今年のクリスマスは、人気マッサージ機「Theragun(セラガン)」の最安セールを期待できそうにない。トランプ米政権の関税措置を受け、Therabody(セラボディ)が今月からセラガンなどの製品の価格を最大15%引き上げるからだ。
同社のモンティ・シャルマ最高経営責任者(CEO)は、トランプ氏が中国に追加関税を課したことを受け、ターゲットやベスト・バイなど取引先とさらなる値上げについて協議する必要があると指摘。先行き不透明な状況が続く中、セラボディは一部の生産を停止し、新商品の投入を延期。同社は多くのサプライヤーと同様に在庫を少なめにしており、現時点での製品在庫は約8週間分となっている。そのためホリデーシーズンを迎える頃には品切れとなる可能性が高まっている。

「セラガン・プロ」を使用するアスリート
Photographer: Patrick Smith/Getty Images
シャルマ氏は関税率について、「これらは耐え難い数字だ」と指摘。「われわれが事業を維持するには、はるかに大幅な値上げが必要だ」とした上で、そうなれば需要が落ち込む可能性が高いとの見方を示した。
セラボディのような状況が全米の数千に上るサプライヤーや小売業者に広がれば、米国では例年とは大きく異なったクリスマス商戦を迎えることになりそうだ。消費者は新商品や値引き品の減少を目の当たりにすることになる。一方、小売業界は関税措置が継続された場合、一段と大きな痛手を受けるとみられている。
小売業界では、こうした状況を踏まえ、ホリデーシーズンの商品を確保するため、前年の在庫品を活用するなど、別の対応が検討されている。販売できる商品がある方が何もないよりはましだとの判断だが、魅力に乏しい選択肢しかなければ消費意欲の低下につながる可能性が高い。
調査会社サカーナのチーフリテールアドバイザー、マーシャル・コーエン氏は、「基本商品はビジネスを維持し、新しさが成長を促す」と指摘。供給逼迫(ひっぱく)が続けば、品ぞろえの多様性が損なわれ、特にホリデーシーズンには重要な衝動買いが鈍る可能性があるとの見方を示した。

2024年のホリデーシーズンにベスト・バイの店舗内で買い物する人
Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
マーベルのアクションフィギュアやハローキティのキーホルダーなどを販売する米玩具販売会社トインク・トイズでは、通常であればこの時期に中国の工場へホリデーシーズン向けの発注を出している。だが、関税の影響で今年は見送られている。同社は代わりに既存の在庫を活用し、米国内で旧型で低価格の商品を仕入れる方針だ。
同社のスティーブン・ロニーCEOは、「全てが宙に浮いている状態だ」と指摘。主に米国で製造されているトレーディングカードの販売拡大にも時間と労力を費やしている同氏は、「何が起きているのか誰にも分からない」と語った。
原題:‘Untenable Numbers’: Tariff-Hit Firms Impose Fresh Price Hikes(抜粋)
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