米国の信用格付けをムーディーズ・レーティングスが最上位から引き下げた。政府債務と金利負担の増大が問題視された。これに反応し、16日の米株相場は値下がりし、米国債利回りは上昇した。
S&P500種株価指数に連動する上場投資信託(ETF)は時間外取引で1%下落。インベスコQQQトラスト・シリーズ1ETFは1.3%下げ、米国債先物はこの日の安値で取引を終了した。
ムーディーズは米政府債務の拡大を格下げの理由に挙げており、世界で最も信用力の高い国債発行体である米国の信認に影を落とす格好となった。
トランプ米政権の関税政策が経済見通しに既に重くのしかかっており、米国市場が直面する複合的リスクが今回の格下げでさらに増す。S&P500種指数は4月の急落から持ち直しているものの、企業・消費者の信頼感への関税の悪影響が今後数カ月の経済指標に表れる恐れがあり、多くのウォール街の専門家は株価の騰勢になお懐疑的だ。
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米国の格下げへの投資家や市場ウオッチャーの主な反応は次の通り。
- スチュワード・パートナーズ・グローバル・アドバイザリーのマネジングディレクター、エリック・ベイリー氏:
- これは警告サインだ。米株相場の歓迎すべき回復は、その後頭打ちとなりつつある。ムーディーズによる格下げは、過去1カ月の大幅高を受け、資金運用主体に利益確定売りを促すことになりかねない
- ティグレス・ファイナンシャル・パートナーズのアイバン・ファインセス最高投資責任者(CIO):
- 米国債は世界で最も安全な投資対象と見なされている。米国の信用格付けが引き下げられれば、同国がベンチマークであるという理由で、他の国・地域のソブリン債への影響はさらに悪くなる恐れがある。今後数週間で株式市場にどう影響するかまだ分からないが、最近の株高で警戒感が出てもおかしくない
- ラウンドヒル・ファイナンシャルのデーブ・マッツア最高経営責任者(CEO)
- ムーディーズがついに格下げを正式決定したが、市場は米国の信用プロフィル悪化をしばらく前から察知していた可能性が高い。2011年8月のS&Pによる格下げの衝撃と異なり、財政の機能不全と関税リスクを市場が警戒する中での格下げであり、株価への影響は当初のヘッドラインが示唆するより抑えられたものになるかもしれない
- ヘッジファンド・テレメトリーの創業者トーマス・ソーントン氏:
- 米国市場全体にとって好ましい材料ではない。S&Pが11年にトリプルAから格下げした際は、既に不安定だった市場に衝撃を与えたが、今回は状況が異なる。債券市場ではこの日の終盤に利回りが上げており、一層急激な金利上昇こそ私が最も警戒してきたリスクだ
- フランクリン・テンプルトンの副CIO、マックス・ゴクマン氏:
- 財源の裏付けに乏しい財政支出は、議会で調整中の減税案も含め加速するばかりであり、米国債の格下げは驚くに当たらない。大口投資家のソブリンと機関投資家の両方が、米国債から他の安全資産に徐々に乗り換え始めることで、債務返済コストがじりじりと上昇を続けるだろう。米国債利回りが(長期金利が短期金利より大幅に上昇する)ベア・スティープナーの危険な悪循環に陥り、ドルへの下押し圧力が高まり、米株の魅力が低下することもあり得る。
原題:Wall Street Strategists React to Moody’s US Credit Rating Cut(抜粋)
🧠 編集部の感想:
米国の信用格付けが引き下げられたことで、長期金利の上昇や株式市場への影響が懸念されています。この変動は、投資家の信頼感を揺るがし、ドルにも下押し圧力がかかる可能性があります。経済見通しが不透明な中、しっかりとしたリスク管理が求められます。
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