団体を名乗る詐欺電話が増えているようです。いかにもそれらしい名称で、聞き慣れないけれど、ちょっとだけ信じてしまいそうな響き。総務省の出先機関か何か?と一瞬思わせる、絶妙なラインを突いてくる。私のところにも、先日そんな電話がかかってきました。留守電に残されたメッセージは、こんな感じでした。「こちらは総合通信局です。2時間以内に通信を停止いたします。至急ご連絡ください。」……正直、最初は「そんなバカな」と笑い飛ばしそうになった。誰が、どの権限で、どうやって私の何の通信を止めるっていうんだ。でも、ふと思ったんです。これ、本当にギリギリのところを突いてくる人もいるだろうなって。
時間帯が絶妙すぎた
私にかかってきたのは、午前10時過ぎごろ。「2時間後」といえば、ちょうど昼休みが始まる時間帯です。ほとんどの人にとって、昼休みは1時間。もしこの留守電をお昼に確認してしまったら、「やばい、もう時間がない!」と焦って折り返してしまうかもしれない。もっというなら、たまたまスマホやネットの料金を払い忘れていた、とか、給料日前後の引き落とし日付近、とか個人の事情によっては、より焦りが出ることもあるかもしれない。詐欺グループの側としては、「2時間以内に停止予定だったが、連絡をくれたのであと少しだけ猶予を与える」なんて“恩情”を見せながら、こう続けるのではないでしょうか。「今すぐ通信制限を解除するためには、本人確認が必要です」「暗証番号を」「最寄りのATMで手続きを」連絡をくれたことを“救済のチャンス”のように演出し、相手の不安を最大限に引き出しながら、昼休みという限られた時間で“決断と行動”を迫る。・とにかく早く解決したい・午後の仕事に影響を出したくない・今すぐなんとかしないと自分だけ取り残されるかもそんな心理状態で、ATMに走ってしまう人もいるのかもしれません。⸻
人の「余白」と「焦り」に入り込む手口
想像すればするほど、この詐欺の“設計”の緻密さが見えてきます。きっと彼らの中には、時間帯のマニュアルもある。反応パターンの想定もされている。電話を受けた人の心理状態や、生活リズムさえ計算され尽くしている。しかもそれは、ただの勘や経験則じゃない。もしかしたらChatGPTのようなAIを使って、「どんな文言が不安をあおるか」「どの時間帯に人は焦るか」などを緻密に調べ、生成し、テストして、アップデートしているのかもしれません。方向性が完全に間違っているのは大前提として、それでもやっぱり思ってしまうんです。
この姿勢と手法、商売の世界でこそ活かせたのではないか?と。
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商売の本質を、誰よりも理解しているようにさえ見える
相手の状況を読む。相手の行動心理を深く理解する。限られた時間と手段のなかで、最大限に「動かす」。これは、マーケティングの世界で言えば、セールスライティングや顧客導線の設計とまったく同じです。目的は間違っているけれど、その人を動かす力の正体は、決して軽く見過ごせない。誰よりも“考えている”。誰よりも“準備している”。誰よりも“試している”。ただし、全部“間違った方向”に。⸻
だからこそ、私たちに必要なのは…
AI時代、こういった詐欺はますます巧妙になっていきます。私たちは「技術的な防御」だけでなく、「自分の中の判断軸」を持つことがより求められていく。もう、“人間らしさ”だけでは太刀打ちできないんです。便利な時代ほど、問い直さなければならないのは、「何のために」「誰のために」それを使っているのかという視点。詐欺もAIも、SNSもChatGPTも――結局すべては「使い方次第」。だからこそ、私たちは「自分のためになる使い方」を日々模索する必要があるし、そのためにこそ、スキルもリテラシーも磨いていかなくてはならない。⸻
才能の無駄遣いには、心から「もったいない」と言いたい
最後にひとつ、声を大にして言いたいのはこれです。
才能の使い道、間違えすぎ。
本当にもったいない。きっと、そこまで考えて動けるあなたなら、詐欺なんてしなくても、普通に世の中の役に立てるはずなんです。善意とか使命感がなくても、まともにお金を稼ぐ手段なら、いくらでもある。それを知らないまま、もしくは知ろうとしないまま、“最短で金が入る道”だけを追いかけた先が、これなんだと思います。⸻
そして私たちもまた「どう使うか」を選び続ける
この世界はこれから、ますます情報にあふれていく。選択肢が増えるぶん、誤った道も紛れてくる。でも、選ぶのは自分。使うのも自分。疑うのも、自分。ChatGPTのような道具がある時代だからこそ、「自分はどう生きたいか」って問いに、少しずつでも向き合っていきたい。
詐欺電話を受けながら、そんなことを思った先日の昼下がりの紹介でした。
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