米国の製造業復活に暗雲－トランプ関税で中国から機械輸入できず – Bloomberg

トランプ米大統領は２期目の政権発足から100日間で関税の壁を高く築いたが、自動車部品やスマートフォンといった一部の輸入品には例外措置が速やかに適用された。

　　しかし今、特に切迫した状況に置かれている企業群がある。それは、中国から機械を輸入し、米国内で生産設備の設置や拡張を目指すメーカーだ。工場の建設・拡張こそトランプ氏が関税政策の最終目標として掲げた「メイド・イン・ＵＳＡ」に直結している。

　　 ここ数カ月で180社以上が1100件を超える関税除外の申請を提出し、中国製機械の輸入を通じて米国内の産業計画を実現したいと訴えている。 

　　申請企業はテスラやフォード・モーター、日立製作所の傘下企業といった大手から、工業用ミシンを扱うオハイオ州の中小企業まで多岐にわたる。多数の免除申請は関税に対する不満の広がりを示している。

　　米供給管理協会（ＩＳＭ）が１日発表した４月の指数は製造業活動の縮小を示した。低水準の受注残と関税の影響が重なり、2020年以来で最も深刻な生産縮小となった。

 　 政権側もメーカーに対する優遇措置や関税除外の必要性を認めている。ベッセント財務長官は米国内に建設した建物や施設の費用を全額控除できるような税制優遇を提案しているが、輸入する機械に関税が課せられればその効果も損なわれかねない。

　　トランプ政権１期目で米通商代表部（ＵＳＴＲ）代表を務めたロバート・ライトハイザー氏は、２期目の政権がいずれ関税除外の制度を再び設ける必要があると示唆。４月28日に米外交問題評議会で「彼らは今、除外措置に向けて動きつつある」と語った。

 　　全米製造業者協会（ＮＡＭ）によると、米国への輸入品の約60％は製造用の部品や素材などだ。ＮＡＭはトランプ政権に対して重要な部品と原材料を関税の対象外とするよう求めている。

　　特に工場稼働に必要な設備に関しては、計画に不確実性が重くのしかかっていることを踏まえ、適用除外は極めて重要だとＮＡＭで政策担当のマネジングバイスプレジデントを務めるチャールズ・クレイン氏は述べた。

「合理的ではない」　　

　　ヒンリッチ財団の貿易政策部門責任者デボラ・エルムズ氏は、「製造設備の輸入に対する関税除外は、最終的には不可避になる」と予想。

    「米国の関税政策の目的の一つが製造業の国内回帰である以上、その達成を目指す企業の前に追加の関税という障害を設けるのは合理的ではない」との見方を示した。

 　 トランプ政権１期目で国際経済を担当し、今は法律事務所ホーガン・ロヴェルズのパートナーであるケリー・アン・ショー氏は「最初に問いたいのは、『中国に対する関税率はいつ落ち着くのか』ということだ」と言う。

 　　同氏は米国が中国からの全輸入品に課している145％の関税や、中国側の報復関税125％は、トランプ政権の４年間も続かないとみている。しかし、「米中関係にもっと明確さと安定性がなければ、正式な除外プロセスが始まるとも思えない」と語った。

　　つい最近まで、トランプ政権は関税の緩和という考えすら公に否定していた。トランプ政権１期目に３万件以上の除外申請が相次ぎ、現政権内の強硬派の一部はこうしたことを繰り返したくないと思っている。　

　　しかし、トランプ氏が４月２日に大規模な上乗せ関税を発表して以後、各企業のトップらによる継続的な直接の働きかけを受けて、政権は非公式かつ不透明なプロセスで除外対象を増やしている。

 　 いら立つ企業はあらゆる手段を使って申請を行おうと奔走。その中で昨年10月にバイデン政権（当時）が始めたあまり知られていない行政手続きに新たな重要性が生じている。現在、中国製機械の輸入に関する減免措置の申請がその手続きプロセスに集約されているためだ。

　　ただ、官僚機構の中で申請が宙に浮いたままで、多くの企業が何の返答も得られていないと明らかにしている。トランプ政権はこれらの申請を審査するかどうかさえ明確にしておらず、ＵＳＴＲもホワイトハウスもコメント要請に応じていない。

  　それでも他に正式な申請ルートがなく、企業側はこのプロセスを「申請の受け皿」として活用。ブルームバーグの分析によれば、1111件の申請のうち過半数がトランプ政権発足後に提出され、そのうち730件余りが３月31日の締め切り前に集中していた。

　　トランプ政権入りしたイーロン・マスク氏が最高経営責任者（ＣＥＯ）として率いる電気自動車（ＥＶ）メーカーのテスラでさえ、３月31日に提出した申請４件のうちの１件に「米国内の製造能力を高めるため適用除外を求める」と記した。

　　「製造設備への関税除外は、米国の製造業や、中国が戦略的関心を持つ可能性のある産業の発展を促進・加速させる」とも主張。同社はここ数週間、関税と経済全体の減速が業績を圧迫する可能性があると投資家に警告しているが、コメント要請には応じなかった。