土曜日, 5月 31, 2025
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経営者の『モチベーションスイッチ』を見つける技術 ―専門性よりも大切な支援者の役割―小松 美央 Mio KOMATSU群馬の中小企業診断士認定支援機関

🧠 概要:

概要

この記事では、中小企業の経営者に対する支援のアプローチとして、「モチベーションスイッチ」を見つける重要性が語られています。財務分析や専門知識ではなく、経営者のモチベーションを引き出すことが成果を生む鍵であると筆者は主張しています。具体的な支援の手法や信頼関係の構築が、企業の成長に寄与することを強調しています。

要約の箇条書き

  • 経営者のモチベーションスイッチを見つけることが成功に重要。
  • 数字だけでは見えない「現場の実態」が多く存在。
  • 支援者は信頼関係を築くことから始めるべき。
  • 経営者自身が知らない強みを引き出すことが重要。
  • 具体的アプローチ: 強みの棚卸し、価値観の深掘り、未来像の共有、行動計画の作成。
  • 専門知識は支援の手段であり、目的は経営者の成長。
  • 成果を上げるためには経営者の意欲が不可欠。
  • 支援者は経営者の情熱を引き出す役割を果たすべき。

経営者の『モチベーションスイッチ』を見つける技術 ―専門性よりも大切な支援者の役割―小松 美央 Mio KOMATSU群馬の中小企業診断士認定支援機関

「財務分析の結果、売上高営業利益率が業界平均を下回っています。コスト削減が急務です」——こんな正論を聞いて、心から「よし、頑張ろう!」と思える経営者は、実はそれほど多くありません。

私は事業者としての経験があるため、中小企業経営者の気持ちや立場を少し理解できるのではないかと思います。
だからこそ確信を持って言えるのは、支援者の専門分野を一方的に提示することよりも、経営者の「モチベーションスイッチ」を見つけて押してあげることの方が、はるかに大きな成果を生むということです。

数字では見えない経営の本質

特に従業員20名前後以下の中小企業では、経営者の意識や行動が即座に現場に影響し、業績に直結します。

例えば、ある飲食店の経営者から「最近客足が悪い」という相談を受けた際のことです。財務分析では売上減少の事実は分かりますが、その原因は現場を見なければ見えてきません。
実際に店舗を訪れると、ランチ後の空いた時間帯でも、お一人様のお客様を機械的にカウンター席へ案内し、ゆったりとお茶を楽しみたいニーズを汲み取れていない状況が見えました。

また別のケースでは、「売上が伸びない」と悩む小売店で、商品陳列に工夫の余地があったり、ある製造業では経営者が落ち込んでいることで従業員の士気も下がり、それが品質や納期に影響を与えていたりと、数字だけでは見えない課題が数多く存在します。

このような「現場の実態」は、どんなに精緻な財務分析でも発見できません。そして、こうした課題を指摘するだけでは、経営者のモチベーションは上がらないのです。

信頼関係から始まる真の支援

多くの企業支援に携わる中で学んだのは、「支援する」という意気込みでダメ出しから始めても、決して良い結果は生まれないということです。

私が初回面談で最も大切にしているのは、信頼関係の構築です。まずは企業の良いところや強みを徹底的に見つけ、それを経営者に伝えることから始めます。すると、経営者の表情が明るくなり、自然と本音の悩みを話してくださるようになります。

隠れた強みを発見し、ワクワクするビジョンを描く

企業支援を通じて実感するのは、どの企業にも必ず独自の強みや資源があるということです。問題は、経営者自身がそれに気づいていないケースが非常に多いことです。

ある製造業の後継者は、事業承継直後で経営者としての自覚が薄く、従業員の思いを汲み取らずに新規事業を推進しようとしていました。しかし、丁寧なヒアリングを通じて、先代から受け継いだ技術力の高さ、地域での信頼関係、そして何より長年会社を支え続けてくれている従業員の存在という大きな財産があることを再認識していただきました。「人に支えられて、今の会社がある」という気づきから、「この技術と信頼関係、そして素晴らしい従業員とともに、地域にどんな貢献ができるか」という視点でビジョンを描き直した途端、経営者の目の色が変わりました。

従業員との関係性も劇的に改善し、業績も向上していったのです。

経営者の「モチベーションスイッチ」を押す具体的アプローチ

経営者のモチベーションスイッチを見つけるために、私が実践している具体的な手法をご紹介します。

1. 強みの棚卸しから始める
技術力、人材、立地、顧客との関係性、地域での評判など、あらゆる角度から強みを洗い出します。経営者が「当たり前」と思っていることにこそ、大きな価値が隠れています。

2. 経営者の価値観を深掘りする
なぜこの事業を始めたのか、何を大切にしているのか、どんな時にやりがいを感じるのか——こうした根本的な価値観を理解することで、その人固有のやる気スイッチが見えてきます。

3. 実現可能な未来像を共に描く
現在の強みと経営者の価値観を組み合わせて、「この会社だからこそ実現できる未来」を具体的に描きます。重要なのは、経営者自身がワクワクし、「これなら頑張れる」と心から思える内容にすることです。

4. 具体的な行動計画を一緒に作る
ビジョンだけでは実現しません。そのビジョンに向けて、明日から何をすべきかを具体的に、段階的に整理していきます。

専門性は手段、目的は経営者の成長

私たち中小企業診断士には、財務、マーケティング、人事労務など、様々な専門分野があります。しかし、それらはあくまで手段です。真の目的は、経営者が自信と意欲を持って事業に取り組み、持続的な成長を実現することにあります。

財務分析も、戦略立案も、業務改善提案も、すべては経営者のモチベーションスイッチを押すためのツールに過ぎません。どんなに正論でも、経営者の心に火がつかなければ、実行されることはないのです。

まとめ:共に歩む支援者として

中小企業の経営者は、日々多くの重責を背負いながら事業を運営しています。私たち支援者の役割は、専門知識を一方的に提供することではなく、経営者の中に眠る情熱と可能性を引き出し、それを具体的な行動へと導くことです。

明日から実践できる一歩 もし経営支援に携わる方であれば、次回の面談では「課題の指摘」よりも「強みの発見」から始めてみてください。

経営者ご自身であれば、自社の当たり前を見直し、そこに隠れた価値を再発見することから始めてみてはいかがでしょうか。

一人ひとりの経営者が本来持っている力を信じ、それを引き出すお手伝いをする——これこそが、私たち支援者の真の使命だと考えています。
私自身も、そういった寄り添う支援を大切にしながら、地域の企業様と共に成長していきたいと思います。

小松 美央 Mio KOMATSU群馬の中小企業診断士認定支援機関

100年以上続く老舗企業について調査研究を行ってきました。中小・ファミリービジネスのための経営支援を行っています。小売飲食業の売場改善と中小企業の戦略に強いコンサルティング会社ミラ 代表企業支援・研修講師歴13年中小企業診断士MBA(経営管理修士)



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